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#30 肥前平定 第四陣

三日後、各々が完璧にしっかりと準備万端にし、松浦氏へと進軍を開始。波多氏からは一族の因縁からか、500、志佐氏からは1,000の援軍も加わり、総勢7,000の軍勢となった。なお、負傷兵は直谷城で待機・防衛にあたっている。


「誠、作戦通り、大智庵城・瀬戸越城に向かえばよいのか?」


「はい、恐らくこちらの思惑通りのってくると思います。」


「では、このまま大智庵城に向かう。」


「それにしても、よく援軍を出してくれましたね。」


「あぁ。本当に大助かりだ。それに、我が龍造寺の力も見定めに来ておると見える。油断はできん。」


「はい、そうですね。そのためにこの()()を揃えたんですから。」


「しかし、よく買えたもんだ。高価な物だろう。」


「えぇ、まぁそれなりに。肥前を統一した暁にはこちらの半分を差し上げましょう。」


「おぉ、それはこちらも気合を入れねばな。」


「では、頑張ってくださいね。」


「いや、頑張るのはお主もじゃぞ!?」

こうして、誠達は大智庵城へと向かった。


「円城寺様ぁ~~~~!」


「どうした?」


「それが、我らに援軍を出したいという使者が……」


「おい、誠!」


「はい、来ましたね。」


「すぐに通せ。」


「はっ。」

援軍を出したいという使者は本来最初に攻める予定だった武辺城からだった。その内容は松浦家一族を統一をするために龍造寺家に従うということ。誠達はこの三日間、松浦氏のことを斥候を使って、調べさせた。すると、飯盛城・武辺城は松浦(ちかし)を当主とする相神浦松浦氏、大智庵城・他三つの城を持つ松浦隆信を当主とする平戸松浦氏だ。


「龍造寺家の配下につくのであれば、本領安堵を許してやろう。」


「我が殿からそのことについてすでに返答が……」


「申してみよ。」


「はっ。本領安堵させてもらえるのであれば、これ以上望むことはありません。喜んで、龍造寺家に仕えましょう。」


「あい、わかった。では、直ちに援軍を出してくれ。」


「はっ。ありがとうございます。しばしのお待ちを。」

こうして、進軍のスピードを緩めること一時間程。相神松浦氏当主松浦親自ら率いる1,000の軍勢が加わった。


「誠、奴らは直接調略していないからな。こいつらは特に気をつけろよ。」


「わかりました。攻める際、背後に近付けさせないようにします。」


「あぁ、頼んだぞ。お、そうこうしているうちに着いたな。あれが大智庵城。で、あっちに見えるのが瀬戸越城じゃ。」


「見たところ、周りに兵がいませんね。」


「あぁ。警戒しつつ、包囲。包囲が完了次第、()のものを準備しよう。各援軍諸大名に伝えてくれ。」


「わかりました。直茂、千、莉奈。各援軍に伝えてくれ。」


「「「はっ。」」」

総勢8,000の軍は大智庵城を取り囲んだ。結局、周りに兵はおらず、後詰の兵に警戒するだけだった。そして、誠達はついにあの武器を取り出した。


「それにしても、殿。よく買えましたね。」


「あぁ。用意した甲斐があったよ。なんたって、大筒を十門もだからな。」

誠は斥候が敵を調べている間に、直茂たちとお忍びで平戸港に行き、持ち前の商人スキルで南蛮人から買い入れたのだ。随分と金を使ったが、これで誠達は鉄砲の研究だけでなく、大筒の研究もできる。この時代の日本では近代的な武器でもあるのだ。


「全門、準備よ~~うい!!しっかりと城門を狙えよ。」


「はっ。全門、用意できました。いつでも撃てます。」


「よぉうし!全門、撃ち方ぁ始め!!!」

バァァァーーーーーーン!バァァァーーーーーー!と鉄砲とはまた違う轟音が鳴り響く。撃った弾は大智庵城の城壁を次々に丸裸にしていき、第二射、第三射とどんどん撃ち込む。そして、円城寺隊から全軍突撃の一報が下る。その時、誠の所に斥候隊から連絡が来る。


「殿、瀬戸越を含む三つの城から総勢2,000の兵が後詰としてこちらに進軍中とのことです。」


「よぅし、大筒全門撃ち方やめぃ!砲門を反転次第、瀬戸越の後詰から各個撃破する。直茂、他の二つの城からはどのくらいで着く?」


「半刻と思われます。」


「その時間で決着をつけるぞ。」


「はい!」

瀬戸越城からは約1,000名の兵が押し寄せる。誠は、まずは大筒を撃ち込み、距離が近くなってきたら、鉄砲も撃ち始めた。もうその時点で敵は総崩れ。無闇に突撃してきたのが仇となった。そして、総崩れを起こした敵に誠は追い打ちをかけた。


「これ以上は深追いするな!後詰はまだ来る。次に備えよ。」

逃げ惑う敵兵を追うのはやめ、元の位置へと引き返した。


「お、大智庵城ももうすぐ落ちるな。」

様子を見ると、味方の兵はほとんどが攻め入っており、確実に敵兵を追い詰めていた。


「殿、ようやく追加の後詰が来ました。」


「あぁ、だがもう遅い。」

先程と同じように、大筒・鉄砲を使い、敵を攻撃する。しかし、大智庵城の惨状を見た家臣は突撃するのをやめ、引き返していった。ちょうどその時、大智庵城も落ちた。


「殿、敵が引き返していきますが、追わないので?」


「あぁ。もう敵の本城が落ちたのだ。それよりも味方の手当てが先だ。急いで、向かえ。」


「わかりました。」

怪我をした兵の手当てに向かった。誠達は円城寺と落ち合うと、敵の城主松浦隆信は自分の居城である佐世保城に逃げたことを知った。


「そうですか……逃げましたか。」


「あぁ。これに関しては一歩、相手が上手だったな。だが、また攻め入れば良いこと。」


「そうですね。まずは落とすのが容易い瀬戸越から向かいましょう。」


「あぁ、そうだな。」

瀬戸越城は後詰を送った挙句、大敗したせいで城内を守る兵は少なく、城主もいないため、包囲するとすぐに降伏の使者を出してきた。そして、昼時も近づいたので、一旦兵に食事としばしの休息を与えた。その間に誠達は次の準備に取り掛かる。


「では、誠。頼むぞ。」


「はい、松浦殿もよろしくお願いしますね。」


「吾輩も小さき家の当主じゃ。かの肥後を治めとるお主に学ぶことも多かろう。よろしく頼む。」


「いえいえ。では、行きましょうか。」

誠・松浦隊3,000が先に出陣し、敵の動きを見ながら鼻繰城へと進撃。その後、円城寺隊4,500が後方から佐世保城へと向かった。


「ん?あそこに見えるのは……」

進軍を開始してから20分後、川を越えた平原に敵の軍勢が見える。兵の数はわずかだが、恐らく、少しでも足止めをするつもりだろう。


「我こそは佐世保城城主遠藤但馬守である。ここから先は一歩も通さん。」


「私が行こう。」


「いえ、私が行きます。ここで勝てば、兵を失わずに済むやもしれません。直茂たちも止めるなよ。これが最善なのだ。」


「ぐっ……わかりました。」

ま、大見得をきったものの、武術の心得なんてこれっぽっちもないんだけどね。さて、どうしたものか……


「私は肥後国熊本城城主山田誠である。私がお主の相手をしよう。」


「わしが勝てば、肥後が手に入るのか。では、山田とやら、覚悟!」


「そんな簡単に負けるかよ!」

互いに剣を交合う二人。キーン、キーンと剣の交会う音が平原に鳴り響く。武術を(たしな)んできたものとはやはり、力の差は歴然。誠が少しずつ、追い詰められていく。そして、押され負けしたところで誠が態勢を崩す。


「これまでのようだな。ご覚悟!」


「「「殿!?」」」


「ふん。甘い。」

誠は胸から小銃を取り出し、敵の足目掛けて弾を撃ち込む。


「なにぃ!?ぐっ……」


「これでもう終わりだな。」


「わしを殺せ!」


「殺さないよ。あ、別に情けをかけてるわけじゃないからね。」


「殿ぉ~~~!やりましねぇ~~~!」

こうして、遠藤但馬を降伏させた一同は、全軍をもって、佐世保城・鼻繰城を攻略。その際、大筒の砲撃で佐世保城はボロボロとなり、当主である松浦隆信は家臣とともに自刃。鼻繰城は城主遠藤が捕らえられたことにより、降伏した。

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