#7 宿での騒動
翌朝、俺は美女の一声で目を覚ますこととなる。
「お客さん、起きてください。お客さん!」
「ん、ん〜~。綺麗な人だ。あ、え、どなたですか?」
「そ、そんな綺麗だなんて…あ、申し遅れました。ここの宿の女将の娘です。そんなことより、早く裏口の方から逃げてください!」
「な、何かあったんですか?」
「島津軍がこの宿の入口を抑えているんです。恐らく、あなたを探しているんだと思います。今、母がなんとか食い止めていますが、すぐに押し寄せてきます。その前に、早く裏口へ!」
窓からチラッと状況を見ると、本当に鎧兜をきた侍が見た限り、20数名いた。いや、俺昨日なんかしたっけ?いや、したことにはしたんだけど、この国では何にも問題起こしてないよね、そうだよね!?
「わかりました。わざわざ、ありがとうございます。支度を次第出ていきますので…」
俺が着替えるのを悟ったらしく、娘さんは入口にいますと一言そえると、へやから出ていった。
何もしてないのに、捕まるのはなぁ〜。やっぱり、関所で身分を明かしたのがダメだったのか…それにしても、これ以上ここの宿の人たちに迷惑をかけるにはいかない。潔く、投降しますか。
「裏口はこちらです。」
そう言われると、俺は娘さんが案内した逆方向、つまり、入口へと向かった。
「ど、どちらに行ってるんですか!そっちに行ってはいけません!」
「娘さん、これ以上ここの宿の人たちに迷惑をかけるわけにはいきません。なので、すいません。では、これで。」
「そうだ!名前を聞いても宜しいですか?」
「結月と言います。」
「いい名前ですね。ゆづきさん、一日お世話になりました。」
俺は改めて一礼をして、その場に立ち尽くした結月さんを後にして、入口へと向かった。
「女将さん!」
「あ、あなたは!なぜここに、いらっしゃるんですか!」
「まぁまぁ。あのぅ〜私があなたたちの探している商人だと思いますが…」
そう言うと、何人かが、こちらを見てくる。こいつら、明らかに疑いの目をかけているな。
「隈本城を落城させたのは私ですよ。ちょうど、私もあなた達の領主様に用事があったので行きましょう。」
「戯言を!貴様ような青二才が、たった一人で、あの城を落城させることはできるわけがない。」
まぁ、正論といえば、正論なんだけど。あれを落とせたのってほとんど長門からの艦砲射撃のおかげで、一人で潜入しても、安全だったんだよね。でも、こういう輩って、実力示さないとわからないんだよなぁ〜。
「なんなら、試しますか。その代わり、私が勝ったら、あなた達の主君のところへ連れていってください。あと、ここの宿には手を出さないでくださいね。」
「あなたは一体?」
「それはね、女将さん。ただの若い商人ですよ。あ、あとこれ。」
ニコッと笑顔で返した俺は女将さんに宿代を渡した。
「こ、こんなに頂けません!」
「あ~、それは今日迷惑をかけてしまった分なので、受けとっておいてください。」
呆然としたままの女将に用を済ませると、俺は侍の方へ目を向けた。
「すいません、お待たせして。ではさっそく、やりますか。殺す気でかかってきていいですよ?」
「ふん、商人ごとき、私が本気を出さずとも、勝てるわ。皆は手を出すなよ。」
その侍は部下に手を出さないよう指示した。この時代の侍って本当に律儀なんだよな、もう一対一の戦いなんか古いのに…
ちょっと、痛い目にあってもらうけど、この一発で終わらせる他ない。
俺と侍の両者が構えると、審判役の人がはじめっ!の合図で戦闘が開始する。
最初は相手の出方をお互いに伺っていたが、侍の方が痺れを切らしたのか、俺の方向めがけて斬りかかってくる。明らかに殺意を持った目。俺は剣を抜くと見せかけて、胸から拳銃を取り出す。そして、狙いを定めると、相手の足めがけて、数発打ち込む。そして、剣を抜くと、侍の方へゆっくりと近づいて、首元へと剣を差し向ける。
一方で、俺の方めがけて斬りかかってきた侍はというと、俺のところにも届くはずもなく、その場に転倒した。周りも音が鳴ったことには気づいたが、何が起こったかはわからずじまいだった。
「参った…領主様のところへ連れていく。」
「わかってもらえたなら、結構です。では、治療するので少し待ってください。」
えっと、確かここに治療器具を入れてたはずなんだけど…あった!
「ちょっと痛いですけど、我慢してくださいね。」
うわ、人体から拳銃の玉を出すって相当グロイな。流石の侍もや、やめてくださひぃーーって半べそかいてるよ。そして、たまを取り出して、出血を抑えて、包帯を巻いた。
「まだ、立って歩くのは激痛が走ると思うので、私が支えるので、あなた達の主君のところへ連れっていってください。」
「かたじけない。それと、先ほどは馬鹿にしてすまなかった。」
「もう、終わったことなんで、いいですよ。気にしないでください。」
そして、重傷者一名を支えながら、他の家来の皆さんと内城へと向かった。