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#9 薩摩での一仕事と・・・

2ヶ月以上期間が空いてしまい申し訳ありません。久しぶりの更新です!


「いらっしゃいませ~って貴方様は!」


「こんばんわ、女将さん。」


「こんばんわじゃないですよ、あの後どうなったか心配で心配で。」


「こんな浮浪者に心配まで...ご心配をおかけしてすいません。」


「それで、大丈夫だったんですか?」


「えぇ。領主様の誤解も解けたようで、無事解放されました。」


「り、領主様に会ったんですか!」


「えぇ、まぁ。事情を説明したら、納得してくれたみたいで。元々、会いたかったんで、手間が省けて助かりました。」


「て、手間が省けたって!あ、貴方様は一体何者でいらっしゃいますか?隈本の城を落としたとか聞きましたが…」


「そこまで広まっていたんですか。確かに、それは私です」


「あの噂は本当だったんですね。にわかに信じがたかったんですよ。ましてや、貴方様のようにお若い方がと思うと…」


「まぁ、黙ってるつもりはなかったんですけどね。黙っていた方が迷惑がかからないと思って。結局かけてしまいましたが…あ、ところで今日泊まる部屋ありますかね?」


「あ、えっと、領主様に大変申し訳ないんですが、今空室が少しも無くて...」


う~ん、困ったな。今日泊まるところないんだよな~今から帰るしか、ないのかな〜ヘリでも呼ぶかな…


「ありが…」


「領主様に失礼でないのでしたら、私どもの部屋で良ければ、ご案内できますが...」


「え、でも、いいんですか?ほら旦那さんとか、娘さんとかも見ず知らずの輩がいるのは迷惑じゃないですか?」


「うちは主人が亡くなっていますので、娘の方も、今朝の出来事から、貴方様の…その…いえ、何でもないです。そこら辺は大丈夫なんです。」


「すいません、失礼なことを聞いて。では、今日一泊、お世話になります。」


一言お礼を言った俺は、女将さんの部屋で1泊お世話になることにした。


部屋の方へ案内されると、女将さんは仕事に戻りますのでと言って、そのまま仕事に戻った。俺はというと部屋の一室に取り残されたのであった。


少し部屋で待っていると、女将さんの娘結月さんが、入ってきた。


「な、なぜ、貴方様が?」


ここでも、貴方様か。その呼び方恥ずかしからやめて欲しいんだけどね。身分社会だから仕方ないけどさ。


「あ、いや泊まる部屋がないって言われて、野宿でもしようかなと思ったんだけど、女将さんが私達の部屋でよければって言われたから…」


「そ、そういう事じゃなくて!今日島津家の人達に連れて行かれましたよね、私が逃げてと行ったのに。」


「ご心配おかけして本当にすいません。今回、薩摩に来たのは島津の領主様に会うことが目的だったんで好都合だったんですよ。」


「え、そんな簡単に会うことが出来るわけないじゃないですか。考えが甘すぎますよ!」


「ま、ラッキーでした。」


「ら、らっきぃ?」


「あ、いや幸運でした。」


「そうですか、まぁ、無事でなによりです。あ、そうだ。今日一日中泊まるなら、お風呂沸いてるんで、入っちゃってください。」


女将さんの娘さんは、少し泣いていた。その涙を拭うと、笑顔をみせた。その笑顔は、天使のようだった。

あ、随分と心配をかけてしまったんだな。こんな優しい人を心配させるなんてまだまだ男してなってないなぁ、俺。


「本当に心配かけてすいません。あと、こんな見ず知らずの私を心配してくれてありがとうございます。」


「もう、本当に心配したんですからね。」


「なんで、そんなに心配を?」


「だって、貴方様は私の名を可愛いと言ってくれたじゃないですか。」


「それだけですか?」


「はい。私、最初はこの名前好きじゃなかったんです。ほら、私の名前にある《月》っていう字がついてると、暗いとか、なんとか言ってくる人が多いんです。なのに、貴方様は…可愛いって。いい名前だって。どうして、そう思ったかはわからないですが…」


「だって、いい名前じゃないですか!結月さんの《月》は夜の暗闇を照らす光、《結》はそれと人々を結ぶってことですよ。本当にいい名前じゃないですか。そんな悪く言う奴、俺がぶん殴ってやりますよ!」

この時代は名前とかに、色々と縁起が悪いだの、なんだの言う奴が多いからな。


「ふふ、ありがとうございます。」


「ところで、年齢をお伺いしても?」


「あら、女性に年を聞くのは失礼だと思いますよ。」


「ですよねぇ。」


あぁ。この人の笑顔を守りたい。この人と一緒に生きたいと思った。元の世界でもこんな風に思うことはなかっただろうなぁ。なにせ、仕事ばっかでそっちの方は手付かずだったし。その後、結月さんは耳打ちで17歳と教えてくれた。ん、17歳。ちょっと待てよ、若いとは思っていたけど、神様に32歳から16歳に若返させられた俺は、本当は年下で、今は年上ってことになるよ?いいの?


「あ、そう言えば、名前まだ言ってませんでしたね。」


「山田 誠と申します、年は16。隈本に城を一つ持っています。噂で聞いていると思いますが、隈本の城を落としたのは私です。島津家が来たのもその理由です。あと、名前で呼んで構いませんよ。貴方様とか呼ばれるの恥ずかしいですし。領主になったのもなりたくてなった訳ではないので。」


「普通に接してもよろしいのですか。」


「そっちの方がありがたいです。年上ですし。」


「でも...」


ガラガラガラガラ


「あら、二人見つめ合ってどうしたの?」


「はっ!?い、いや何もしてないですよ!?」


「あら、ほんとかしら。フフフ、若いっていいですねぇ。」


「女将さん、そんなんじゃないっですってばぁ!」


女将さんはずっと微笑んでいて、結月さんはずっと顔を赤くして、下を向いて何も言わないので、俺はお、お風呂借りますねと言ってそそくさとその場から離れた。



「ふぅーーーー。やっぱり外を見ながら入る風呂はいいなぁ。」


今はここを俺一人で貸し切り状態。とりあえず、隈本に帰ったら、内政を早く進めないとな。そうでもしないと、一揆とか起こったら、タダじゃ済まないし。それにしても、島津との話も上手くいったし、あと残るは大友の説得か...これが一番手こずりそうな相手なんだよな~。一応、九州一の大名だし。龍造寺や島津はともかく、名も無い商人である俺たちと対等とされるのは嫌だろうからな。これまでより警戒を強めないとな。


ガラガラ


「ん?な、ななななんで!」


扉が開いた方向へと目をやるとそこには結月さんがいた。


「な、なんでと言われましても、母からお客様なのだから、お背中ぐらい流して差し上げなさいって。」


「いやいやいや、もう体も洗ったんで大丈夫ですよ。」


「そうですか…」


「はい、そうです。だから…」


「じゃあ、せめて、一緒に湯船に浸からせて下さい。」


えぇーーーーーー!?!?!?お、落ち着け、山田誠。見なければ、いいんだ。見なければ…お、落ち着けェ、落ち着けェ、はい!ゆっくりと深呼きゅうーーーうぅぅぅぅ!?!?

そこから、新たに入ってきた人物によって、急に頭が真っ白になった。


─────────────────

その後、結月さんの膝の上で目が覚めた。結月さんによると、女将さんが入ってきた途端に赤くなり、倒れてしまったのだと。恐らく、興奮したのだろう。って、変態か俺は!


「起きましたか?すみません、無理をさせたみたいで。少し調子に乗りました。」


「いえいえ、大丈夫です。それにしても、外が騒がしいですね。今日は祭りでもあるんですか?」


「いえ、別に何もないですよ。ははっ」


やけに結月さんの様子がおかしい。これはきっと、何かあったのだろう。雰囲気からして、祭りみたいな楽しいものではないはず…

だとしたら、何だ…この国で何が起きている………


あ!


そう、答えは1つしかない。それは戦だと。すっかり、戦国時代に来ていたことを忘れていた。


「どことの戦ですか?」


結月さんの顔がはっとなった。やはり、そうか。だから関所の守りが厳しかったんだ。てことは、薩摩から抜け出すのはちょっと厳しいかもな…


「相良家と伊東家です。薩摩の国の上に位置する国で、戦力が整っては薩摩に進行してくるんです。そのため、最近はお客様が来なくて…今日は誠様が、ここで、騒ぎを起こしてしまったので、一目見ようと泊まり客が多かったのです。」


「そうでしたか、なんかほんとにすいません。」


「いやいや、ここ最近お客様が来てなかったので、むしろ助かったのはうちなんですよ。それでも、やっていくのはもう厳しいかと…」


戦のせいで、人が来ないからな。それじゃあ、ちょっとは商人らしいことしますか。一応、商人だし。まだ、それっぽいこと、一度もやってないし。


「あの結月さん、これからするのは1つの提案があるんですが、女将さんを呼んで来てもらっていいですか?」


「はい、分かりました。」

そう言って数分後、結月さんは女将さんを呼んで来てくれた。


「お忙しいところ、すいません。さっき、結月さんから旅館の事情を聞きました。」


「そうですか…うちも主人が亡くなってから二人でなんとかやって来たんですがね。限界というものがありまして…もうやって行くのは厳しいんですよね。借金もどんどん増えて。主人がせっかく、遺してくれた店なのに…」


「守れますよ、この旅館。」

その一言に、二人はギョッとして、こちらを見る。


「身分が上の方にそこまでしてもらうのは、ちょっと…私達、下々のもののためなんかに…」

さっき、お風呂場で、からかわなかったっけ?とも思ったが、誠には商社マン時代の功績がある。


「そんなこと言わないで下さい。こんな私を心配してくださったお礼と思ってもらえれば…それに、こんないい旅館を失くすなんてもったいないですよ。」


「・・・わかりました。」

まだ、少し納得のいっていない様子。時代のせいもあるのだろう。粘り強く交渉するしかない。


「じゃあ、私の話を聞いた上で、決めてもらっても構いません。」

女将さんは頷く。


「では、説明しますね。まず、この旅館を私が買います。そして、借金も全額私が負担します。それで、九州全土が安泰になった時に、旅館を返します。それまでは、この旅館を閉めます。返した後、また同じようなことが起こる可能性もあります。だから、『旅館皐月』の二号店を隈本の城下に作ります。一先ずは、そこでやってもらって、いずれ、全国に旅館皐月を開店しようとも考えています。」


「なぜ、全国にまで?それでは、領主様は損しかしないんしゃないんですか?」


「そうですね。もちろん、売上の一部を税として、納めてもらいます。それだけで良いです。それに、今の日本は全国各地で争いばかりで、人の行き来が自由とはいえません。もし、それが自由になった時、ここみたいに泊まるところがあればと。その泊まるところに相応しいのはこの『旅館皐月』だと、私は思います。まだ、二日しかお世話になっていませんが、この旅館はこの地の人々に愛されています。それだけで理由は十分だと私は思います。何より、女将さんと結月さんは優しいですから。」


「わかりました。そこまで、この旅館のことを考えて下さっているのなら、反対はしません。もちろん結月との婚儀の方も。」


「「え?こ、婚儀??」」


「あら、結月のこと嫌いなんですか?」


「いやいや、むしろ大好きですよ!一緒に生きるのなら結月さんと一緒がいいですよ、あ。」


「あらあら、お熱いですねぇ。結月、あなたここまで言わせたんだから、あとは二人ではっきりしなさい。」

見事に、俺は女将さんの策略にはまってしまった。一世一代の告白を相手の親の前でするなんて…穴があったら、入りたい…


「あの誠様、こんな私でよろしいんですか?身分も低いですし…」

最初にこの沈黙を切り出したのは結月さんだった。


「身分は関係ありません。もちろんです。」


「こんなちっぽけな旅館の娘ですよ?」


「はい、構いません。」


「私は誠様のこと、全然知りませんよ?」


「構いません。これから知ってもらえればいいですよ。」


「武家のことなんて、知りませんよ。」


「私もそんなに詳しく知りませんよ、一緒にやっていきましょう。」

結月さんは涙ながらにずっと「私はー、私はー。」と言っていた。

俺はこの時誓った。この涙はもう流させないと。笑顔にさせると。だから、その想いを言葉にのせた。


「結月さんのことが好きです。こんな私でよければ、私と結婚して下さい。」


涙を拭った結月さんは、「私も好きです。不束者ですが、誠さんのお嫁さんにして下さい。」と言ってくれた。そして、嬉しさとあまりの可愛さに、その場で抱きついた。結月さんも私を抱き返した。


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