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#21 九州三国同盟に向けて

誠は三国同盟に関する書状を三大名に宛てた。そして翌日、御船城にいる三秋達を含む家臣全員を集めた。


「殿、家臣全員集まりました。」


「うむ。皆、今日はよく集まってくれた。時間もないのでな、早速始めさせてもらう。今回の議題は二つ。一つはこの城について。もう一つは一週間後に開かれるか『九州三国同盟』についてだ。その前に、各々の状況を聞こうか。」


「はい、港の整備は殿がまだ十二歳の私を酷使しすぎるせいで、すこぶる順調に進んでおります。」


「お、おぅ………で、では次に三秋。」


「はい、戦後、新しい城主の就任で一揆が懸念されていましたが、問題ありません。殿の法度もとても受け入れられています。それと、各家動きはありません。太平もよくやっています。」


「よし、では次に与左衛門。」


「三秋殿に比べて、進行は遅いですが、こちらも特に問題ありません。」


「分かった。各々頑張っているようで何よりだ。よし、では議題に移るとしよう。まず、この城についてなんだが、名前を変えようと思う。」


「なぜです?」


「隈本城の“隈”っていう字に着目してみろ。“畏”っていう字があるだろ。前々から思っていたが縁起が悪い!」


「確かに……」


「言われてみればそうですね。」


「だろ?それに、この字の意味知ってるか?」


「なるほど、そういうことですね。確かに城の名前としては縁起が悪いですね。」


「どういうことですか?」


「この字には、奥にある隠れた所、すみっこという意味があるんですよ。」


「確かに、武士の城としてはふさわしくないですね。なんか、自分たちが逃げているみたいな感じで嫌ですね。」


「あぁ。だから、この“隈”の字を動物の“熊”という字に変えて、熊本城とする。」


「良いと思います。」


「“熊”ですか。確かにいいですね。それに、なんか強そうです。」


「よし、では本日をもって、熊本城に改名する!そして、そろそろ木材とかの資材が商人たちのおかげで、大量に入ることが決定したから。この城を増築しようと思う。」


「「「はぁぁぁぁぁあ!!!!」」」


「おや、三秋、直茂。お主らだけは驚かないのだな。」


「ただでさえ、人手不足というのになぜ驚かないのですか。三秋殿も、直茂殿も。」


「なぜと問われても、私は殿が私達を集めたのは無茶なことをお願いするためだと思っていたからだ。」


「では、三秋殿はなぜです。」


「それは先の戦で学んだからだ。前回は敵の油断とこちらの士気のおかげで運よく勝てたが、もっと多くの敵がくれば、終わりだろうな。この城は四つの門どれかでも突破されれば、そのまま天守閣へまっしぐらだからだ。」


「ご名答。先の戦いからよく学んでおる。勝利したからと言って、慢心してはならぬ。これから、数多(あまた)の戦をするだろう。その時、勝利もすれば、敗北もするやもしれん。それはいいのだ。大切なのはそこから何を学ぶかだ。よう、覚えときぃ。」


「「「はっ!」」」


「そいうことで、これは城主である私と八助、堀担当の与左衛門と相談しながらするから。」


「私ですか?堀を任されている与左衛門と相談しながらするのはわかりますが…」


「だって、直茂は港の整備で忙しいし、三秋と太平は御船城のことがあるからな。あとは八助、お主しかおらぬだろう。それに、この山田家家臣団の中で、直茂の次に切れ者なのはお主だろうし。他の皆は異論はあるか?」


「「「「ありません!」」」」


「よし、けってーい!」


「えぇぇ~~~~~~!」


「じゃぁ次に、『九州三国同盟』についてだが……正直、お主らはどう思っておる?」


「私は賛成ですね。殿が考えている通り、この三大名を選んだのは良かったと思います。ただ、気になる点は他の家がどう思うかですよね。」


「やはり、そうか…まぁ、そうなんだよな。賛成以外の者はおるか?」


「はい…」


「与左衛門。遠慮はいらん、申してみよ。」


「はい、反対というわけでは、ないんですが…かといって、賛成とも言い難く…」


「というと?」


「はい。我々山田家が、一番危険を伴うということです。私の考えるあたり、この同盟に一番快く思わないのは、大友家。次にこの同盟に呼ばれない九州の他の大名家です。」


「なぜ、そう思う?」


「大友宗麟は後を継いだばかりで、まだ領主としては殿とあまり変わらない。それにもかかわらず、中国の毛利、肥前の龍造寺と数々の戦を渡りきった人物だからですよ。それに、大友家も他の大名家が快く思わないのはわかっていると思います。だから、彼らと同盟を結んで、逆に我らに攻め入ってきたら、九州は再び乱世に戻ってしまいます。」


「その前に手を打った方が良いと?」


「はい、そういうことです。」


「与左衛門、よく言った!いやぁ〜私が考えてもいなかった所をよくついたな。ふむ、なるほど。与左衛門のおかげで、早く手を打つことができるな。」


「どうなさるんですか?」


「あぁ。城の拡張もそうだが、他の家を取り込むのも手かなぁって。」


「「「はぁ!!!!!」」」


「殿、流石に世迷言をおっしゃるのはおやめてください。」


「いや、割と本気で言っているんだけど…」


「我らのような城を二つしか持っていないところになびく者など、単なる馬鹿、いや大馬鹿者です。」


「まぁまぁ、八助。落ち着け。殿の意見も聞いてみようではないか。殿、因みにどこの家を調略するつもりで?」


「私が考えているのは、伊賀と甲賀。そして、美濃。九州は相良氏がついてくれると理想かな。」


「すまん、八助。私達の殿はやはり大馬鹿者だった。」


「だから、言ったでしょう。直茂殿。我らの殿は、生粋の馬鹿です。」


「おい、お主らそれは言い過ぎだろ。私、もう精神的にやばいんだけど…」


「まだ、相良家は良いとしても、甲賀と伊賀ですよ!どうせ、殿のことだから各国に諜報活動が行えるとか単純な理由でしょうに!それに、美濃なんて。美濃がなんて言われてるかわかっているんですか?」


「あぁ。『美濃を制する者は、天下を制す。』だろ?甘く見られても困る。」


「知ってるなら、なぜです?そう易々と手に入るものではないと分かってらっしゃるでしょうに。」


「誰も、土地を手に入れるとは言ってないだろ。俺が今欲しいのは人だ。特に有能なら尚更な。」


「もっと、無理でしょうに!」


「そうだな。今は無理だな。だが、数年で成し遂げることは可能だ。策はある。必ず成し遂げることを約束しよう。信用してくれぬか?」


「しかし…」


「八助。もう良いではないか。殿も頭を下げて頼んでいるのだ。我ら家臣が信じないでどうする?」


「わかりました…けど、殿!成し遂げられなかったら、責任問題ですからね。」


「あぁ、約束しよう。ってことで、この件は置いといて、気を取り直して、八助!今回の同盟の説明をしてくれ。」


「はぁ…わかりました、わかりましたよ。やればいいんでしよ、やれば。」


「お主にしか説明しておらぬからな、頼む。」


「はいはい。今回は同盟調印式が終わるまで、可能な限り穏便にすませたいので、各国からやってくるのは三人のみ。各国の軍が遭遇して、戦にでもなったらたまったもんじゃないですからね。そこで今回は直茂殿が、龍造寺家、殿が島津家。大友家に某と与左衛門がつきます。」


「八助。私と太平はどうすればいい?」


「万一、バレた時のため、御船城から防衛と各国の監視をお頼みしたい。なにせ、調印式は殿の船の上で行う故、城が手薄にぬってしまうんです。」


「あい、わかった。」


「以上です。」


「よし、期限は残り七日(なのか)。各々準備を頼んだぞ。」


「「「「「はっ!!!!!」」」」」

こうして、誠率いる山田家家臣一同は、『九州三国同盟』という大掛かりな仕事へと動き出した。


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