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#20 勝利後の城下

「あれ、殿さまじゃない?いやぁ、想像と違って、若くて凛々しいわ。私もあんな男と結婚したかったわ。」


「あんたじゃ、無理よ。ほら、隣見てみなさい。あんなに美人な奥様がいるんですもの。」


「殿はすっかり人気者ですね。ちょっと妬けちゃいます。」


「あぁ、全く困ったものだよ。これじゃあ、せっかくのデートも楽しめやしない。」


「私は結構楽しいですよ。周りが殿のおかげで、活気づいて、明るくなって。」


隈本城攻防戦の三日後、誠たちの勝利に城下は賑わっていた。ちょっと人通りの少ないところになると、主婦たちの噂が絶えない。かといって、商店が並んでいるところに出ると、たちまち囲まれてしまい身動きが取れなくなる。まぁ、その甲斐あってか、俺が出した法度は受け入れられ始めたからな。


「それにしても、でぇとというものは楽しいですね。好きな人とこうして、散歩したり、買い物もできるんですから。」


「結月が楽しいなら、私はその百倍楽しいな。」


「いいえ、私の方がもっと楽しいですぅ!」


「いいや、私だな。」


「私ですぅ!」


「プッ、ハハハハハ!」「プッ、フフフフフ!」


「お二人共、楽しいのは構いませんが、某がいることをお忘れなきを。」


「「はい……」」


「そんなことより、どこに向かわれるんで?」


「直茂と船の様子を見にいく。」


「せっかく、奥様と出かけられているのに。」


「八助、もっと言ってやりなさい!」


「殿、それでは奥様があまりにもかわいそうですよ。」


「えぇぇぇ~~~」

そんなこんなありながら、三人は海岸のほうへと向かった。


「直茂!どうだ調子は?」


「殿、それに奥様まで。どうされたんですか?今日はお出かけだったはずなんじゃ?」


「いや、港整備の様子を見に来たんだ。いやぁ、それにしてもたまげた。五日でここまでやり遂げるとは。」


「皆が頑張ってくれたおかげです。とりあえず、殿の船“長門”くらいは停泊できるかと。でもまだまだたりませんね。殿がくださった図面を見ましたが、相当大きいですよ。」


「そうだな。長門を中心としたところを軍港に。その隣を貿易船を停泊させる予定。」


「ぐんこう?それに、我々の貿易は陸路だけですが……」


「この長門という船は戦艦といって、戦う(ふね)なんだ。だから、異国の大砲がつんであるだろう。そういう艦が停泊するところを軍港というんだ。それから、これからは陸路だけではなく、海路も開拓していく。明や朝鮮、琉球や南蛮とも貿易をやるんだ。」


「明や南蛮ですか?」


「あぁ。商人の町といわれている堺がなぜ、栄えているかわかるか?それはな、明や南蛮の貿易船が停泊するからだよ。そうすれば、商売の幅がひろがるだろ?」


「確かに……あ!てことは、貿易船の停泊地域から開発した方がいいですね。」


「そうだな。そうしてくれると、助かるな。」


「わかりました。」


「マスター、つきました。直茂さん港の整備ありがとうございます。」


「いえ、殿のご命令ですから。」


「ナガト、先の戦はご苦労だったな。ゼロとマルにも伝えてくれ。」


「はい。『当然のことをしたまでです。』『照れるじゃねぇか、まぁ、次も任せろ!』!だそうです。」


「相変わらず、返答が早いことで助かります…」


「それより、マスター何か用があったんではないですか?」


「もう、何でもお見通しかよ。あぁ、そうだよ。その通りだ。」


「それで何をなさるんで?」


「あぁ、それはな……長門で同盟会議を行おうと思ったんだよ。」


誠がわざわざ港まで足を運んだ理由はナガト達にお礼を言うのもあったが、他にも目的があった。それは、龍造寺、島津、大友の九州三大名を同盟させるため。もともと、龍造寺、島津の許可はもらっており、残りは大友だけだった。ところがつい先日、大友から同盟受諾の書状が来たのだ。ということで、なんなら同盟を結ぼうということなのだ。


「でも、わざわざここでやりますか?別に城内でもいいんじゃないですか?」


「八助さん、マスターはついでにうちの武力も見せつけておこうという算段なのですよ。そうすれば、同盟発案者であるマスターはなめられずに済むどころか、会談で優位に立つことができます。」


「そういうこと。こんな大きくて、ましてや戦う艦なんて、日本全国探してもないからな。」


「まぁ、そうですよね。」


「それはいいとして、その三大名をどうやって迎えに行くんですか?」


「え……どうやってって、こっちから迎えに行くつもりだけど…………ダメ?」


「いや、殿ならそうおっしゃると思いました。もう、いいですよ。勝手にやってください。私は作業に戻りますから。」


「マスター……直茂さんがかわいそうですよ。」


「殿、そうですよ。直茂ちゃんを酷使しすぎです。戦が終わってからもずっと仕事ばかりで、それに殿のわがままで聞いて。直茂ちゃんはまだ十二歳なんですからね!」


「はい、すみません。そ、そうだ。とりあえず、城に戻ろう。うん。よし、八助、書状の準備をしに行くぞぉ。」


「あ、はい!」「こら、待ちなさぁい!殿~~~~~!」


「全く、うちのマスターは……」

ナガトは『まだまだ、子供ですね。』と、城へと駆けていく三人の後姿を見て、そう思った。


「よっしゃあ、いっちば~~ん!」


「殿!早すぎですよぉ。奥様を完全に置いてきぼりですよ。」


「え、本気(マジ)?」


本気(マジ)です。当たり前でしょ!奥様はか弱い女性で動きにくい着物まで着てるんですから!」


「迎えに行ってきます。」


「いえ、結構ですよ。もう着きましたから。お二人共、私を置き去りにするくらい早いですね。」


「「はい、ありがとうございます…………」」

息を切らしながらも、誠達を笑顔で見てくるのはちょっというか()()()恐ろしかった。


「とりあえず、八助。各大名に出す書状はこれでよいか?」


城内に戻った誠と八助は結月を送り届けて、詰所へとやってきた。この詰所は八助が実際に寝泊まりで使っている部屋でもある。本来、誠の詰所でもよかったんだが、結月もいるので、ここで作業することになった。


「よいと思います。とりあえず、島津家は殿が、龍造寺家は直茂殿が、大友家は某と与左衛門ですね。」


「あぁ。招待するのは一家あたり三人。万が一のことがあったらいけないから、護衛としていってもらう。三秋と太平には御船城から周辺地域を警戒してもらう。特に、阿蘇家、相良家、伊東家の三つ。」


「それにしても、無茶苦茶な同盟ですよね、これ。あ、決して殿のことを悪く言ったわけじゃないですよ。だって、この同盟を結ぶ三家以外にもいるわけじゃないですか。その他の家は黙っていないだろうなって。」


「まぁ、そうだろうな。でも、この三家には恐らく勝てない。特に大友家には……だから、この三家以外の大名がどう動くか、見ものでもある。彼らは試されるんだ。四家に領地を取られてでも従うか、はたまた、全勢力をかけて戦を引き起こすか。」


「後者のほうが望ましいですね。」


「そうだな。まぁ、この同盟を受諾する四家以外には救済処置を与えてある。」


「それはなんです?」


「戦で命を落とすのは仕方ないが、捕らえた場合は殺さないこと。という条文を加えてある。他にもこんなとかあるぞ。」


「さすが、殿。抜かりありませんね。」


「あぁ。隙を見せるとこっちがやられそうだからな。」


九州三国の同盟という前代未聞の出来事に、着々と準備を進める誠たちであった。ちなみに、誠はこの同盟を歴史上有名な『甲相駿三国同盟』から丸々パクったのだった。


ついに20話まできました。応援してくださっている読者の皆様本当にありがとうございます。どんどん、頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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