第二十四話 帰還
「大丈夫か拓也!」
と言いながら祭壇場で待っていた冒険者の一人が、意識を取り戻した土井という男に話しかける。
彼は、初めは混乱していたようだがおれが状況を説明すると理解し、感謝の言葉を述べた。
俺は彼に薬草を渡した、めちゃくちゃ苦いって顔をしてそれを食べた彼はずいぶん落ち着いたようだ。
そしてしばらくすると、川田さんと右田さん、そして数名の冒険者が祭壇場に入ってきた。
「いやぁ、疲れましたねぇ〜。復活直後でも骨が折れます、ええ」
「まさかアンタが薔薇十字団だとはなぁ!とんでもねぇ動きしてると思ったがまさかなぁ。っと!この名刺!よかったら他のメンバーの人にも渡しといてくれ!贔屓に頼むぜ?」
川田さんも右田さんも怪我はないようだ、右田さんに至っては宣伝活動に勤しんでいる。
しかし、十人ほど居た冒険者は殆どが姿を見せていない。右田さん、川田さんの他には四名だ。
残りの人はどうしたんだ…?
「無事で良かったです。あの、他の冒険者の人はどうしたんですか?」
俺は尋ねる。
まさかやられたのか…
「あぁ、あいつらならまだ探索するってんで、二層の宿に帰ったよ。にしてもあんちゃんグッジョブだったぜ、倒れてたニイちゃんは大丈夫か?」
右田さんのその返答を聞いてホッとする。二層に宿なんてあるのかと思ったが、何より無事なようでよかった。
「はい、意識は取り戻したみたいで一応薬草を渡しておきました」
「いやぁ良かったですねぇ、ええ。古森くんナイス救出ですよぉ」
すっかり元の口調に戻っている川田さんはそう言うと、少し休憩したら迷宮扉に戻りましょうか、と続けた。
それから30分ほど祭壇場で休んで、そこを後にする、行きとは違って右田さん、他に数人の援軍に来てくれた冒険者もいるから帰りは安全だろう。
それにしても、右田さんと川田さんは褒めてくれたが、正直俺ってなにもしてないよな。
終始ただビビりまくってただけな気がしてならない。
女王蜘蛛に見つかった時は、右田さんの声がなければ絶対にやられていただろうしな…。
そんなことを思いつつ、遭難していた冒険者を気遣って休んだり、また歩いたりでなんとか俺たちは迷宮扉の前に到着した。
そして、俺たちは扉をくぐって外に出た。
外は肌寒くて、空には太陽が昇っている…。
えっ、もうそんな時間か?
そう思って腕時計を確認した。
7時40分…。
捜索に出発したのが昨日の18時だから、12時間以上経過していることになる。
それに気がついた瞬間、ドッと疲れが押し寄せた。
捜索に夢中で気付かなかったのか、
それとも迷宮の力、マナのおかげで負担が軽減されていたのか。
体はもう限界に近いようだった。
家に帰って速攻で寝たい…
そんな考えが頭を駆け回る。
それから、冒険者委員会に遭難していた四人を連れて行った。
中には夏目さんと、結城花音の母親、それから残りの三人の親御さんらしき人達が悲しそうな顔で座っていた。
そして、俺たちと四人を見た瞬間、涙を流し喜びの声を上げてそれぞれの子供たちのところへ駆け寄っていく。
俺はその光景を見て、良かったなぁと思いつつ、夏目さんに一切の被害なく帰ったことを伝え、
「それじゃあ、俺は帰りますね…」
と言って川田さんと右田さんに改めてお礼をしてから帰路についた。
夏目さんがなにやら色々言っていた気がするがあまり覚えていない。
そして家に着いた瞬間、俺はベッドに横たわりそのまま何も考えず眠り続けた。
読んでくださった方、ブックマーク、評価、感想くださった方本当にありがとうございます。急に読んでくださる人が増えてビックリしてますが、これからもマイペースに投稿し続けますので、暇な時にでも読んでもらえれば嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




