8話
おじいちゃん視点に戻ります。
ええ娘じゃった。
如何にも学生です、という格好じゃったな。
魔法学園とやらの生徒なんじゃろう。
実は部屋に付いているベルは中にセンサーが入っているハイテク仕様じゃ。
ベルを鳴らすと何号室のベルが鳴ったか分かるのじゃ。
だから注文もすぐに反応できる。
こちらの世界がどれほどの利用者が来るかは分からんので、リットさんの言う通りアルバイトを雇ってもいいかもしれん。
そう考えながらコーヒーの残りを飲み干していく。
ふと鳴るドアベル。
おや、またお客さんか。
初日にこんなに入ってくるのは幸先いいのう……。
「はいはい、いらっしゃい」
「おう爺、誰に許可出してここに店出してんだ?」
強面のお兄さん方四、五人じゃった。
許可と言われても、リットさんしかおらんのぅ。
「商業ギルドのリットさんじゃよ」
「リットだあ?あの黒狸め…」
「どうしたんじゃ?」
「知らなさそうだから言っておく。ここはなぁ、ベルド伯爵の土地なんだよなぁ。こんなところに無許可の店なんて出されると困るわけだ。つーことで払え」
「何をじゃ?」
「ああん?土地代と営業許可代に決まってんだろうが!!」
こんな典型的なやつらいるんじゃなぁ。
リットさんに正式に営業許可証も貰ったし、そもそもこんな路地裏が伯爵家の土地だとも思えん。
土地上げかのぅ。
「断るよ」
「あ?今なんつった?爺」
「断ると言ったんじゃよ。お主らに払う金など一銭たりとも無いわい。ほれわしも暇じゃないんじゃ。帰った帰った」
「てめえ、自分で何言ってんのか分かってんのか?ベルド伯爵だぞ?」
知らんわい。
異世界初心者に分かるわけがなかろうが。
「ほれ、帰ってくれ。これ以上いると衛兵を呼ぶことになるんじゃが」
呼ぶ方法など無いが。
「チッ、また来るからな。なんでベルド伯爵知らないんだよ…」
「はいはい」
また来るのか…。
なんかもにゅもにゅ言っておったが何じゃったんじゃろうか?
無駄に疲れたのう。
リットさんに報告しておいたほうがいいかのぅ?
電話が欲しくなるの。
そんな魔道具がないか聞いてみようか。
あのいざこざの後、お嬢ちゃんからコーヒーが飲みたいとベルが鳴った。
多少苦いぞと忠告はしたが耐えられない苦さだったらしく、砂糖とミルクを入れた。
それでもまだ苦さが残るがマシになったと言い、勉強に戻ったのを見てつい「大人じゃな」と言うと部屋から押し出されてしまった。
近所の子らと同じ扱いをして怒ったんじゃろうか?
ふむ、分からん。