#28 肥前平定 第二陣
前回刺激が強いかもしれない表現があったかもしれません。今回の『肥前平定編』では多少の刺激が強いシーン・表現があるやもしれません。読者の皆様にはご迷惑をおかけします。
柳川城に移った誠達は用意された部屋で休むこととなった。直茂にとっては久しぶりの実家。出陣は明後日のことなので、家族団欒の場を設けた。誠はその日一日は莉奈と千の稽古をつけた。そしてその夜、鍋島家と夕飯で卓を囲んだ。
「誠殿、倅は上手くやっておるか?」
「はい、いつも頼りにしていますよ。ただ、ちょっと働かせすぎていますね。」
「いやいや、どんどん働かせてやってください。」
「はぁ…………」
痛い、直茂からの視線が非常に痛い。
「それにしても、父上。今回の戦どうなるのでしょうか?」
「どうなるも何も。軍師として、隆信様如いては龍造寺家に勝利をもたらすまでよ。そのようなことも分からぬとはお主もまだまだ半人前よのう。」
「すいません、父上……」
「こんな頼りのない倅ですが、どうぞよろしくお願いします。」
「いやいや、こちらこそ、よろしくお願いします。」
「それで、明日の作戦は結局どうなるんですか?」
「そうですね。そこは説明しておかねばなりませんね。我々は柳川城を出立後、村中城の兵と合流後、杵島城・男島城・潮見城など比較的村中城に近い城を落とし、有馬氏に警戒させます。まぁ、新方少弐家の配下ですから降伏するでしょう。これを落とした後、円城寺隊と誠殿には松浦氏・波多氏を討伐。龍造寺様と某は千々石氏を倒します。」
「ちなみにその城はいかほどですか?」
「砦も合わせると十程、あります。」
「十もあるんですか!?」
「はい、これが結構厄介なもんですから。なかなかうちも手を出せなかったんですよ。」
「それはそうですよね。それも短期間で決着をつけないといけないとですもんね。」
「そういうことです。まぁ、今宵はよく食べて、お休みになってください。」
「ありがとうございます。では、そうさせていただきますね。」
誠達御一行は食事を終えると、用意されている自室に戻り、各々の武器を整備してから床に向かった。
翌日、山田・鍋島軍総勢5,000の兵を率いて、隆信が待っている村中城へと向かった。村中城に着くと、もうすでに龍造寺家配下の城から多くの兵が集まっていた。
「諸君!今日はよく集まってくれた。同盟のおかげで、肥前平定という大きな一歩を踏み出すことができることを龍造寺家当主として、嬉しく思う。総勢17,000、思う存分、敵を蹴散らしてくれようぞ。」
隆信の掛け声に城に集まった全ての兵から気合のこもった覇気が誠の全身を駆け巡る。昨日のは前哨戦。ここからが本気の、そして本当の戦だ!
「では、各々の武運長久を祈る。出陣せよ。」
総勢17,000の龍造寺・山田連合軍は旧少弐氏の家臣がいる城へと行軍を開始した。最初は、敵の最短防衛ラインである肥前山口城。あまりの軍勢に為すすべなく、敵は降伏した。そこから、分隊して、龍造寺本隊12,000はそのまままっすぐ進み、乙宮城・福母城へと向かった。誠・鍋島軍5,000は男島城へと進軍した。
「清房殿、とりあえず城を囲みましたが……どうします?」
「そうですね。このまま無闇に攻めて、殿からお預かりした大切な兵を失うわけにはいきませんからね。かといって、この状態が続くと敵の後詰がきて、まずいですし。」
「隆信殿に援軍を頼みますか?」
「いえ、隆信様にご迷惑が掛かります。それに我らが攻める城は三つに比べ、殿は六つなんですよ。」
「なるほど。確かに。では私に一つ策が……ごにょごにょ。」
「その手がありましたか。ではそのように致しましょう。全軍潮見城に向かえ!」
「殿、何を言ったんですか。」
「あぁ、実に簡単なことだよ。」
誠が立てた作戦、それは敵の本拠地である潮見城を攻めると見せかけて、男島城を含む三つの城から兵をおびき出して、出てきたところを迎え撃ち、後は各城を包囲すればいいだけ。残った敵兵は少なく、後詰が来る可能性が低いと分かれば、降伏するしかなくなる。
「上手くいけばいいんですが……」
「あぁ、そうだな。」
こうして、潮見城へと進軍を開始した。誠・鍋島軍は上手いこと敵をおびき出すことができた。しかし、出てきたのは、須古城・杵島城からの兵だけだった。男島城はあえて、残したか、それとも……
「だいたい、1,500ってところか。」
「二つの城からしか出てきませんね。」
「まぁ、そう易々とうまくはいきませんよな。」
「すいません、少々見立てが甘かったみたいです。」
「いやいや、誠殿は悪くありませんよ。現に、二つの城は落とせやすくなったんですから。これも経験ですよ。」
これも経験か……確かに、ろくに、作戦を立てて戦なんかしたことなかったからな。さすがに現実は甘くはないよな。今回のことはしっかりと糧にしないとな。
「全軍、突撃ぃーーーーー!」
「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
両軍が全力でぶつかり合った。火縄銃の音、馬の駆ける音、兵士の声。それらが戦場に鳴り響いた。結果は数の多さで誠・鍋島軍の勝利。小さい痛手を負いながらも、須古城・杵島城を取り囲んで、これを落とした。夕刻になり、この数での夜戦は危険と判断し、誠軍は杵島城、鍋島軍は須古城に入城した。隆信殿からは攻略に三日与えられている。とりあえず、今日は杵島城で過ごすことになるのか。
「殿。今日はお休みになってください。後は我々が見張りと敵城の監視を行う故。」
「いや、元とはいえ、敵城だからかな。なかなか寝付けなくて、先に寝てていいよ。見張りはその間、私がやっておくから。休めるときに休んでおきなさい。」
「ですが………」
「いいから。」
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます。」
「よろしい。」
結局、家臣達は起きることなく、誠は一晩中見張り任務にあたった。翌朝、莉奈・千・直茂からは土下座された。俺も途中からうたた寝しかけてたからいいんだけどね。そして、朝食を食べた後すぐに出陣して、男島城を取り囲んだ。昨日の時点で損害は死傷者合わせて500人。
「それにしても、昨日から敵は動く気配ありませんね。昨日から降伏の書状をだしているんですよね?」
「はい。ですが、降伏はしないの一点張りで……」
「そうですか……」
このまま、包囲だけの状態が続けば、こちらの士気にも関わってしまう。もし、この状態になって、敵の少ない後詰や男島城の兵に攻撃されてはたまったもんじゃない。
「清房殿、このままこの状態が続けば、兵の士気が下がってしまうのでは?」
「誠殿言うとり。辛抱するのも大事なんだがな。兵にも人間だからな。」
「では、宴を開いてはどうでしょう。」
「宴ですか?」
「殿、ここで宴なんて馬鹿なんですか。敵城の前ですよ。」
「もちろん兵には臨戦態勢のままで、酒は振舞わない。そこを突かれては元も子もないからな。それに、私が作る料理は絶品らしいからな。臭いで釣られてくるかもしれん。」
「はっはっは、よいな。もしかしたら、敵も出て来るやもしれません。それに、誠殿の料理でも食えば、兵の士気も上がるだろう。ちょうど昼時だし、いい頃だろう。」
「では早速、とびっきりの戦闘食を作りますね。」
それから20分後、誠は全兵分の特製ダレ肉巻きおにぎりを作った。それはもう小腹を空かせた兵にとっては感激の一品。兵たちは我が我がと競い合うように食べた。その後は、兵士みんなで肩を組んで大声で歌った。その甲斐があったのか、その夜、敵城の兵から降伏の書状と敵城主の首が送られてきた。そして、被害を出すことなく開城。三つの城は龍造寺の支配下に入った。もちろん、犠牲者の供養はしっかりとしました。
清房は目標の城を全て落としたことを隆信に報告した。隆信からは明日一日はゆっくりと休ませるよう命が下った。そして、誠は翌日、寝不足を解消するため一日中を睡眠に使った。
気づいたら12,000pvを達成してました。多くの方に読んでいただいて、本当に嬉しいです。これからも、『商人の軍艦来航~さぁ、商いを始めましょう~』をよろしくお願いします。