第十九話 一層城
リュックはモンスターに荒らされたように所々が破れていて、中の食料などは全て食べられた跡があった。
俺は中に持ち主の手がかりになりそうなものがないか探す。
すると、女性モノらしい財布が中から出てきた。
非常時ということもあり、俺はそれを確認する。
「結城花音…」
財布の中には結城花音の冒険者ライセンスが入っていた。
やっぱり、城の中に居るのか…。
俺はそれを財布から取り出すと、川田さんに見せる。
「やはり城のあたりまで来ていたみたいですねぇ…、ですが見たところ辺りに血のような跡はない、モンスターに襲われてとっさにリュックを身代わりに投げたか…、もしかすると城の中に避難したのかもしれません」
川田さんのいう通り、辺りに血は付いていない。
「城の中ではどこにモンスターが?」
「ほとんどの場所に居る…、というのが正しいですかね…、ですが、何故かモンスターが近寄らない祭壇のようなところがある、そこに居てくれれば…希望はあるんですがねぇ…」
モンスターが近寄らない祭壇…、低級冒険者、しかもライセンスを取り立ての四人が知ってるとは思えないが運良くそこに辿り着いていてくれたらな…。
「仮にその祭壇に辿り着けていなくても、モンスターから逃げ回る事は出来るんですか?」
「えぇ…、城の中のモンスターは匂いに敏感なモノが少ないですから音をたてずに息を潜めていれば大丈夫な事もあるかもしれません、階層主も先週から始まっている薔薇十字団の探索の時に倒されているでしょうし、無事な可能性はあります」
階層主、おそらく二層に続く階段を守っていると言われているモンスターの事だろう。
階層主も他のモンスターと同様、時間が経てば再出現するのかと疑問に思ったが、今はそれどころじゃない。
俺たちは少しでも早く助け出すため、城の中に入った。
足早に進んではいるが、それでも慎重にしっかりと安全マージンをとって進んでいく。
城の中は本当に人が住んでいたような場所がたくさんあった。
談話室らしき場所には古びて破けたソファがいくつも置かれていて、大きな机は埃をかぶっている。
炊事場と思わしき場所の床には、皿やカップなどの食器が割れて落ちていた。
確実に誰かが住んでいた、と思わずにはいられない。
そして、モンスターをやり過ごしながらしばらく歩いて、大きなドアを開けると、それまでとは違う雰囲気の部屋に出た。
天井は突き抜けになっていて、上から垂れ幕のようなモノが吊るされている。
下にはかなり汚れて破れているがレッドカーペットらしきものがずーっと敷かれている。
その先には、よく王様が座っているような椅子が置かれていた。
「玉座…ですか?」
俺は川田さんに尋ねる。
「ええ、玉座です。間違いなくこの城は誰かの持ち物だったということですね…」
川田さんがそう呟いた。
「しかし玉座も、この場所に置かれているソファなどの家具全てが、私たちの住んでいる世界のどの国の年代のものの特徴とも当てはまらないんです…、不思議ですよねぇ」
「まるで全く違う世界で、違う文明を辿ったかような場所ですよ、迷宮も、城も…」
川田さんはそう続けて言うと、この先が安全地帯の祭壇場です、と言い先に進む。
俺も続けて歩き、祭壇場の扉の前に着いた。
俺たちはゆっくりとそれを開けると、中は火の明かりが付けられていて暖かかった。
そして、その火を囲むように三人の冒険者が座り込んでいた。
誤字があったので、投稿後直ぐですが修正しました。
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