#46 動乱の後処理
投稿が遅れ、すいません…
お待たせしました!
降伏後、捕らえられた肝付軍総大将肝付兼続は島津の領地内の山寺にて監視のもと隠居をすることが条件で許された。もちろん、肝付軍の家臣は反発したが、家臣、兵の命が何よりだという当主の意向のもと、条件をのみ、肝付家はこの戦で多大な被害を出したため、兼続の後を継いだ息子の良兼は島津家に従属した。
その後、島津軍は伊東軍の領地へと進軍。大軍でやって来た島津軍に、最初は籠城で反攻するが、一つまた一つと城が降伏していく度に、兵の士気も低下。従属及び領地没収の条件で降伏した。
こうして、島津軍は大隅、日向の2カ国を手に入れ、南九州の覇権をほぼ手中に収めた。
「誠殿、龍造寺殿。此度の戦、本当にかたじけない。」
「島津殿、大隅、日向の2国を手中に治めたのは島津皆の力じゃ。儂こそ、良い戦を見せてもらった。」
「隆信殿の言う通りですよ。肝付軍が私達のところに来た際も、代わりに盾となり守ってくれたじゃないですか。」
「いや、ただ私がお礼を申し上げたいだけなのです。後で、大友殿にも書状を書かなくては。」
深々とお辞儀をして、感謝を述べた島津貴久。その肩を叩いて激励した誠と隆信。影から支援した大友。同盟の結束力はこの戦でより強固になったものだろう。
「お二人はこれからどうするので?」
「相良家と阿蘇家の後始末をしなければなりません。どちらも今回の戦で肝付・伊東家同様に多大な被害が出ましたからね。」
「それに、相良家の捕虜がこんなにもいるから。これを交渉材料にできるやもしれんぞ、誠殿。」
「は?」
明らかに交渉材料不足だと思うんだが…これに当主やその倅が捕虜になって入れば、また別なんだけどね。
「なるほど、そういうことですか。」
誠は貴久と隆信が考えていることが全く理解できなかった。それを察した貴久が誠に教える。
「相良家を誠殿が従属させるのですよ。」
「・・・・・・は?イヤイヤ、無理ですよ。隆信殿が来てくれたから捕虜にできたんですよ。龍造寺家の力が大きいんですよ!」
「しかし、追い返したのは誠殿の力。もし、従わないのであれば、あの巨船で相良家の領地近くで、巨砲でも撃てば良いではないか。それにここには鉄の馬をいるしな。」
「あれは防衛のために使ってるだけで、攻撃にはもう二度と使いたくないんですが…」
「誠殿。違う違う。何も龍造寺殿は『殺せ。』とは言ってはないんですよ。誠殿がいかに少数の兵でも武力で優っていることを見せつけてやればいいんですよ。」
「そういうことじゃ。」
「もちろん、そんな簡単に上手く行く話ではないです。もしかしたら、受け入れたと見せかけて、裏切られるかもしれません。代々続いている戦国大名なのですから。そこは誠殿の裁量次第ということですよ。」
「まぁ、上手く家臣に取り入れることができれば、山田家はより強固になるだろう。」
「・・・」
二人が考えることにも一理ある。相良家さえ服従させれば、九州内ではほぼ動乱が起こることはない。そうすれば、俺は商売で国を豊かにできる。それでも、 情報が足りなさ過ぎる。いくらこないだの戦でコテンパンにしたとは言え、鎌倉時代から続く由緒正しき家だ。そんな簡単に従う筈がない。全く、そんな根拠どこにあるのやら……
「まぁ、悩んでも仕方ない。誠殿、とりあえず帰りに寄ってみようではないか。」
「はい……え?」
誠は隆信に強引に連れて行かれ、内城を後にした。
「殿、本当にやるんですか?とても成功するとは思えませんが…」
「仕方ないだろう。私も成功するとは思っていない。ただ、上手くいけば、九州での戦は終わるのだ。やってみる価値はあるだろ。」
「まぁ、殿の命とですが…」
「但馬、怖いこと言うなよ…」
今回の戦では但馬が同行していた。そして、内城を出立した龍造寺・誠連合軍は自分の居城に帰る寄り道に肥後国の南相良家領内へとゆっくりとその足を進めていった。
「我々は城へ帰る途中、今後の相良家の処遇を伝えるため立ち寄った。当主にお目通り願いたい。」
あー、とうとう来ちゃったよ、ここまで。すでに関所の兵は臨戦態勢だし。こっちも武装してるから、そうされても仕方がないんだけど…
「当主に確認する上、そこで待っていただきたい。」
「あい、わかった。」
そこから2時間ほど、待たされた。何事も無く、大軍は相良家領内へと入っていった。
「すんなり、入れましたね。」
「えぇ、相良家も先の戦で大分、消耗しているのでしょう。大丈夫です、警戒は怠っていません。」
「うん、それでいい。何かあったら、自分の判断でら行動しなさい。」
「はっ。」
一応、警戒していたものの、大軍は奇襲に会うことなく、相良家本城人吉城へと案内された。
「ここから先は当主とその家臣一人のみ、城内へとお入り下さい。もちろん、お命の保証は致します。」
「あい、わかった。」
反対しようとした兵を手を上げて諌める。兵たちもそこで何も言おうとはしなかった。
人吉城。山の斜面や川など自然を巧みに利用した、まさに自然の要塞。相良家の本城でもある。
城内に通された誠と隆信以下4名は敵城御殿へと案内された。中に通されると、相良家当主相良晴広とその家臣団が待っていた。
「此度は領内に入れていただきありがとうございます。」
「いやはや、大軍勢で来たものですからてっきり攻めに来たかと思いましたよ。」
「いえいえ、今回は先の戦での決着を付けに参った次第です。」
「決着ですか…」
「はい。相良家の選択はこれよりこの山田誠に従属かお家お取り潰しかです。」
「なんだと⁉︎」
晴広とその家臣たちの表情が一変し、腰の刀に手を当てる。
「もちろん、前者の場合、数千の捕虜を変換と人質を、後者の場合、我が国の全武力を持って制圧します。」
誠は『制圧します』と言った。もちろん、誠にその気はない。できれば、平和的解決にしたいが…
「ふざけるな!我々は頼朝公の時代から続く由緒正しき家。そんな簡単に選べる話ではない!」
晴広の言い分はもっともだ。この時代の日本人はどうも格式にこだわりが強い。
「兄上!お待ちください。私はこのまま山田家に従属した方がよろしいかと兄上に嘆願致します。」
「なんだと⁈頼孝、相良家を滅ぼすつもりか!」
「断じて違います!我々は相良家が生き残るにはこれしかないかと申し上げているのです。現に我が軍は兵力のほとんどを送ったにもかかわらず、敗北したではありませんか!」
「ぐぬっ…」
「それに山田家の後ろには龍造寺家だけでなく、島津、大友も付いているのですよ。」
「だとしてもだな…」
「あのぉ〜、これは提案なんですが…」
「⁉︎」
「そこまで迷っていらっしゃるなら、我が国へ一度赴いてみませんか?あぁ、もちろん無事に帰すことを違います。」
「誠殿、よいのか?」
「だって、これからの家のことを決めるんですよ。そんな簡単に決められませんよ。」
「それに関しては我らにも非があるか…」
「それでどうですか?」
「命は取ったりしないのだな。」
「はい、それは約束します。」
「わかった。」
こうして、急遽相良家一同が山田家領内へと来訪することが決定した。
「誠殿、儂も行って良いか?」
「隆信さんも来るんですかぁ!」
「久々に誠殿の料理が食べたい…」
「はぁ、わかりましたよ…」
なんだかんだで龍造寺家も来ることが決定した。
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