天に挑まば昂進を!
ちょいと短かめです(´д` ;
ー【神殿】入口前。
集結した猛者達は
各々のパーティーで
最後の打ち合わせをしていた。
強敵との邂逅に胸を膨らませる者
死ぬ前に胸を揉ませろと懇願する者
いよいよかと覚悟を決める者
一生のお願いと土下座をする者
秘めた想いを打ち明ける者
童貞では死ねないと叫ぶ者
実に冒険者らしい
雑多な打ち合わせの数々。
半数は明らかに同一人物だったが
奴の事を気に掛けたら負けだ。
猛者達の群れを掻き分け、陣頭に立つ。
辺りは鎮まり返り、皆が私を凝視する。
そして、私は沈黙を破る。
「歴戦の勇者達よ、我に刮目せよ!」
剣を鞘から引き抜き、天へと掲げる。
「此度、我等は天災に挑む!
此度、我等は天使に反旗を翻す!
己を奮い、剣を振るい
意思を貫き、敵を貫き
迷いを断ち切り 、首を断ち切れ!
友の屍を踏み越え、敵の軍勢を斬り伏せ
友の想いを受け継ぎ、神の使徒を討ち取らん!
全てを乗り越えた先に
我等の夢の果てがあるのだから!」
『うおおおおおおおおおお!!!!!!』
鬨の声を上げ
己が武器を天へ掲げる猛者達。
そのまま彼等は一丸となって
【神殿】へと傾れ込む。
土埃が舞い終わり、
後には私とエヴェリーナだけが残った。
「さっきのティノ凄いカッコよかったよ、まるで別人みたいだった!」
「ありがとう、エヴェリーナ」
エヴェリーナが抜刀しつつ褒めてくる。
'熱血漢'は既に【神殿】の中のようだ。
最終決戦ともいえる戦いだからこそ
パーティーメンバーを意識して欲しい。
最も、私達を意識したとしても
確実に先陣を切りにいくであろうが。
もう止めるまい。
「ティノー、はやくぅ〜」
「うん、分かった」
他の冒険者の前では
堅苦しい話し方になるが
エヴェリーナの前では
そうはならないので気が楽だ。
「じゃあ、私達も行こうか」
無言で頷くエヴェリーナ。
水面の様に蒼く輝く光へと、私達は歩みを進めた。
ファンタジー「今度こそ…」