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異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~  作者: ス々月帶爲
第三章 自衛隊の在り方(前)
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第八部

「そちらは?」


 指揮通に入ると、京谷がイリューシャンに気付き問い掛けてきた。そういえば、神聖ロリ守護騎士旅団とは殆どの隊員が顔合わせしていないのか。


「ビルブァターニの軍人さんよ」


 京谷と墨田は軽く会釈をした。イリューシャンは見るからにまだ子供だから、半信半疑なのだろう。

 私は、イリューシャンに目を合わせた。


「イリューシャン副旅団長。中央即応連隊第一中隊長より正式に、中隊本部の助言を賜りたく存じます」

「何を言っているのかよく分からないのですけど、イツミカ王国の事について教えれば良いのですね」


 了承が得られた。車内は狭い為、肘をぶつけないように注意しつつ敬礼をした。異世界にも敬礼文化はあるらしく、イリューシャンも二の腕を体に対し直角にした。


「小隊長、小隊長。こちら一分隊。敵の攻撃が停止した為、今の内に後送を行う。尚、発見した傷病者に関しては、3名。他要救助者6名」

「了解。この際、定員など関係無く後送せよ」

「了解」


 攻撃が止んだということは、指揮系統をやれたのか?さっき、イリューシャンが私の9mm機関拳銃を使って、一発で誰かを撃ち抜いたが、もしかしたら指揮官だったのか?同時に、紫色の魔法陣のようなものも消えたが、術式展開者と敵指揮官は同じだったのか。

 何だ。人がやられて、少し喜んでしまうこの感情は。戦争とは、こうも恐ろしいのか。結局は、仲間だけなのか。仲間が、部下がやられなければ、敵はやられても良いのか。


「後送の完了を確認」


 戦争の怖さを分からされたところで、我の任務は完了した。CPから追加の任務が来れば、それに応える事になる。だが、もし次に任務があるとすれば、それは攻撃だ。


「中隊長、中隊長。こちら宇野。各部隊の損害を合わせて報告する。第一分隊、傷病者3。第二分隊、傷病者5、落伍1。第三分隊、傷病者3、落伍1。送れ」

「こちら小隊長。了解」


 案外損害が大きいな。しかしながら、死者の報告が無いだけでも物凄く安心した。本当に、杞憂に終わって良かったと思う。

 敵はどうだろうか。敵は上空にいるから、撃たれたら地面に叩き付けられるのだろうか。生存は絶望的かもしれないが、救護を向かわせよう。


「第二小隊に。敵傷病者を捜索、出来れば回収する。衛生と向かえ」


 京谷が応えた。各方面に、慣れた手つきで無線連絡をする。


「凄い……。相手と一瞬で通信が出来る機械を各部隊に配備しているのですね!私達の旅団には数える程しかありませんよ」


 どうやら、無線機は異世界でもあるらしい。しかし、工業力はあまり持ち合わせていないようだ。


「あら」


 指揮通車内に、後付けされた最新の電子機器に見入っていたイリューシャンが、唐突に首を傾げた。


「イツミカは撤退しました?」

「何で、そう思うの?」


 何故かイリューシャンは敵の事を話始めた。何の脈絡はない。


「魔力が干渉しなくなったんです」

「成程……?」


 魔力の干渉……?気配とか、そういう類いのものだろうか。

 いや、理解出来ない範囲の物は、理解しない方が良い。兎に角今は、理解するよりも信憑性を確かめるべきだ。


「鈴宮、敵はどうなの?」

「敵の攻勢開始は報告されていません」

「じゃあ、戦車は?」

「戦車は、分からない、と」


 くそ。確かめようがない。投光器を落として、待機するか。もう、光源に奇襲効果は無い。


「投光やめて、全部隊待機。5分経過しても動きが無かったら敵が撤退したと判断する」

「74、74。こちら一中隊。投光器を切れ」

「こちら74。了解」


 イリューシャンが嘘を吐く理由はとりあえず見当たらないし、ここは信用しよう。

 数分経過した辺り、ゴンゴン、と指揮通の後部ドアが叩かれた。

 それに反応した京谷は、直ぐ立ち上がり無警戒にドアを開けた。


「連隊本部の君島です」


 外開きの扉から覗いたのは、陸自迷彩であった。

 中即連本部管理中隊、通称本管にある部隊の一つ、連隊本部班の一尉だ。彼女は、演習や訓練等の時も、こうして部隊を訪れる役割を持っているので、顔見知りである。

 連隊本部班を現場部隊に派遣したという事は、連隊は既に、我に接近しつつある複数師団規模の敵集団に対して、防御、恐らくは攻勢防御の準備を開始したようだ。

 君島一尉がこうして中隊本部に訪れたのは、部隊損耗の確認は元より、隊員の士気を推し量る為だ。

 どうしても士気だけは、現場の報告が信用出来ない。当事者でなく、第三者が客観的に量るのが理想だ。


「早速ですが、時間がありません。損害はどれ程ですか?」


 左手にメモ帳を手にした君島一尉が切り出した。


「戦闘を行ったのは、第一小隊と第三小隊、本管衛生小隊で、損害が出たのは第一小隊です。第一分隊が……」

「中隊長」


 鈴宮が紙切れを渡して来た。「傷,9 落伍,3」と書かれている。まるで大臣に急遽メモを渡す秘書官みたいだ。


「傷病者9名、落伍3名ですが、後送に関しては現場で調整がなされている可能性があります」


 その後も幾つかの質問があり、君島一尉の聞き取りが終わった。そして、両手でパタン、と音を立ててメモ帳を閉じた。


「では、私は第一小隊へ向かいます」

「あ、待って下さい。私も同行します」


 私自身、とても気になるのだ。初の野外戦闘、これが如何なるものか。

 指揮通に入ってから数分足らずで下車した事になる。まだ、舗装されておらず、太いタイヤ痕がここが道であることを指している。そのタイヤ痕に沿って、WAPCが4輌停まる北門へと歩を進めた。

 隊員の声が段々聞こえてきた。弾薬の音も聞こえる。


「そういえば、今、本部はどんな方針を立てているんです?」


 これからやる事は出来るだけ早く知っておいた方が良い。

 米陸軍には、3分の1ルールというものがあるらしい。幹部候補生学校の教官が仰っていたが、下位部隊に多くの猶予を与える為、連隊等の本部が具体的な作戦を立てるのに攻撃開始を基準として3分の1の時間を使い、残りを下位部隊が指揮等するのに当てるというものだそう。

 幾ら、3分の2の時間が与えられるとは言え、時間はあればある程良い。上位部隊と並行して攻撃準備をしておけば、所要時間が増えるのだ。


「騎馬隊約3個師団、歩兵約5個師団が接近しています。連絡によると、渓谷からビルブァターニに越境し、縦陣にて前進中とのことです。2000(にーまるまるまる)時にここに到着すると見込まれています」


 3と5……8個師団だと?対して私達は、一個連隊にも満たない。絶対に勝つ事が出来ない。太刀打ち出来ないじゃないか。


「連隊長はどうお考えで?」

「連隊長は抗戦なさるおつもりです」

「は?!」

読んで下さりありがとうございました。


前の第七部において、重要な表現を抜かしてしまいました。今は訂正いたしました。申し訳ありませんでした。


最後に。皆さん。是非、政党について客観的に見つめ、自分が日本の未来を託せると信じる政党、人物に投票するようお願い申し上げます。他人に流されず、「自分の意志」にて投票されるよう、強く申し上げます。投票は絶対して下さい。

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