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#34 家臣達の祝賀計画

肥前平定完了の翌日。昨日は新しい家臣も加わり、現在行っている城の拡張などの説明とそれぞれの仕事で終わってしまった。港整備中の直茂は新しい家臣の祝賀会をやらねばなとナガトに許可をもらって、三秋、与左衛門、八助、太平を船室に集めた。


「新しい仲間もできたことだし、家臣と殿だけで祝賀会をやろうと思うんだが……」

直茂のその言葉に「いいな。」と一同が賛同を示す。


「それに今回の戦の勝利もあるしな。参加した兵にはしなくてよいのか?その、お疲れ様みたいな。」


「あぁ、それはいいんだよ。」

実は誠はすでに戦に参加した兵たちには恩賞を与えており、月の給料の三倍のお金と城の拡張工事の一ヶ月の免除を与えていた。もちろん、亡くなった兵の家族の所には後日、謝礼に向かうことになっている。


「そんなことまでするのか。」


「あぁ。我が殿は本当に変わってらっしゃる。普通はそこまではしない。」


「きっと、余程胸を痛めたのでしょう。」


「そうですよ。初めて兵を失った日にはもう駄目でしたよ。『もう、戦はしない。』とまで言っていましたからね。千殿と莉奈殿のおかげでなんとか立ち直れましたけど。」


「あ、それはそうと直茂殿。殿が撃たれそうになった時、そばにいなかったんだですか?」


「はぁ、その節は私も殿も油断していました。皆さんには面目ないです。あの時は莉奈殿に助けられましたよ。」


「あぁ、すみません。別に直茂殿を責めているわけではありません。殿から頼まれ事をしていたのでしょう。」


「そうですよ。おかげで、原城城下の領民は快く接してくれています。」


「ありがとう。まぁ、それはさておき祝賀会の方はどうする?」


「殿に頼めばいいのでは?」


「そうですね、その方がよいかと。」


「まぁ、場所も城ですればいいですし、何より殿の美味しい料理が食べられるのですから。」


「そうですなぁ、確かにあれは美味でした。」


「では、全部殿に頼むということで。八助、交渉よろしく。」


「直茂殿!?某がですかぁ?」

『そうだな。』、『八助が適任。』と八助以外のその場にいる全員が納得した。『そんなぁ~~~』とがっくりする八助だけだった……


「それにしても、直茂殿。よくここまでの港ができましたなぁ。」


「いやぁ、ひと月も空けていたから心配だったんですがね。与左衛門達がよくやってくれましたよ。」


「そうですね。殿に仕えてからというもの、大変なことばかりですが、人生が充実しております。」


「三秋殿の言う通りです。我らの殿はきっと近い将来大物、大物になること間違いありません。」


「それはそうと、私らは殿にもらってばかりで、殿には何もあげていませんよな。」


「確かに、そうですね。何か良い方法があればいいんですが…………あ!」


「何か、良い方法でも思いついたんですか?」


「良い方法というか………ナガト殿に相談してみるのはどうでしょう?」


「ほぅ、それは妙案ですね。さすが、智将直茂殿。」


「はっはっは。そんなに褒めないでください。」

五人は船室を後にすると、ナガトの所へ出向いた。


「ナガト殿ぉお~~。ここにおられましたか。」


「皆さん、評定は終わったんですか?」


「まぁ、はい。結局、殿に任せることになったんですけど……」


「そうですか。で、どうされたんです?」


「はい、殿と古い付き合いのあるナガト殿に相談したいことが……」


「私に相談ですか?」


「はい。実は、かくかくしかじかでして……」

直茂達は事の顛末(てんまつ)を説明した。『誠の誕生日』を知りたいと……


「マスターの誕生日ですか……それで何か送りたいと。」


「そういうことです。」


「そうですねぇ……殿の誕生日は一月二十一日ですよ。もう、今年はすでに過ぎているので祝うなら来年かと……」


「来年ですか……」


「そうですねぇ……では、こういうのはどうでしょう?」


「何かなさるんですか?」


「まぁ、立ち話もなんですし、こちらにどうぞ。」

ナガトは五人を資料室へと案内した。そこで、ある資料を取り出して、五人が座っている目の前に広げる。


「これは何ですか?」


「これは、マスターが計画している船です。」

ナガトが見せた資料、それは旧日本海軍の艦船の一覧及び設計図だった。戦艦から駆逐艦まで、全ての艦船が揃っている。


「大きいものから小さいものまで、こんなに……」


「はい。ですが、今のこの国では技術も資源も足りません。」


「では、何のためにこれを?」


「実はですね。近々、琉球、明との貿易を殿が開始しようとしてることは知っておいでだと思います。」


「はい、存じています。」


「その輸送船団の護衛任務にこの長門と二機の飛行機で行うのですが……」


「護衛船の数が足らないと?」


「いえ、そういうわけではありません。直茂殿、日本近海の事情を知っておいでですか?」


「まぁ、多少父から聞いております。()()の連中ですよね?」


「わこう?」


「そうです。まぁ、海賊みたいなものです。例えば、毛利家配下の村上家などです。」


「で、その倭寇は貿易船などから略奪行為を繰り返しているんですよ。」


「この船ではダメなんですか?」


「そうえば、皆さんには説明していませんでしたね。この艦は艦の種類で言うと資料にもある戦艦にあたります。それに、その中でも大きい超弩級戦艦にあたります。」


「超弩級……」


「とても大きいということです。それで、この艦にある四つの二連装砲塔は遠距離の大きい船を沈めるためのものです。」


「接近してくる小型の船では、これが使えなくなるということですか……」


「はい。もちろん両弦には、小さい砲があるので、大丈夫ですが、あまり輸送任務には向いてないのです。」


「では、どうすれば……」


「殿の誕生日まで約八か月。それまでに完成とは言いません。もしかしたら、二年ぐらい掛かるかもしれません。この中で一番作れる艦をつくって欲しいのです。」


「この中ですか?」


「はい。この中で輸送任務に向いている艦はこの駆逐艦級です。どの艦よりも小型で小回りが利くんですよ。」

ナガトが指した艦は桜型駆逐艦一番艦桜。この艦は二等級駆逐艦に分類されている。当初、日本軍は駆逐艦の性能にはこだわっており、建造期間に二年以上を費やしていた。しかし、大戦での敗戦や資材の面もあり、低コスト・短期間で駆逐艦を作る必要があった。その時、建造された駆逐艦が、二等級駆逐艦群。


「桜という名前もいいですね。」


「確かに……ですが、これだったらいける気がします。」


「いえ、この艦でも建造は相当、難しいです。」 

厳しい現実が、直茂たちに襲う。それも無理な話ではない。この艦は数百年後の未来人が作ったものなのだから。ナガトはそれもわかっていて、あえて言ったのだ。


「いえ、ナガト殿やってみますよ。それくらいしか、殿にできませんから。」

顔をあげる直茂がみんなを励ます。『俺達ならやれる』と。


「わかりました。そこまで言うのなら、やってみましょう。」

直茂達の『やってやるぞぉお~~~』という声が船室の中を響き渡らせた。早速、極秘に進んだ建造企画はナガトを主導に始まった。


「あなた達に出来ることはマスターのお傍にいるだけでいいと思うんですけどね。マスターは本当にいい部下をお持ちですよ。」

皆が出て行った後、船室に残ったナガトはただただ、そう思うのであった。

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