表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

採用!

 異界の旅には危険がつきものだ。徒歩で隣町へ繰り出すだけでも道中、2、3度は山賊に襲われ、時には強力な怪物に出くわすこともある。


 この世界には冒険家と呼ばれる者たちが各地に点在するダンジョンや異界の更に深部に位置する危険な領域を探索し、そこからの戦利品などで交易が行われ重要な経済活動となっている。


 俺も最初は冒険家志望だった。しかしながら現実はそう甘いものではなく、冒険家となる者達は皆一様に特殊な技能や能力があった。


 簡単な話、俺にはそれらがなかった。


ダンジョンを探索しようにも恐らくすぐに野垂れ死んでしまうし、現在でも隣町へ移動するだけでも冒険家一行に付き添って行かないと到着する頃には身ぐるみどころか生きているかさえわからない。


 ただこの世界を冒険して回りたいという幼い頃からの夢だけは捨てきれず、せめて冒険家や勇者達の手助けをすることができればと思った結果、自分の働く場所は決まっていた。


 その場所の名前は「国立ファストトラベル協会」。この世界の冒険家すべてが利用する。この世界唯一の安全な交通機関だ。


 今日はそこで働くための重要な選考試験の日だったが、筆記試験などはなく面接も約10分で終了し、その場で採用が告げられた。


あまりにも拍子抜けの結果に何度も夢ではないかと頬をつねるが夢から覚める気配はない。


「本当にこんなのでいいのか……」思わず独り言がこぼれる。


「こんなのでいいのよ」後ろからファストトラベル協会の制服を着た長身の女性が声をかけてきた。


「あ、先程の面接ではどうも……でもほとんど何もしてませんし……」


「うちの試験で最も重要なことがあるのだけれど……」


「と言いますと?」


「冒険者や勇者たちが持つような強力な能力を持たないこと。それだけよ」女性の言うことに理解が追いつかず頭のなかに疑問符がいくつも浮かび上がった。


「まぁ、とりあえず採用おめでとう。私はイリーナ・モロトフ。明日からあなたの教育係よ」


そう告げるとイリーナは静かに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ