茶色いアパート
ホラー映画などであるが、僕はあの手の物が酷く苦手だ
なぜなら、長いからだ
あれほどながいものを、みる人間の忍耐力と変性的主観は、犯罪的だと言わずにはいられない
「おい、何をぶつぶつ言っているんだ」
狭い車内で、酷く優雅に、助手席で、フロントに、足を組んで乗っけている、僕の上司が、ペッパーシュガーを、くわえながら、いっちょ前に
僕に聞いてきた
「いえ」
彼女の体型は、酷く小さく、一部の署内のほんの一部の新米か、もしくは、古参が、その恐ろしいまでの、小ささに、敬愛の念を込めて
「プリプチス」と呼ぶ
当初僕は其れが一体何なのか、wikiやら、英語辞書やらを調べて探したが
結局分からず、仕舞に、ミスターKと、呼ばれる、これも謎の古参に、聞いたところ
「そんなのは当たり前だろう、良く聞け新米
まず、プリプチスとは、プリティー・プチトマト・プチティチスの略だ」
結局良く分からず、どうやら、最後の方は、もはや、ゴロで、意味は特にないそうだ
「プチリス」
結局、ここ最近では、さらに、其れが、ちじみ、プが取れチとリが、入れ替わったりしている、何でも、小さいリスみたいだからと
プチリスだそうだ
果たして、このあだ名は、どこに向かおうとしているのか
まだ進化は止まらないのか
どちらにしても、僕はあだ名で言ったことなど無い
殺されたくはない
「パーディー部長」
パーディー桐、其れが彼女の名前であり
二人の両親の大きさとは裏腹に
彼女は、小さい
「誰が、パーティー部長だ」
相変わらず、つっこまれるが
僕は付いたことを、彼女に知らせた
先ほど、サービスエリアのサルナシシェイクを、まるで、リスが、乾電池を持っているように、頬を、膨らましながら、飲んでいたが
今は、星形のサングラスを、目にかける
相変わらず、真っ赤なレンズであり、よく見えるなと
僕は感心する
「よし行くぞ」
「あの部長」
僕は叫ぶ
「何だ」
「それ、パーティー用です」
僕は、すり替えて置いた、めがねを差し出す
「ぬ」
部長はそう言うと、焦る出もなく、めがねをひったくると
僕の腹筋に
鉄球のような拳を、めり込ませた
「それで」
真っ青な、ハートめがねをかけた部長が、電話のあった、家の玄関前で
もじもじとしている
どうやら、僕に、インター方でも押して、家の人間を、表に出させろと言っているんだろう
全く、恥ずかしがり屋だ
ぼくは、当然のごとく
「じゃあ、僕は一番上の階から・・」
僕は、股下の彼女を見下げた
スーツの裾を、彼女がつかんでいる
まるで、だだっ子とも、迷子猫とも、とれる、うるうるとこうか音を出す目をしていた
「分かりましたよ、部長は、一番上からお願いします」
「むぅーーー」
やばい、地べたで這いずり回り始めた
証拠隠滅行為にも見える
「ばたばたばたばたばた」
口に出して
仰向けで
そう言って手足を端付かせる姿は
スーパーで、そこまで欲しくはないけど
なぜか欲しくなってしまった
安いソフビ付きお菓子を前に、離れる親に、叫ぶ子供の意地と自虐が入り交じる
逆さ亀のような、恐ろしい様態だった
・・いやこれは幼態だ、全く幼稚だ
「部長、分かりました」
「フン、分かればいいのだ」
どこのパパだと、思わずにはいられない
いや、王様か
「あのーすいません市瀬さぁあーーん」
ここで、幼稚な部長のために、このアパートの見取り図を
一階二階で、計六部屋
一階
一番室は、人梨ヒトナシ
二番室は、荷の前ニノマエ
三号室は、空室
二階
四号室は、猪里シシザト
五号室は、五味ゴミ
六号室は、躯ムクロ
全く持って、ふざけた名前だと
ここで、人に言えない
踵 飛かかと とびというなまえのぼくは、思った
「早く、早く」
言ってるでしょ
と、僕は、部長を落ち着かせようとしたとき
「あぁらぁーー、早くして頂戴、玄関先に、死体が転がっているでしょ」
僕は、ここにくる前に、通報の内容を知ってはいたが、玄関先に何もないことを見て、みま違いだと思ったのであるが
「ふむ、死体ですか、それはどこの玄関です」
と、真顔で言う部長
「部長、彼女は、大家さんのヒトナシさんです」
「そうか、では、ヒトナシさん、その遺体は」
「何ですかあなたは、こんな小さな子供をつれて来るなんて」
僕は、毎度のことなので、たいしてきにもせず
部長の暴れるのを制御すると
「はい、こう見えましても、彼女は、中々優秀な警部でして、こう見えましても、歴としたさんじゅう・・」
部長に足を蹴られた
「あの、それで、死体は」
明らかに不審な目を向けたが
諦めたように、そして、仕切り直すように、一つため息を付くと
「どこって、玄関に」
そう言って、顔を出した彼女は
血の跡もない
汚い玄関を、二人とともに、見るのであった
「次は、誰」
相変わらず、偉そうに、部長が、言う
「ニノマエさんですね」
「ほうほう」
果たしてこのチビは聞いているのだろうか
「こんにちは」
僕は、インターホンを押すと、玄関越しに、叫ぶ
「・・・何です」
だぼだぼの全身をした、男が、暗闇の中から僅かにこちらをのぞいていた
「ニノマエさんですか」
「骸骨か」
要らんことを言う部長を置いて
僕は、かわず続ける
「それで、あなたも玄関で死体を見たんですね」
しかし、僕を不審そうに見ると
「違いますよ、僕の部屋に倒れていたんですよ」
「へやぁ」
明らかに疑わしそうに、部長が言う
まあ、確かに怪しいが、オーバーリアクション過ぎやしませんか
「ほうほう」
勝手に頷くと、勝手にはいっていこうとする彼女を、僕が止めると同時に
扉が閉まり怒声が響く
「かってにはいるぅなああ」
「ニートだな」
部長が、酷くクールにそう言いきった
結局、部屋には、死体など無く
あるのは、博物館のような、ガラスケースに入った
特撮フィギアから、女性型フィギア
部長が、涎を流しながら
目を爛々と輝かせ
ガラスケースに額を
油紙のように、必死でひっつけていたので
案の定怒られたくらいであった
「次は、三号室か」
何か、生き生きとしている
余程、人形が、うれしかったのか
「うまそうな名前だな」
四号室 シシザトの名前の前に
またよだれを垂らした部長の姿がある
全く、威厳も尊敬も尊厳さえない
「押しますよ」
僕がインターホンを押しても
しばらく、涎が滴りそうな勢いだ
しかし、いつまで経っても扉が開くどころか
部屋に人の気配がない
僕は、署に電話をして、シシザトの電話番号を聞き出すと
電話する
「はい、こちらいつも元気なシシザトです」
何とも明るい声が聞こえる
「はい、こちら、バツマル署の踵と、言うものなのですが
被害の連絡を受けまして」
「あぁーーーその事ですか」
果たしてこの人はどこから電話しているのだろうか
「すいません、今現在、仕事場にいるんですわ」
「そうですか、それで、遺体とは」
「あーはいはい、其れがなんですね、駐車場に、大家さんが、死んでいたんですわ」
「大家さんがですが」
「ええ、みま違いはありません、血塗れでした」
「・・・・そうですか」
もしかしたら、止めてある駐車場を、しっかりと見損ねたのかもしれない
僕たちは、急いで、駐車場を見たが
警部の車にガキが落書きしている以外の特出した出来事は、なく
またしても、死体を確認することは不可能になった
「五味さんでおられますか」
僕はそう言って、綺麗に片づけられた玄関の前でインターホン越しに叫ぶ中から返答などはなく
「おい、留守なんじゃないか」
と言う、部長の声だけがする




