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#5 なんやかんでパーティ結成!

 ランプを付け、僕らは各々座る。そしてギルドパスからステータスを交換した。ギルドパスから発せられる魔力通信回路を接続すると簡単に交換することができる。かなり便利な異世界だなと思った。

 銀髪でさっき僕に迫った女の子は「アンジェ」。金髪碧眼の法衣を着た女の子は「ニーナ」。アンジェさんは盗賊(シーフ)でニーナさんは僧侶(プリエステス)だった。ランクは僕と同じFランク。聞けばアンジェさんはギルドで目を覚ました後に冒険者登録をしたのだとか。


「……それで、ニーナさんはどうしたの?」

「何やら悪しき力を感じたので探っていたらこの部屋から反応があったので……失礼ながら探らせていただきました」


 顔を赤くしながら答える。


「………プリーストが変態だったのは本当だった」

「ち、違います! 悪しき力を感じたから様子を伺っていたのであって、決して覗いていたわけではありません!」

「その点、私は安心。必要ならば今からでも良い」

「な、何を不埒な事を言っているのですか、あなたは!」


 小さくとも柔らかい感触が僕の腕に当たる。チッパイが需要ある理由がわかった気がする。


「そ、そんなことは許されません! 不埒すぎます!!」

「生物的には間違っていないこと。それに大丈夫。落ち着けるまでは避妊する」

「そういう問題じゃないです!」

「……何か問題でも?」

「大ありです! そんなこと、遊びでやるなんて!」


 顔を赤くするニーナさん。だけどアンジェさんは気にせず僕に抱き着きながら言った。


「さっき噛んだ時にすごくおいしかった。だから相性はバッチリ」


 それを聞いたニーナさんは白い肌がわからなく程に顔を赤くする。そんな騒ぎの中、僕は本気で考えていた。


(何でこんなことになっているんだろう……)


 気が付けば僕に馴染みがない修羅場。小さな女の子にモテることは悪い気はしないけど、とはいえ色々と問題だと思う。どっちかに諦めてもらうのがセオリーかもしれないけど、僕の心の中には「女子間で取り合いになっている僕、モテモテ」という思いが確かにあった。


「わかりました」


 思考が全然まとまらないけど、何か答えに行きついたらしいニーナさん。彼女はある事を言い出した。


「わたしもユウヤ様のパーティに入ります!」

「ダンジョンに潜るのに?」

「あなたのような不埒な人に任せたままは嫌だからです。それに、ユウヤ様はいずれ大成される方。1人よりも複数いた方が良いに決まっています!」


 どうしてそうなったの!?

 僕はゲームが大好きで周りからはオタク認定されている。当然、恋愛シミュレーションゲームだってやっているし、大体は初見でトゥルーもしくはハッピーエンドで攻略してきた。でも残念ながらニーナさんの思考は理解できなかった。


「あの、ニーナさん。落ち着いて。流石にその目的は違うんじゃ……」

「構いません。それにパーティを組むにあたって回復役は必要になります。確かにわたしのレベルは低いですが、おいおい追い付きます」


 確かに回復役はどうしても外せない。それにランクの高いのを急に入れてもパーティの質が下がるだけなのは有名な話だ。所詮、これもまた現実なのだから。


「わかった。2人共、よろしくね」

「はい!」

「……任せて」

「あ、別に僕は女の子と一緒だからって発情したりはしないから!」


 そう念を押しておく。2人は少し寂しそうな顔をしたのは気のせいだと思っておこう。






 ■■■






「そういうことで、本日限りでパーティを抜けさせてください」


 ニーナは部屋に戻ると、彼女は早速自分が所属しているパーティにそう言った。友人は突然のことに疑問を浮かべていたが、リーダーの女性は「やっぱり」と小さく呟く。


「わかったわ。でも、そういうのはちゃんと前から言う事」

「わ、わかりました」


 ニーナはお礼を言い、部屋を出ていく。他のパーティメンバーにお礼とお詫びを言いに行ったのだ。

 ニーナの友人はパーティリーダーに詰め寄る。


「あんなあっさり許可しても良いんですか?」

「本当は色々と言いたかったんだけどね。でも、変に引き留めて弱体化されてもね。それに、なんとなくそうなるかなぁって前々から思っていたし」


 リーダーはふと、彼女と初めて会った時のことを思い出した。

 入ったばかりで右も左もわからない新人だったが、彼女だけは他の新人よりも何かが違っていた。だからこそ誘ってみたが、結果はこうなった。


「それに、人生は人それぞれ。どのような道を歩んでもおかしくはない。彼女がそこで頑張りたいって心から思っているんだから止めようもないし、ザンロウにそれと聞いたことあるけど、少なくとも向こうの男はちょっと特異だけど人としては問題はないって言ってたしね。マスターのお墨付きってのはかなり凄いわよ」


 リーダーは少し強引に話を切る。友人はそれ以上は何も言わず、ただ少し鈍くさい友人がいつも無事に戻ってくること内心祈っていた。






 ■■■






 翌朝、パーティ結成を果たした僕らのことがギルドのラウンジ内にある電子掲示板に表示されたことで主に僕が嫉妬の視線を向けられた。その視線に耐えつつ3人で食事をしていた。


「そういえば、ユウヤ様は職を設定されていないんですか?」

「ああ、うん。何故か知らないんだけど初期設定ではなかったんだよね」

「それならば、プロフィール設定で職を選べますよ」


 言われて僕はすぐにプロフィールの設定画面で職の欄を開くと、今僕が選べる職がたくさんあった。


「職適性がない人って大体はどの職にも付けるらしくてこういう措置があるそうです。聞いた時はびっくりしましたけど」

「じゃあ曲芸師(ティナー)にする」

「何故!? そこは戦士とかじゃないのですか!?」


 あぁ。確かニーナさんはちょっと無茶な戦い方を知っているんだっけ。


「僕の戦闘方法って結構ティナー寄りだからね。それに代わった特技とか持っていたら色々できるみたいだし」


 そう言うと2人は納得できていなかったので、食事の後にFランクの任務でありがちなゴブリン狩りを選んで任務に出かけた。


「……た、確かにティナー向きではありますね」

「……ソニックステップ、ズルい」


 一気に10体ぐらい倒した後、そんなことを言われた。まぁわかるけどね。木から木へ、かく乱の後に一気に切り捨てるのは少しばかり癖になる。ゴブリンも決して弱くないだろうけど、スピードが乗った攻撃は思いがけない一撃を生むとは正しくこの事だろう。


「……それにしても、おかしい」

「? どうしたの?」


 アンジェさんがぽつりと漏らしたのを聞こえた僕はゴブリンの耳を採取しながら切断しながら聞いた。


「……普通、森にゴブリンが固まっているというのは聞いたことがない。やはりブラックパルサーの一件以降、何かが変わっている気がする」

「そうですね。わたしもゴブリンは森ではなく洞窟の奥に潜んでいると聞いています。そのため、森に大量発生しているのは何かねぐらで異常があったのではないかと……」


 そういえば、そんな話を聞いたことがあったなぁ。ゴブリンってRPGで知性が低い生き物として扱われていることがあるから忘れているけ―――


 ―――キンッ!


 僕の前に出たアンジェさんはサーベルで何かを弾く。その何かは弾かれたことで回転が加わり、近くの木に当たって落ちた。


「これは……矢?」

「……ゴブリンアーチャーが近くにいると思う」

「そしてゴブリンは基本的に群れで行動することが多いですね……」


 つまり今のが斥候だとすると、本体が近くにいるってことになる。そう考えたと同時にゴブリンたちが四方八方から姿を現した。


「囲まれているね」

「わたしに任せてください!!」


 ニーナさんが前に出ると呪文を唱えた。


「風よ、眼前の群れを蹴散らせ。《ハリケーン》!」


 竜巻が現れ、ゴブリンたちを刻んでいく。僕らは開いた道に向かって走った。だけどゴブリンたちは急いで先回りした。


「もう一度―――」

「その心配はないよ」


 地面から氷柱が現れ、ゴブリンたちが貫かれる。僕はニーナさんを抱きかかえて氷柱を足場にして飛び越えた。アンジェさんも軽々と超えて森から草原に出た。


「降ろすね」

「あ、ありがとうございます……」


 顔を赤くするニーナさん。それよりも僕は右の方から現れた敵が気になった。


「そんな……!」

「あれは……ゴブリンソルジャー!?」


 一般的なゴブリンは棍棒や石斧が主だけど、相手は割と大きめな剣を持っている。さらには胸部に胸当てをしており、肩パッドも装着している。肩パッドにはとげとげがあるので、あれで突かれたら痛いどころでは済まないだろう。

 僕は方向転換してゴブリンソルジャーの方に走った。途中「ソニックステップ」を使って加速、股を通り過ぎて上に飛びながら回転しつつ背中を切る。痛みで叫ぶけど剣技初級スキル「スピアショット」で首を貫いた。


(よし、今度は貫いた)


 もしキング・ブラックパルサーみたいに剣が折れたらどうしようと思ったけど、あれが特例なだけのようだ。

 周りのゴブリンたちがソルジャーが倒れたのを見て動揺している。だが群れの奥からさらにソルジャーが2体現れてやられた味方を見て怒りを露わにしているようだ。


「ユウヤ様!」

「大丈夫! ニーナさんはアンジェさんの補助をして!」


 1体がわき目もふらずに突進してきた。他の初心者ならそれでビビるかもしれないけど―――僕を前にしてそれは愚策だ。

 前に出たゴブリンソルジャーの腹部を地面から出た氷柱が貫く。2体目は急に止まったが、そもそもここは傾斜。そう簡単には止まらず、巻き込まれた形で貫く。だが2体目はそれで倒しきれなかったのか後ろに下がって警戒される。様子を伺って僕が所持している武器を見定めている感じだ。

 「ソニックステップ」で加速。そして攻め方を変えるためにゴブリンソルジャーの後ろに回り込み、短剣を2本抜いてアキレス腱がありそうな場所を素早く刻んだ。ゴブリンソルジャーは悲鳴を上げるけど、僕はお構いなしに足をひたすら刻んでいく。


「キキーッ!!」


 周りからゴブリンソルジャーを援護しようとゴブリンたちが攻撃してくるけど、僕は短剣を回転を加えるようにして投擲した。牽制のつもりだったんだけど、相性が良いのか曲芸師の力なのかわからないけど、短剣に触れたゴブリンは負傷した箇所によって腕が落ちたり顔が割れたりした。ちょっとグロい。

 ゴブリンたちは戦意を喪失した者たちから逃げ始めたが、不意打ちが怖いのでもう少し氷柱で貫いて戦力と戦意を削いでおく。ついでに生き残っているゴブリンソルジャーの心臓も潰しておいた。とりあえず使えそうなものは剥ぎ取って回収し、2人に合流した。


「ただいま、そっちは……聞かなくても良さそうだね」

「……問題ない」

「援護もほとんど必要なさそうだったのでわたしもゴブリンを倒していました」


 何とか無事で良かった。それにしても、随分と凄いことになってるなぁ。


「それにしても、やっぱりこの発生率は異常だよね?」


 僕の質問に2人が頷く。この状況、どう考えても何らかの要素が絡んでいるとしか思えない。


「まだ確証はないから、数日かけて調査してからザンロウさんに報告しておくか」

「―――その必要はねぇぜ、坊主」


 声がした方を向くと、体格が大きい人が現れた。どこかで見たことがあるような……。


「え? どうしてあなた方がここに……」


 どうやらニーナさんは知っているようだ。彼女に耳打ちするように「誰?」と質問すると、説明してくれた。


「この方は「バンガス」さん。私たちのギルド「ファウスト支部」に所属するSランク冒険者で、チーム「グランドハンター」のリーダーです」

「つっても、坊主とはこれで2回目だけどな」

「………あ」


 思い出した。そう言えば森でキング・ブラックパルサーと戦って来た時に現れた人だ。

 歳は大体40ぐらいのベテラン……と思う。正直年齢とか知らないから何とも言えない。


「あの時はありがとうございました」

「いいって。そもそも初心者相手にあれは辛いからな」


 キング・ブラックパルサーのことだろう。実はあの時のテンションに任せればあるいは……とかは流石に思い上がりがすぎるので考えないようにしよう。


「にしても、お前ら凄いパーティだな。新顔でこれじゃあ、俺もそろそろ引退を考えないとな」


 流石にSランク引退は衝撃的過ぎると思うけど……。

 それにしても、この人は強いな。雰囲気はおおらかって感じだけど隠されていると言うか、前面に出していない気配が只者じゃないって感じがする。


「ところでよぉ、お前ら。これからどうする? 戻るか?」

「そうですね。ステータスの更新もしたいですし。2人はどうする?」


 話を振ると、アンジェさんはまだ戦えそうだけどニーナさんは少し疲れているみたいだった。


「……戻ることに賛成」

「わ、わたしはまだ―――」

「……無理は厳禁。死亡率が上がるだけ」


 言われてニーナさんは口を閉ざす。僕らは倒した奴らの素材を回収した後、バンガスさんのパーティと合流してギルドに戻った。

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