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#38 いざ、琉球へ

学校政策も始まって二週間、ようやく教師も生徒も様になり始めた。誠はお抱え商人と家臣を呼び出した。もちろん琉球と貿易するため、尚氏に親書と貿易許可の返事をもらいに行く。


「そろそろ、対外貿易に入ろうと思う。日本が統一されたときにあらかじめ海外とのつながりは持っておきたい。」


「琉球でしたよね。」


「あぁ、これで金を稼ぐしかないからな。それに、琉球だと中継ぎにはなるが、明とも交渉次第では、貿易できるようになる。」


「それは、確かにおいしい話ですよね。明との貿易は幕府が決めた大名しかできませんし。」


「そうですなぁ。ですが最近、幕府も劣れているとか……」


「あれは、もう駄目ですね。知り合いに堺の商人がいるんですが、いつ終わってもおかしくないそうです。」


「そんなことに、なっているんですね。」


「ということで、今日の昼に出立する。三秋、直茂、与左衛門は留守番。四菱達商人は私達についてこい。太平、鑑周、赤崎は私と共に、琉球へ行くぞ。」


「殿、私も行きとうございます。」


「結月か…………んーーー、しかしなぁ、万一のことを考えるとな……」


「ダメ、ですか?」


「わ、わかった。その代わりだ。私の侍女と結月の侍女を付けるからな。」


「はい!それで、全然構いません!」


「いいんですか、殿…」


「あぁ、いいんだよ。千、莉奈。結月の護衛頼むな。」


「「はい!」」

結月の上目使いに負けた誠は長門ただ一艦を護衛旗艦とする輸送船団十隻を引き連れて、琉球へと向かうのであった。輸送船団にはそれぞれ武装した兵が二十人ずつ乗船し、緊急時に対応している。護衛旗艦長門は十隻の輸送船団をつなぎ、転覆しないよう速力20ノットで進んでいる。


「ナガト、ゼロの発艦準備。索敵を始める。電探でも警戒を重視。」


「了解です、マスター。常に警戒を厳とします。」


「本当はもう少し速力を上げたいのだがな。」


「ですが、輸送船はこの艦みたく強度はないので、転覆する恐れが……」


「それは、分かっている。はぁ……駆逐艦級があればなぁとつくづく思うよ。」


「同感です。あの時、頼むべきでしたね。」


「んー、まぁそうだな。ま、それをしたら、うちは今頃財政難で苦しんでいると思うよ。」


「そうですね。未だに金はありったけありますし。」

ピピピ、ピピ。ピピ、ピピピ。


「こちら、ゼロ。小島から木船三十数隻がこちらの方向に向けて来ます。」


「ナガト、電探に反応は?」


「反応はありません。距離が遠いものと思われます。」


「では、遠距離射撃ではどうだ?」


「当たるかどうか不明ですが、主砲なら届くかと……」


「それだけ、聞けたならいい。各員、戦闘配備につけぇ!ゼロ、直ちに木船が武装しているか確認と座標を送れ。」


「了解。」


「殿。座標、届きました。」


「うむ。では、各員。その場で待機したまま、指示を待て。」

今、現在の輸送船団は長門が先陣をきっているため、単縦陣となっている。また、各戦闘員はボタン一つで攻撃ができる。細かな座標修正はナガトが全て、やってくれる。また、電探も味方以外であれば、海・空・陸の敵を探知可能なのである。


「マスター。木船の連中、槍、剣を持って武装しています。」


「ナガト、この速さだと、追いつかれるか?」


「追いつかれることはないです。ですが、今後のこともありますので、早めに対処していた方が良いかと……」


「お主らはどう思う?」


「私達は南蛮と貿易するときには倭寇の連中には苦労しました。だから、撃てるのであれば撃つべきかと……」


「鑑周殿の言う通りです。中には大筒を持っている集団もいると聞きました。早めに対処すべきです。」


「ここは、倭寇についてよく知っている彼らに従った方が良いかと。今後の我らの貿易をする上で大きな壁になるかと……」


「満場一致だな。お主らこの主砲の威力をよ~~く見ておけ。」


「「「は、はぁ……」」」


「一番、二番砲塔よ~~~うい・・・・・・てぇええーーーーーーーーー!」

ブァアアアアァン。主砲を放った時の光が艦橋の中を照らす。それと同時に鼓膜が破れるような轟音が後へと続く。初めてまじかで見る三人と結月達はその場に立ち尽くした……


「至近弾。しかし、水柱による高波で二十隻ほど沈没。」


「わかった。次で仕留める。第二射、斉射よ~~~うい・・・・・・てぇええーーーーーーーーー!」

ブァアアアアァン。第二射が敵船目掛けて、砲弾の雨を降らす。今回用いた弾は三式弾。通常、対空戦闘に用いるものだが、木船には効果を発揮する。木船付近に近づくと爆発し、焼夷弾を敵船頭上に降らせる。

これにより、倭寇船はすべて撃沈した。


「殿……」


「これが、この船の威力だ。お主ら、よ~~~く目に焼き付けておけ。」


「殿!この船さえあれば、天下統一なんて夢じゃないですよ!琉球なんて、この船で侵略できますよ!」


「赤崎……お主は来たばっかりだから伝えておく。この艦で琉球を攻撃すれば、容易く侵略できよう。日本国内でもな。ただ、兵士を殺すのは仕方ない。いかにこちらが戦力で圧倒していてもだ。兵は敵を侵略、殺すことが目的だからな。しかしなぁ、民は違う。民は国を造る。一人一人がその役を担っておる。だから、敵国の民であろうと、殺すことは許さん。だから、この艦ではそのようなことはしない。」


「すみません。某が浅はかでした。」


「うむ。分かればよいのだ。ただ、こちらに有事の際や敵の民が安全と分かれば容赦しないがな。」


「そうですね。負けそうなときには手は抜けませんよね。」


「あぁ、だから皆も忘れるなよ。民があってこその国だということを……」

その場にいた全員が『はい!』と返事をした。その時、赤崎と鑑周は、直茂達山田家重臣が誠についていく理由を垣間見た気がした。そして、この人が主君で良かったと本当に思ったのだった。


倭寇との戦闘が終え、数時間後。長門率いる輸送船団は無事に琉球王国の港、那覇港へと辿り着いた。何の連絡もなしに来たので港は騒然としていた。だが、敵意がないことを示すと快く受け入れてくれた。そして、明商人の通訳を通じて、琉球王国国王尚清王と後日の面会を約束された。


「殿、先程の商人と何を話されていたんで?何と言っているかわかりませんでしたよ。」


「赤崎殿。あれは明の言葉なんですよ。領主様の才能には感服いたしました。」


「四菱、褒めても何もでんぞ。はっはっは。」


「殿は他にも話すことができるのですか?」


「通じるかはわからんが、複数の南蛮語も話すこともできるな。だいたい、五ヶ国語くらい。」


「え?そんなにですか……」


「試しに話してみようか?ほら、Buenas tardes.」


「へ?何と言ったんですか?」


「『こんにちは。』と言ったんだよ。」


「ほんとに、すごいですね。」

誠は国際色の強い大学に通っていたのと商社マン時代に海外を飛び回っていたこともあり、英語、中国語、スペイン語、フランス語、ロシア語が堪能なのである。その後も、家臣達にいろいろと話したりして見た。その度に、『おぉーーー。』という歓声が起こった。

もう、季節は夏に近い琉球王国。今宵は皆、暑さの中、涼しい船内で一泊し、後日の面会に備えた。

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