#13 船上パーティー 開催編
誠達は次々と料理を完成させ、甲板上に並べていった。唐揚げに豚カツ、ハンバーグやフライ、サラダやカレー、シチューなど、この国、この時代では誠とナガト以外知らない食べ物ばかりのものが並んでいた。結月さんたち、料理を手伝ったメンバーは全て立食済み。あまりの美味しさに大絶賛した。
「誠さん、ナガトさんがほとんどの料理が並びましただそうです。」
「伝えてくれてあらがとうございます。」
「他にも何か作るんですか?」
「食後のデザートを。」
「でぇざぁと?」
「はい、菓子みたいなものです。」
「へぇ〜。誠さんの言ってる言葉が、時々わからない時があります。」
「あぁ、そうですよね。すいません。つい、南蛮の言葉を使いたくなるんですよ。」
「あの遠い異国から来た人達ですね。私も一度お見かけしたことはあるのですが、あの方達が話している言葉は全くわかりませんでしたよ。」
「まぁ、日本語とは違う言語ですからね。」
「それで、何を作っているんです?」
「アイスクリームです。できたにはできたんですが…」
「味ですか?」
「そうですね。あ、食べてみます?色々な味がありますよ。」
「えぇ、是非。」
「左からバニラ味、チョコ味、抹茶味、ソーダ味、ミカン味、レモン味、イチゴ味の全部で7種類です。」
「ちょっとよくわからない単語がありましたが、食べてみますね。」
結月さんは左から一口ずつ食べていった。一口食べるごとに、顔の表情が変わっていく。
な
「誠さん。これ、どれも美味しいじゃないですか。いろんな味があって、好みが分かれると思いますが食後にはぴったりですよ。ひんやりしていて、甘いものもあれば、酸っぱくさっぱりしたもの、またまた、苦味があるものまで。」
「それは良かったです。でも、これ溶けてしまうんですよ。」
「じゃあ、出すのはちょっと遅らせますか。」
「そうですね。」
「結月様。少々こちらへ。」
「私ですか?」
ナガトは結月さんを呼ぶと、厨房から出ていった。直茂と三秋には少し早く来るよう伝えていたので、後で合流した。もちろん、二人ともびっくりしていましたよ。それから開幕まで、準備を施した。準備の間、結月さんとナガトは見当たらなかった。それからすぐに、続々と集まってきたので、船に上がってもらった。直茂達には戸籍登録も兼ねて、参加者の名簿を作ってもらった。
「殿、そろそろ準備を。」
「え、でもまだ、結月さんが…」
「心配には及びません、マスター。少しおめかしをしていました。」
「え…あ!」
振り返ると、そこには純白のウエディングドレスを着た結月さんが…
「ど、どうですか?」
「とても似合っていますよ。可愛いです。」
「あ、ありがとうございます。」
照れて顔を隠したの結月さんの手を取り、今日来てくれた参加者全員が見えるよう長門砲塔に立った。あぁ、この晴れ舞台を姉ちゃん、父さんや母さんにもみせたかったなぁ。自分の妻を紹介したかったなぁ。
「殿、何か申さないと。」
「あぁ、そうだな。」
「殿のおな〜〜り〜〜」
「隈本城城主 山田 誠である。此度はこの儀に参じたお礼を言いたい。ありがとう。えぇーっと、私はまだ、16と若いがこの前薩摩に訪れた時、一目惚れをした。それが横に立つ私の妻である。私は生涯、妻を守りたい、一緒に生きたいと思った。これから、私には他にも妻ができるかもしれんが、彼女が一番であることには変わりはない。正直、おめかしをして、更に綺麗になっていることに驚きを隠せていない。」
その言葉に集まった者から笑いが起こる。
「明日からはまた、それぞれの仕事に励んでもらう。これからは長い長い乱世が続くだろう。でも、安心してほしい。私、山田誠はこの命に代えてでも、全国を統一し、民が安心して暮らせる平和な世を作ってみせようではないか。若き城主で心許ないだろうが、共に励もうぞ!今夜は無礼講だ。是非、楽しんでいってくれ。」
「それから、結月さん。いや、結月…綺麗だよ、愛してる。」
そして、キスをすると、周りから男どものむさ苦しい声が海の上で鳴り響いた。
「私も…愛してます。チュッ」
二度目のキス。今度は結月から。周りはむさ苦しい声ではなく、女性の黄色く甘い声。
12歳と14歳には刺激が強かったのか、直茂と三秋は「それでは気を取り直して〜」とその場を収めた。
無事に挨拶を終え、一休みと思ったが、そうもいかない。今日誠達が出した料理はどれも変わったものばかりで、みんな手を出そうにも手を出せなかった。だから、誰か呼んではみんなの前で食べさせてみて、安全なことを確かめさせた。その甲斐あって、参加者全員大絶賛。誠をからかった直茂達でさえも絶賛していた。最初はほんとに殿が作ったんですかと疑われたけど…
妻子を持つ家庭では後で作り方を教えてくださいと言われた。まぁ、作った側としては気に入ってくれてほんとに嬉しいんだけどね。
長門甲板で始まったパーティーは隈本の地を出航して日本を一周する予定だ。パーティーの間、誠は結さんと料理を味わいながら、甲板を回った。
参加者からは祝いの言葉の嵐だった。そして、その一人、一人に挨拶をした。領主たる者配下の者との信頼関係も大事だ。
「マスター、あの老人が目を覚ましました。」
「そうか。では、そちらに向かうとしよう。少し料理を持って行ってやれ。」
「わかりました、マスター。」
〜長門艦内・救護室〜
「お目覚めですか?」
「あなたは?」
「山田誠と申します。先日、隈本の城主になったところです。」
「これは、とんだ失礼を。お許しください。」
「お顔をお上げください。あなたは今日道端で倒れていたんですよ。とりあえず、無事で良かったです。」
「先ほどの失礼に加え、助けてまでいただけるとは。それに、こんなお召し物まで。感謝しかありません。」
「おそらく、疲れていたんでしょう。今はゆっくり休んでください。後で家までお送りしますので。」
「わかりました。」
老人が横になるのを確認すると、三人は部屋を出た。
「ナガト、どう思う。」
「前の城主による重税が原因で、過労を引き起こしたかと…」
「ひどい…」
「やっぱり、そうだよな。税は取ることは国にとって財源となるから重要なんだがな…とりあえず、戻るか、せっかくの楽しい雰囲気を壊すのもアレだしな。」
「そうですね…あ、気分転換にあいすくりぃむ?でも食べましょう。」
「じゃあ、厨房に取りに行きましょうか。」
甲板に戻ると、もうほとんどの料理は空になっていたので、持って来たアイスを準備した。これまた、大絶賛。特に子供と女性からは大人気。
「作った甲斐がありましたね。」
「あぁ、子供達とっても嬉しそうだ。」
そうして、何も問題が起こることなく、長門は日本を一周した。そして、隈本に帰港した長門は乗員を全て降ろして、パーティーは幕を閉じた。護衛三人衆には、例の老人を農村まで送り届けさせた。
「殿はこれからどうするんで?」
「あぁ、俺は船内に残るよ。片付けもあるし。お前らは帰っていいぞ。」
「しかし、殿が働いているのに、私達が休んでは…」
「三秋、休むのも仕事のうちだ。今日はたくさん食ったろ。あとは休め。」
「はい、わかりました。」
「おう!それでいい。」
「殿…今日の料理、美味しかったです。ご馳走様でした。それではお先に失礼します。」
直茂と三秋、二人が下船した後、残ったのは誠と結月とその母。
「二人とも今日はお疲れ様でした。部屋は艦長室を使ってください。後はナガトとやっておくので。」
「洗い物あるでしょう、手伝います。」
「いや、それは…」
「誠さん、四人でやれば早く終わるでしょう。」
「じゃあ、お願いします。」
四人は厨房へと戻り、洗い物をすませた。5,000人分を洗うなんて四人じゃ終わりそうにないから、自動洗浄も使ったけどね。