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#32 肥前平定 最終陣

西郷家当主西郷純堯(すみたか)は高城城にて龍造寺に恐れをなして服属。従属していた有馬家からの離反した。その後、連合軍は少しでも味方兵を温存するため、有明海沿いに複数の城を通過せず、逆側の海沿いを通り、そのまま敵の本城日野江城へと向かった。もちろん、途中で動きが知れ渡ってしまい、各城から日野江城に続々と集まった。龍造寺連合20,000VS有馬連合11,000の戦が始まった。最初はお互い向かい合っていた。

「では、隆信殿。私達はこれにて。」


「あぁ。ここまでこれたのもお主のおかげじゃ、ありがとう。原城の方は任せたぞ。」


「いえいえ、こちらも多くのことを学ばせていただきました。また、食事でもしましょう。それでは……」


「殿、いいんですか?」


「ここからは儂らの戦じゃ。誠殿達もここまで頑張ってくれたのだ。それにこの大筒という置き土産もくれたしな。」

誠は大筒の半数を渡すと、今回の戦で加わった新しい家臣も連れて行き、2,000の兵を率いて原城へと向かった。


「では、行くぞ。」

龍造寺は日野江城の三の丸側に、隆信本隊8,000、そしてその前に鍋島清房隊3,000、その両側に円城寺隊2,500、百武隊3,000。その横に西郷隊1,500が布陣している。


一方で、三の丸を守るように横並びで、大村純忠率いる800の大隊が五つ。そして、有馬家家臣安徳純俊1,500、島原純豊500、守山宮内800、残りは二の丸、本丸で守っている。


「ほとんどが籠城を選んだみたいですね。兵の数があまりにも少なすぎる。」


「大村氏を盾に使ったか。大筒は見えないようだな。」


「恐らく、城内に持ち込むつもりでしょう。ここは距離を取りつつ、城から出ている部隊を叩きましょう。大村家の大隊には武勇に優れた武将が七人いますからね。」


「できればこちらの味方にしたいところじゃが、無理だろうな。」


「はい、残念ながら……このまま睨み合っても埒が明きません。ここは一つ、敵を混乱させるために、龍造寺との内通してると思わせるのです。さすれば、敵は互いに疑心暗鬼になります。少々姑息ですが仕方ありません。」


「この際、策は選ばん。何としてでも肥前平定を成し遂げねばならん。」

早速、行動に出た清房は敵兵に何人かを紛れ込ませる。その噂は次第に広がり、敵兵は不安を覚える。


「純忠様。朝長親子が裏で龍造寺と繋がっている噂が……」


「それは真か?」


「兵たちがそのように話しておりました。」


「すぐに調べさせろ。」

その他の部隊にもありもしない噂が流れる。清房の作戦通り、互いに疑心暗鬼に陥る。まさにその時だった。大筒から撃ち込まれる砲弾が大村軍の手前に着弾する。しかし、大筒の恐怖と疑心暗鬼により動けない。それを見かねた有馬方の安富氏、島原氏、守山氏は突撃してくる龍造寺軍に立ち向かいに行く。数で(まさ)る龍造寺軍はこれをことごとく、なぎ倒す。


「皆の者、よく聞けぃ!!どこからか誰かが裏切る等噂が立っておる。しかぁし、この戦は大村家・有馬家を守るための戦でもある!どこぞの馬の骨とも知らぬ敵に易々と負けてよいのか、いや断じて違う。ここに集った者は皆、全員裏切りなどせぬ。儂がこの家の名のもとに誓おう。思う存分、戦えぇえ!」


「おおおおおおおぉぉお!」

大村純忠の一声により士気は回復。そのまま突撃してくる龍造寺軍に鉄砲を撃ち込む。それでも龍造寺軍は勢いを止めない。それどころか、大村軍との距離は縮まっていくばかり。


「純盛、朝長父子、今道、宮原、藤崎、渡辺!最後の突撃じゃ。少しでも多くの敵兵を倒せ!」


「純忠様!最後じゃないですよ。我らの戦はこれからです……」


「そうじゃったな、はっはっは……全軍突撃ぃい~~~~!少しでも多くの敵兵を蹴散らせぇえ!」

大村純忠と七騎の武将は全軍をもって、()()の突撃にかかる。一人、また一人と敵兵を倒すと、こちらも討ち取られていく。結果、龍造寺軍の三分の一を減らしたにすぎず、隆信本隊の一歩手前で、当主と七騎の武将は討ち死にした。

残すところは、日野江城に立て籠もる有馬氏は完全に龍造寺隊に包囲された。


「おい、大友からの援軍はまだ来んのか!」


「大友家は援軍を出さないとのことです……」


「自分たちでどうにかしないといけないのか……大筒で敵を脅せ。」


「しかし、弾が切れてしまいます……」


「無くなったら、剣でも槍でも!撃てればよかろう!それより、籠城の支度じゃ。」


「晴純様、それが食料も半月も持ちません……」


「なにぃ!?直ちに相良氏に兵糧を送ってもらえ!」

日野江城内は多くの兵が入城したことにより、兵糧が急速に減ることとなった。だから、相良氏に救援を頼んだ。しかし、有明海は現在長門が海上封鎖中。頼みの綱であった兵も沈められてしまった。


相良氏が援軍を送れなかったのもこれが一つ。陸路だとどうしても、遠回りになってしまう。そこで海路でいけばよいと思ったが、原城沖までもう少しの所で、見たことのない鉄の船にことごとく、撃沈された。鉄砲も矢も全く歯が立たず、海上に残ったのは木くずだけだった。


龍造寺軍が突撃を開始したのと時を同じくして、誠達は原城を取り囲んでいた。日野江城の支城であって、高台にあり、堅固な守りである城にはわずか1,000足らずの兵しかいなかった。。誠は陸から大筒で、海からは長門の41㎝砲で城にあたらないよう砲撃した。


「首尾はどうだ?」


「はい、少しずつですが敵兵も出てきて攻撃していますが、こちらに被害はありません。龍造寺軍も攻撃を開始したとのことです。」


「わかった。直茂、お主に500の兵を預ける。ここの地域の民に食事を振舞ってやってくれ。」


「食事ですか?」


「あぁ、そうだ。戦のせいで十分に食べていなかっただろうからな。そのお詫びだ。それと、逃げ出した兵が村の人々に手を出させないように注意しろよ。」


「わかりました。では、すぐに手配します。」

直茂は500の兵を率いて、村々を転々とした。主君にとって大切なこと、それは民衆の心を掴むこと。確か、どこかの偉い人が言っていた。


直茂たちが出発した後、原城内でそれを見ていた者がいた。その者は直ちに城主に報告した。もう後がない城主は討って出ることを決意。すべての兵を率いて、誠のほうに突撃し始めた。


「殿~~!こちらに敵軍が向かっています。」


「くそっ、こんな時に。皆の者落ち着け。準備でき次第、各隊撃ち方始めぇ。」


「殿、あぶーーーーない!」

パーーーーーーン。一発の銃声が誠をかばった莉奈の胸に直撃した───


「りなぁー!」


「と、殿。ご、ご無事でしたか、な…によ…りです…」


「どうして、私を庇ったんだぁーーーー!」

その叫びは虚しく、この一帯に誠の声が響く。


「殿、早くしないと敵兵が……」


「くっそおぉお!各大筒隊、全門斉射!ぶっ放せぇええ!」

次々と轟音が鳴り響く。誠は悲しみのあまり、我を忘れ、一兵たりとも残さず、薙ぎ払った。


「殿、もうお止めください。敵はもういません。」


「千。止めるなぁ!こ奴らは許さん。亡骸も塵にしてくれるぅ!」


「殿ぉ~~~~~!駆けつけてみれば、この有様……」


「直茂、私を止めてくれるなよ。」


「いいえ、止めます。これ以上は見ていられません。」

すると、その時──────────────────


「と、殿……?」


「り、莉奈……?」

誠を庇った莉奈が起き上がった。莉奈は誠が予備でつけさせた防弾チョッキでなんとか貫通を免れたのだった。ただ、貫通しなかったとはいえ、あまりの激痛に気絶していたらしい。


「よ、よかったぁ~、無事で何よりだよぉ~。」

莉奈を抱き寄せる誠を家臣達は安堵しつつ、見守った。


結局、突撃した敵兵は誠の怒りを買い、壊滅。後ほど、近くの海辺にて、しっかりと供養した。ものけの殻となった原城はそのまま誠達のものとなった。三週間後、ちょくちょく攻撃していた有馬家は兵糧が尽きて、ついには降伏。降伏の証として、当主の首が隆信軍本陣に届けられた。


誠達は日野江城包囲戦が終わるまで、原城に常駐。事が終わり、熊本城へと帰還した。



ついに肥前平定編終わりました。次回は熊本城帰還後の日常に戻ります。次回もお楽しみに!

また、私の処女作『戦火に輝く若人たち』もよろしくお願いします。

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