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#17 内政再開 後編

侍女達を御殿の間に待機させ、結月と誠、そして八助は和室へと移動した。その時に机と椅子を四脚運び出した。

「殿、なんで私なのですか?」


「ん?あぁ、直茂もいないしな。それに、私らより年上のお主の意見も参考になるからな。」


「でも、(それがし)は侍女のことなどわかりかねますが…」


「それでも、おらぬよりましだ。侍女に何か聞きたいことあったら何でも質問してよいからな。」


「わかりました。直茂殿の分まで頑張ります!」


「うむ。その意気だ。」


「殿、八助もすいません。私のわがままに付き合わせてしまって。」


「いやいや、結月の気持ちも考えずに勝手にしてしまった私も悪い。」


「そうですよ、奥様。私は大丈夫です。」


「ありがとうございます。」


誠と八助に深々とお礼をした結月。誠は『良い、良い。』と言ったが、八助は肝を冷やしたように『お顔をお上げくださいぃ!』と慌てていたけどね。


「では、早速始めるとしよう。呼んできてくれ。」


三人は用意した椅子に腰を掛けると、最初の人物を呼んだ。この面接はあくまで、仕事内容を決めるものだから、そこまで緊張する必要ないのだが……最初の一人が入ってきた時から明らかに面接官の二人(結月と八助)が緊張しちゃってるよ。ここは、俺が、リードするしかないのか……


「では、そこに掛けて下さい。まず、名を申せ。」


「春と申します。」


「では、春とやら。いくつか質問をさせてもらう。どの仕事をしたいか希望はあるか。」


「私などが希望なんて恐れ多い。与えられた仕事をするまでです。」


「わかった。次に、何か得意なこと、苦手なことはあるか。」


「得意なことは字を書くことと算術が少々、苦手なことは、掃除全般です。」


「二人は何か聞くことはあるか。」


「あ、ひゃい。えっとぉ………」「あはははは…」


「えーっと、ないようだから、以上で終わる。それでは退室してだからよいぞ。」


「失礼しました。」


春は、首をかしげながら出て行った。そして、部屋を出ていくのを確認してから、誠は二人を説教した。


「おいおい二人共、大丈夫か?緊張しすぎだぞ。もうちょっと楽にしないと、この後ももたないぞ。」


「すいません、殿。面接というものは初めてなもので…」


「そうだったな。まぁとにかくなにか質問してみよ。結月もな。」


「そうですよね。自分の侍女を選ぶためですもんね。」


「では、さっきの春とやらどう思った?」


「私は算術と物書きが得意と言っていたので商人につけるのがよいかと…」


「結月は?」


「そうですね。苦手なことは掃除とおっしゃっていたので、侍女としては難しいかと。」


「そうか、わかった。では、次。」


二人が商人と結論を出す中で、誠には()()()の可能性が出ていた。それは『教師』

という職業。いずれ、学問所を開こうと思っていたから、識字率が低いこの時代において字を書けること、ましてや算術ができる人物は貴重なのだ。


「名を申せ。」


「絹と申します。」


「仕事の希望はあるか?」


「私は年もそこそこある故、奥様の母君の侍女を希望します。」


「ほぉ。」


「私からもよいですか。何故、私の母の侍女を望まれるのですか。」


「先ほども申した通り、私はもう年故、あまりきつい仕事はできぬのです。奥様の母君は、旅館を営んでいると聞きました。だから、大抵のことは一人でできるかと。それに、若者の体力にもうついていくこともできませんので。」


「わかりました。しっかり、母の侍女を務めてくださいね。」


『はい。』と一礼すると、絹という侍女は出て行った。それから、面接は何事もなく進み、回数を重ねる度に、結月と八助も慣れていき、どんどん質問するようになった。そして、二十人の侍女の中には、仕事を希望する者もいれば、いない者もいるように、それぞれに合った仕事に仕分けることができた。


「やっと、終わりましたね。」


「そうだな。仕分けも終わったし、後は各々に伝えに行くだけだな。二人共お疲れ様だったな。一回目以外は良かったぞ。」


「ありがとうございます、殿。お忙しい殿の手を煩わせてしまって申し訳ありません。」


「いやいや、別に良いのだ。結月も自分と話が合いそうな侍女がよかったんだろ?その方が場も和むからな。」


「殿……」


「殿は奥様にお優しですね。」


「そうか?」


「はい!それはもう存分に。」


「お主も私より年上なのだからそろそろ結婚でもしたらどうだ?」


「生憎、某にはそのようなお相手居りませぬ。」


「うん、なんかすまん。きっと良い人が見つかるさ、ほら八助あれだからさ!な!」


「そうですよ、八助さんはね、そのあれですし。」


「お二人共、馬鹿にしているんですか?」


「「・・・・・・すみません。」」


「それより、報告に行きますよ。殿から伝えないと!呼び出したのは殿なんですから。」


そして、八助に即されるまま、御殿の間に行き、侍女達に各々の仕事内容を伝えた。

結月の侍女として、千里(ちさと)、お(きく)幸恵(さちえ)。誠の女小姓として、莉奈(りな)(せん)。結月の母皐月には、(きぬ)、お(はつ)。商人には、明菜(あきな)(うめ)(はな)星奈(ほしな)(あき)杏実(あみ)。その他は教師として、(はる)美紀(みき)、炊事洗濯などをお(いけ)菜緒(なお)(あさ)、お貴恵(きえ)真彩(まや)


「では、各々しっかりと仕事に励んでくれ。」


「はい!!!!」

そして、侍女達はそれぞれの持ち場へと動き出した。


「殿。では、私も失礼しますね。本日はわざわざありがとうございました。」


「えっとぉ、この度殿、殿の世話係となりました。莉奈です。」「千です。」


「あぁ。よろしく頼むな、基本は着物の着付けだけだから。他の者の手伝いを。」


「「わかりました。」」


「では、今日はゆっくりと休め。明日からの働き期待しているぞ。」


「しかし……」


「あぁ、分かった。そしたら、炊事・洗濯のほうを手伝ってやれ。」


「「はい。」」


二人の小姓を返した後、八助に太平を城門に連れてこいと命じて、八助・太平をつれて三人で、三秋・直茂のところへ進行状況を視察しに城外へと出た。まずは堀の確認。その次に直茂に資材に関しての報告か。


「三秋ーー!」


「殿ぉ。どうされたんで?」


「いやぁ、私の仕事も大分片付いたもんだから、ちょっと視察に。それで、進行はどうだ?」


「どうもこうも、見ての通りですよ。やっと、城門側の堀ができたところです。ひと月はかかりそうです。」


「いや、これだけの堀をひと月しかかからないなら十分だ。そのまま続けてくれ。」


「わかりました。」


「殿ぉーーーーーー!」


「どうした?与左衛門。」


「龍造寺家から書状が……」


「中身はなんて?」


「それが……実は……」


「まずは落ち着け!」


「はい。すぅ~~~はぁ~~~。実は大友宗麟率いる約5,000の兵がこちらへ向けて進軍中とのことです。恐らく、謀反人菊池義武を討つためかと。」


とうとう九州一の大名が動き出したな。毛利との交戦中の今、もっと先かと思っていたが、予想より早かったな。こちらの兵力はおよそ3,000。まともに戦っても勝てなくはないが、あくまで、平和的な解決を目指したい。相手が攻めてくる前にこちらから先手を打つ。


「三秋、聞いていたな。直ちに作業をやめ、民に避難要請。完了次第城内にて、籠城の準備を。八助お主も手伝え。太平は今すぐ直茂にこのこと私のところに来いと伝えろ。そして、私の船“長門”から武器を城内へ運び出して、兵にそれを渡せ。」


「「「はっ!!!」」」


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