第二十三話 援軍
女王蜘蛛の吐いた糸玉はギリギリで俺の後ろを通過して行った。
「あんちゃん!次来るぞ!」
俺はその声を聞いて直ぐに体制を整える、見ると再度糸玉が俺のところに迫っていた。
「バリアァアアー!」
後ろに横たわっている冒険者を守るような体制で俺はバリアーを発動する。
糸玉は大砲のようにバリアーにぶつかり、俺はその衝撃で後ろに吹っ飛ばされた。
そのまま床に背中を打ち付ける、
バリアー越しでこの威力かよちくしょう
激しい痛みを堪えて俺は立ち上がる、今この状況で意識を失っている冒険者を守れるのは俺だけだ。
かなり後ろまで飛ばされていた俺は力を振り絞って冒険者のところに駆け寄って前に立ち塞がり、もう一度バリアーを構える。
足に力が入らない、もう一度耐えられるのか…。
それでも、俺が耐えないと無防備な彼はやられる。
耐えてやる、何がなんでも耐えてやる。
しかし、もう一度俺のところに糸玉が飛んでくることはなかった。
「行くぞぉ!野郎どもぉおお!!」
「おっしゃあああああ!」
さっきと同じその声を皮切りに、いくつもの雄叫びが聞こえてくる。
そして10を超える冒険者たちが女王蜘蛛を囲んでいた。
なにがどうなってるんだ?
そんなことを思っていると、声の主が俺の方へ駆け寄ってくる。
走っても揺れていないモヒカンは何かで固められているのだろうか。
「右田さん…?」
「1日ぶりだな!あんちゃん!」
声の主、迷宮商人の右田さんはそう言うとニカッと笑った。
「どうして右田さんがここに!?」
しかも十人ほどの屈強そうな冒険者を引き連れて、
「実は昨日、二層に降りる時に階層主の部屋がやけに嫌な雰囲気でな。先週辺りにここの迷宮の上級冒険者たちが倒したって聞いてたんだが、もしかして復活するんじゃねえかと思って二層あたりで腕の立ちそうな冒険者集めて戻ってきたってわけよ」
そうか…、右田さんが二層に降りる時がギリギリ階層主が復活するかどうかの瀬戸際だったってわけか…。
「本当に助かりました…、あのあんちゃんって叫び声でなんとか攻撃避けられました」
「はは!まさかあんちゃんがいるとは思わなかったが、助けになれたなら良かったぜ。そっちの伸びてるのは仲間かい?」
そう言って右田さんは倒れている冒険者を見る。
「いや、俺と川田さん、あそこで戦っている斧を持ってる人と二人で遭難した彼らを助けにきてたんです」
「なるほどな、あんちゃんはいきなり城に来るような無茶する奴には見えなかったから、それなら納得だ。なんにせよ俺は直ぐに戦いの加勢に戻るが、あんちゃんは立てそうか?」
「なんとか…、俺は彼を祭壇場、安全な場所まで連れて行きます」
俺は立ち上がって冒険者を後ろに担いだ、体のあちこちが痛むがぐっと堪える。
「祭壇場…、この城の安全地帯か、遠いのか?」
「いや、そんなに遠くないです、それに川田さんから安全なルートを教えてもらってるから大丈夫です」
「よっしゃ、じゃああの階層主は俺たちに任せろ。終わったら俺たちもそっちへ向かうぜ!」
「頼みます!」
そう言って右田さんは女王蜘蛛の方へ、俺は扉の方へ向かった。
なんとか扉にたどり着き、俺は外に出た。
そして安全なルートを通って祭壇場へ向かう、道中モンスターがちらほら見えたが、完璧に息を潜める。
もう失敗できない、ゆっくりとそれでも力を全て出して祭壇場前にたどり着いた。
扉を開けると温かい空気が肌に伝わる、安堵した俺はそのまま倒れ込む形で腰を下ろした。
「拓也!!」
「土井くん!!」
と言いながら駆け寄る三人
三人が彼を火の側まで運び、俺もそれと一緒に火に向かう。
温かい、火を見たら安心するって本当なんだなぁと俺は心の底から思った。
そして少しすると、気を失っていた冒険者が目を覚ました。




