第十六話 遭難者2
「本当ですかっ!?」
俺がそう言った瞬間、夏目さんが目を輝かして俺にそう答えた。
が、すぐにわずかに顔をしかめる。多分俺の防具を見たんだろう。
「あの…、失礼なんですが…冒険者のランクは…」
ランク、低級、中級、上級とあるそれは、討伐したモンスター数や市や国からの依頼をこなした数、これまで手に入れた迷宮石の合計で決められる。
「低級…です…」
もちろん俺は低級だ。低級の中でもブッチギリの低級、底の底と言ってもいいぐらいだと思う。
「低級…、お気持ちは嬉しいのですが…流石に貴方様一人で捜索には行かせられません…、一層と言えども奥地へ行けば、城の中に入れば強いモンスターが沢山います…」
夏目さんは悲しそうにそう言った。俺の身を案じての事だろう。
普通に考えて、低級一人が捜索に行ったところでなんの意味もない。ミイラ取りがミイラになる可能性だってある。
普通の低級ならば…な。
「大丈夫です、俺にはこれがある」
そう言って俺は左手を前に突き出して、夏目さんにそれを見せる。
「これ、は?」
「迷宮装備です」
決して自慢する気ではないが、捜索に行くためにはこれはかなり有効な素材になる。
ただの低級冒険者ならまず持っていない迷宮装備。
ドロップすれば一攫千金、はたまた上級冒険者の仲間入りと言われている迷宮装備だ。
正直言ってこれを持ってるからって、俺の実力はそこら辺の低級冒険者と大差ないと思う。
だけど、ここで俺が捜索に行けないとなると、恐らく彼女たち四人は助からない。
絶対に助けられるって自信はない。
だが、わずかにでも望みがあるなら俺は彼女たちを探したい。
「迷宮装備…!?本当に!?」
本当だとも、と思いながら俺はスライムの紋章を見せた。
夏目さんは驚いた顔をしている。
「少し前に、ドロップしたんです。正直、一層のモンスターならしっかりと戦えば負けることはありません」
見せながら少し嘘をついた。
夏目さんとしても、力のない低級冒険者を一人で捜索に行かせるのは気が引けるだろう。
安心させるための嘘ってやつだ。
「本当に…お願いできるんですか?」
「はい、任せてください…とまでは言えませんが、奥地へ進みながら他の冒険者にも協力をお願いしてみます」
俺がそう言うと、夏目さんは
「少しだけ待っていてください!少ないですが、薬草などを集めてきます!」
と言って奥に行った。
俺が少しの間待っていると、夏目さんが薬草なんかのアイテムをいくつか持って来てくれた。
「委員会の備蓄として保管してあった薬草です、後これはにおいぶくろ、弱いモンスターならこの匂いを嫌がってあまり近寄ってこなくなります」
「助かります」
そう言って、俺はそれらをリュックに詰めて立ち上がった。
「直ぐに行かれるんですか?少し…休んだほうが…」
夏目さんが心配そうにそう尋ねる。
確かにそうしたかったが、少しでも早く捜索に行ったほうがいいと思った。それに、この時間ならまだそれなりに冒険者がいる。
目撃情報を聞いたり、それなりに腕の立ちそうな人なら協力を要請したい。
「ちょっとでも、急いだほうがー」
そう考えて、言いかけた時
「あ、あのぉ、な、なにかあったんですかねぇ?」
と後ろから男の声が聞こえて来た。
振り向くと、そこには恰幅の良い小柄な中年男性が立っていた。
男性はもじもじしながら苦笑いを浮かべている。
「か、川田さん!?いらっしゃったんですか!」
誰だろう、なんて思っていると、突然大きな声で夏目さんがそう言った。
川田さん…、誰なんだろう。




