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#27 肥前平定 第一陣

期限の一週間が明け、ようやく誠にとって、実際に兵を率いて出陣するのは初となる戦がやってきた。  山田軍総勢約2,000名。編成は騎馬隊20騎、鉄砲隊300、足軽隊1600(槍・刀700・弓隊900)、荷駄隊100(刀等で武装済)。誠達は山田家居城の熊本城から龍造寺家居城の村中城まで、三日かけて行った。


「誠殿、よ〜く、来てくれた。それに、直茂も。そちらの女子(おなご)は?」


「私の侍女の莉奈と千です。どうしても戦に連れて行ってくださいと言われたもんですから。」


「よいよい、男だろうが女だろうが、大歓迎じゃ!誠殿、直茂。到着後で悪いのだが早速軍議を開きたい。構わないかな?」


「構いません。それより、兵を休ませてもらえないだろうか?」


「おい、誠殿の兵を休憩所に案内しろ。客人の兵だ。丁重にもてなせよ。」


「はっ。」


「では、こちらへ。」


「はい。」

誠・直茂・莉奈・千の四人は隆信の後に続いた。出陣前の一週間、誠は莉奈と千に体力からつけさせた。そして、熊本城攻防戦でも使われた銃剣の使い方を一通り教えた。兵達には実力は劣るものの、人並みには扱えれるようなにはなった。実力の差は二人に持たせてある銃剣が埋めてくれるだろう。それに、二人の格好は甲冑を胴体に装備しているだけで後は、動きやすい服に、靴。防弾チョッキに、防弾ヘルメットまでさせてある。格好だけで言えば女性自衛官さながらである。


「ご到着されたぞ。早速だが軍議を始める。誠殿、お主が連れて来た兵はいくら程か?」


「約2,000名です。その前に、直茂が勘付いたことがあるので発言させてもよろしいですか?」


「なんじゃ、直茂。申してみよ。」


「はい、では恐れながら申し上げさせていただきます。隆信様は今回、我らに少弐氏・有馬氏の討伐と仰せになられましたが、もう、肥前を平定するつもりではないですか?ここに着いて、兵の数を見てより確信に至ったのですが……」


「はっはっは。さすが、知将清房の(せがれ)よのぉ〜。そうじゃ、儂らはこの機に乗じて肥前全てを治める。だから、集めた兵は全部で15,000。今回攻め込む大名家には、すでに降伏勧告を促しておるが……果たして、上手くいくかどうか。」


「直茂、どういうことだ?」


「あ~殿は知りませんよね。有馬家当主有馬晴純は肥前強化を図るため、千々石氏・松浦氏・大村氏に養子を出しているんですよ。いわば、家族ということです。」


「そんな簡単に降伏しないか。そして、それに少弐氏が加わるのか……」


「はい、そういうことです。だから、いくら大友家が攻めてこないとはいえ、15,000もの兵を集めれたのはすごいと思いますよ。」


「本当は、20,000は集めたかったのだがな。なにせ、城の守りもあるし、こればっかりは仕方のないことよ。だから、少弐氏の居城・勢福寺城を攻めようと思う。誠殿たちは後発隊として、万一に備えて欲しい。」


「わかりました。」


「では、夕刻に出陣する。各自それまでしっかりと休め。」

軍議を終え、誠達四人は自分たちの兵のところへと向かった。


「直茂、この戦どう思う?」


「そうですね。少弐氏との戦はこちらが有利でしょう。ですが、有馬氏とは厳しくなるやもしれません。」


「そうだよな。勢福寺城の少弐氏は籠城か一か八か討って、出るしかないもんな。」


「はい、兵は1,000にも満たないかと。」


「初戦は出番はなさそうだな。」


「そうですね。まぁ、こちらとしてはその方が助かるのですがね。」

今は朝方。とりあえず、夕刻までは時間がある。隆信殿も夜戦で早めに勝負を決めたいのだろう。誠は兵たちに食事をとらせた。そして、時間はあっという間に夕刻。先発隊は円城寺・鍋島軍5,000。続いて龍造寺隆信率いる2,000に、後発隊山田軍1,000。総勢8,000での出陣。残りは村中城で待機中。


「ようやく、着きましたね。暗くなったら、どうしようかと思いましたよ。」


「そうだな。敵は未だ包囲が完成しつつあることに気づいてないしな。」


「それで、殿。私達はどうすればいいので?」


「今いるのは南門だろ。包囲しているとはいえ、兵力を集中しているのは北門の方。総攻撃が開始され次第、脱走兵の確保に当たる。」


「殺さないのですか。」


「そうだった。お前達は知らなかったな。同盟でそう決めたんだよ。戦で死ぬ以外は殺さないってな。」


「そうだったんですね。殿は随分と慈悲深いのですね。」


「まぁ、こういうご時世だと、そう思われるよな。でもさ、天下という一つの椅子を取り合うために、同じ民族が命のやり取りをするなんて、間違ってるんだよ。これからは、他国に目を向けなきゃ。」


「殿……殿、無礼を承知でお聞かせください。殿の夢は何ですか。」


「今戦に参加している俺が言うのも何だけど…………世界平和かな。」


「ふふ、わかりました。では、そんな殿を死なせるわけにはいきませんね。」


「お前達は自分の身を守ることからな。」


その時___________北の方からほら貝の音が鳴り響く。いよいよ総攻撃が始まった。敵は急いで弓と火縄銃を打ち始める。しかし、時はすでに遅し。敵は総崩れとなり、あっという間に、龍造寺軍は北門を制圧。そのまま、城内へと侵入し、敵の本丸を目指す。


北門を制圧されたと知った少弐家当主少弐(しょうに)冬尚(ふゆひさ)は東門、西門を囮として、南門から脱出しようと試みる。が、南門には誠の率いる兵がすでに包囲していた。それを見た冬尚は絶望し、その場に立ち尽くした。東門、西門の囮部隊も囮の意味なくして、全員捕らえられた。一部が無謀にも切りかかってきたらしいが、龍造寺軍の火縄銃で仕留められたそうだ。


結果、少弐冬尚はあっけなく降伏。勢福寺城を明け渡すとともに、冬尚以下500の兵は龍造寺軍の支配下に入り、冬尚とその重臣二名は村中城の牢へと連れていかれた。一方、龍造寺・山田連合軍は被害は少なく、誠の軍は無傷だった。


「罪人をここへ。」


「罪人少弐冬尚・馬場鑑周(あきちか)・千葉胤頼(たねより)は…………誠殿どうすればよいのだ?」


「嫌だ、死にたくない!何でもしますからお許しを。」

まだ、十七の鑑周の痛切な叫びが城内に響くが、円城寺が黙るように押さえ込む。


「あ、そうですね。配下の武将となるか、出家ですかね。解放という手段もありますが、お勧めしません。」


「では儂の下につくか、出家するか、選べ。」


「少弐冬尚、心を入れ替え、龍造寺隆信様にお仕えします。」


「「・・・・・・」」


「黙っているようなら、処分はこちらで下す。馬場鑑周は誠殿に、千葉胤頼は儂の配下となれ。」


「えぇぇぇぇ!!私の配下になるんですか。」


「お主らの家は若いもんばかりだろ。ちょうどいいではないか。どうせ、人もおらぬのであろう。それに、そこの胤頼は儂の配下の千葉胤連とは分家でな。そっちに任せようと思う。」


「うーーん、ですが…………」


「戦が終わるまでは牢に繋いでおく。胤連!お主こ奴らが変な気を起こさないよう、見張っておけ。」


「はっ。」


「では、誠殿この戦中にでも考えておいてくれ。今宵はもう遅いから、柳川城に行って、休んでくれ。」

こうして、罪人の処遇を終え、とりあえずは一件落着。誠の軍は村中城から鍋島清房の居城・柳川城へと移った。



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