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#14 甲板のナガトと結月

洗い物を終えた四人は部屋へと戻った。ナガトは秘書室へ、三人は艦長室へと。誠は二人に、ベットに寝てもらい、自分は畳に布団を敷いた。


「殿?お休みになられないんですか?」


「えぇ。ちょっと眠くないもんですから。法でも考えようかと思って。」


「私も起きていましょうか?」


「いえいえ休んで大丈夫ですよ。今日は疲れたでしょうから。」


「じゃあ、先にお休みになりますね。」


「はい。」


さてと、二人共眠りについたから、静かに進めますか。何日ぶりかな、夜遅くまで起きてるのは。ここんところ、ずっと早かったから健康優良児になってんだよな。じゃあ、ちゃっちゃと始めますか。


「基本は日本国憲法を参考にしたいとこだけど、無理なところとかもあるからな。第9条とか。」


山田家法度


一、和を以って貴しとなす。


ニ、殺人、略奪、姦淫、あらゆる犯罪を禁ず。犯したものは、これを罰す。


三、全ての民は皆、平等である。身分、性別、信条、門地によって差別されない


四、一揆及び反乱を禁ず。不満あれば、申し立てよ。


五、敵攻めたる時、皆一丸となるべし。


六、我が治める地域、市を開くの自由とす。


七、全ての民に納税の義務を課す。


「とりあえず、思いついた限りはこのくらいか…聖徳太子とか色々参考にして見たけど、案外法律作るのって難しいんだな。それにしても、たった7条か、少ないな。この時代にマッチしているものなんてそう簡単にはできないしなぁ。後は直茂達に相談するかな。いや、もうちょっと考えてみる…か…」


久しぶりの夜更かしのせいか、いつの間にか数時間もたたずに眠りについてしまった。恐らく、パーティーの疲れもあるのだろう。誠は兵士一人一人わずっと、気にかけていたから。家族のいる者、恋人のいる者、両親がいる者、独りの者も。全員、誠が命を預かっている人物たち。誠の判断一つでその人の運命を変えてしまう。そんな一人一人の思いをこれからも背負っていかないといけない。


「殿、殿。起きてください。こんなところで寝てると風邪を引きますよ。」


喉が渇いて目が覚めた結月は、机で寝ていた誠を起こすが、一向に起きない。仕方ないので、布団を誠にかけて、水を飲みに部屋を出た。


「あれ?どっちにいけばいいんだろう。」


「奥様。」


「うわぁぁぁぁ!」


「静かに、皆さんが目を覚ましてしまいます。」


「ナガトさんでしたか、もぉ、驚かさないでくださいよ。」


「すいません、そのつもりはなかったんですが。喉が渇いていらっしゃるんですよね?案内します。」


「ありがとうございます。それより、なんで、わかったんですか?」


「私はマスターの状態を管理すると同時にこの船の乗員の状態もわかるんです。それに、誰かが移動しているのがわかったので。」


「もしかして、寝てなかったんですか?」


「はい。そもそも私には『寝る』というものがないんです。寝なくても大丈夫なんですよ。食事と休むことさえできれば。風にあたりますか?」


「えぇ…」


結月にはわからなかった。誠に仕えるこのナガトと他のAIのことが。


「奥様は私共のことがよくわからないと思います。この船のこととか。」


「確かに、殿は話してくれませんね。南蛮から来たとは言っていましたが…教えてくださらない?」


「すいません、奥様。それはお答えできません。いずれ、いや、必ずマスターの口からおっしゃられると思います。それまでご勘弁を。」


「そうですね。私こそ無理に聞いてしまいましたね、ごめんなさい。」


「いいえ、奥様は悪くないんです。私こそ申し訳ありません…」


「「・・・・・・」」


「しらけてしまいましたね。では、私が殿に魅かれた話でもしましょうか。」


「殿と出会ったのは、私の旅館で殿が島津家に捕らわれようとされていた時でした。私は殿に裏道から逃げるように言ったんですが、殿は私の名前を聞いて可愛いと言ってくれただけで、普通に連れて行かれようとしました。その時、私達も嘘をついたので連れて行かれようとされたんですが、殿が助けてくれたんです。この人達は関係ないって。そこから兵士と決闘して勝ったんです。結局連れて行かれましたがね。」


「へぇ〜そんなことが。」


「えぇ。それがカッコ良かったっというか、戻って来た時も私たちに優しくしてくれて。本当に惚れたんだと思います。だから、殿から告白された時は嬉しかった。殿が私のこと好きだと、身分なんて関係ないって言ってくれて。」


「アツアツですね。」


「もぅ!からかわないでくださいよ〜」


「お礼といってはなんですが、私も何か話をしましょう。」


「昔々、あるところにマス…一人の少年がいました。少年は世界中を旅して、そこで、商売で現地の人々の役に立つことをしては日本に戻って来て毎日毎日遅くまで仕事をしていました。働くことが楽しかったのです。生きがいだったのです。現地の人々から彼は感謝されました。でも、彼は独りでした。もちろん、彼にはお父さんやお母さんはいました信頼してくれている部下や仲のいい友も。彼は一人暮らしだったので、家に帰ってくると、寂しかったんです。」


「それは殿のことですか?」


ナガトは結月を見つめるだけでうんとは頷かない。けれど、結月もそれが殿、自分の夫 誠であることがわかった。ナガトはそのまま話を続けた。


「その彼に、最近奥さんができました。彼は言いました。『こいつの笑顔を見ていたい、見てると元気をもらう』と。彼が孤独と知っていた五人の部下は本当に嬉しかった。その奥さんとも話した時、いい人だとも思った。だから、これからもその彼を支えて欲しいと強く願ったのでした。お・し・ま・い」


「とても良い話ですね。私も今は分からないことだらけですし、殿には毎度のこと驚かされてばかりですからね。そんな私でも支えれるように頑張らないと。」


「これからもマスターをよろしくお願いします。」


「えぇ。ナガトさん、話してくれてありがとね。そろそろ部屋に戻るわ。」


「帰りは大丈夫ですか?」


「月の光が輝いているから大丈夫よ。」


「わかりました。では、おやすみなさい。」


「ナガトもおやすみなさい。」


一礼すると、お互い部屋へと戻って行った。月の光が海に浮かぶ長門を照らしていた。その様はまるでかの有名なお伽話の竜宮城が水面から顔を出したようだった。そして、部屋に戻った結月は眠りについた。



「殿!殿!起きてください!朝ですよ。」


「ん、あ〜〜〜、しまった、いつの間にか、寝てしまってた。」


「おはようございます、殿。ナガトさんが朝食の準備ができたから呼んできてくれと言われました。」


「おはよう、結月。わかった、今行くよ。」


「机のところ片付けてきてくださいね。」


「はい、わかりました。」


寝落ちしていた誠であったが、どこか、いつもと違う、それでいて相変わらず可愛い笑顔に一瞬で目が覚め、机を片付けた後、朝食を食べるため食堂へと向かった。





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