7話
今回は第一お客さんであるルル・アスト・ティーリアン目線です。
私はルル・アスト・ティーリアン。
このティーリアン王国の第八王女。
第八だから王位継承権もないし、結構気軽に暮らしている。
今日は学園のある日だけど、いつも自習ばっかりで家にいても変わらない。
家にいても学園にいても変わらない環境で集中力が切れてくる。
どこかいい場所がないか探しているけど、第八王女という肩書の所為で周りが騒がしくなる。
集中なんてできない。
学園に行くって言ってジイには騙せたのにすぐ見つかっちゃった。
ジイから逃げていく間に路地裏へと入ってしまった。
私は方向音痴ではないけど、王都の路地裏には迷う自信がある。
せめて表通りには出ないと……。
そこにわずかに香る香ばしい匂い。
この家からである。
「【open】……?見たこともない字だけど読める?不思議な感覚…」
表通りへの道も知りたいし聞いてみよう。
木でできた扉を引く。
チリンチリンと鈴の音が鳴り、明るい部屋に入っていく。
部屋の中は少しばかり暖かい。
なにかの魔道具でも使っているのかな?
「いらっしゃい」
お店の人はジイより歳いったおじいちゃん。
腰は曲がってないけどかなり年齢が上だと思う。
受付らしいところから出てきたけど、ここは何やってるんだろう?
「ここはなんのお店?」
「ここは『自習屋』じゃよ」
「じ、しゅう…や……?」
最初はどういう意味か分からなかったが、おじいちゃんの話を聞く限り、私たち学生以外にも勉強できる場所を提供しているらしい。
宿屋さんとはまた違ったタイプのお店だった。
私も集中して勉強できるところを探していたし、丁度良かった。
「利用していくかの?」
その声に迷わず返事する。
すると次にしたのは水晶玉に手を置くことだった。
するとおじいちゃんはちょっと考えた後16歳は銀貨1枚だと言われた。
あの水晶は関所や学園にもある鑑定魔法が付与された魔道具で触れた者つまり私の情報が出るようになってる。
私は隠蔽魔法が付与されたネックレスのお陰でこれまでこの水晶には映ることは無かった。
なのに言い当てられたということはあの水晶は王都にあるどの水晶より優れていることになる。
優れているということはそれほど高価なもの。
こんな路地裏のひっそりとした店には悪いが、似合わない品だとは思ってしまった。
16歳って言われたから年齢確認だけかと思ったりもしたが、案の定名前も確認されていた。
ティーリアンの名前を出すと、お店の人はすぐに顔を変える。
代金をタダにする人やすごく高額に設定する人、中にはタダにする代わりに宣伝してくれなんて言う人もいた。
でもこのおじいちゃんは銀貨1枚でいいんだって。
この王都に住んでいてティーリアンの名前を知らないということは無いし、好印象なおじいちゃんだった。
その後はあれよあれよと部屋が決まり、階段降りた先の部屋に入った。
こういうとこは路地裏ということもあり環境が悪かったりするんだけど、勉強に集中できる環境を提供してるというだけはあって下手な宿屋より全然綺麗だった。
いいところを見つけたかもしれない。