武勇を語らば回想を!
ファンタジー「ここからは俺のターンだ!」
「改めて紹介しますね、パーティーメンバーのエヴェリーナです。」
「紹介に与った、エヴェリーナだ。好きな物は父ちゃんの淹れた珈琲、嫌いな物は爬虫類族モンスターだ。よろしくな〜、トモキ!」
えへへ、と無邪気に笑いながら
左手を差し出してくる。
しっかりと握り返してから
エヴェリーナの自己紹介に応えてやる。
「紹介には与らなかった、トモキだ。好きな物は幼馴染、嫌いな物は幼馴染のいないこの世界だ。よろしく、エヴェリーナ」
「…さて、互いに自己紹介も済みましたし、そろそろ【光界】攻略の話を始めてしまいましょう」
【光界】と聞いて
途端に真剣味を帯びるエヴェリーナ。
そこにあったのは、
先程までの無邪気に笑う女の子ではなく
自信に満ち溢れ、
かつ適確な判断を下すであろう
百戦錬磨の冒険者の姿だった。
凄く格好良い。
…正直、惚れてしまいそうな程に、だ。
いつの間にか隣に座っているティノが、
語り始める。
「あれはー
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【神殿】の入口付近に設けられた
【神殿】攻略者御用達の野営地。
野営地などと大層な呼ばれ方をしているが
実際は少数のテントが無造作に設置されただけの
殺伐とした場所である。
あるテントは食糧庫
あるテントは武具の保管庫
あるテントは冒険者達の寝床
あるテントは戦略拠点兼会議場
と各テントに割振がなされ
野営地をより効率的に機能させる。
この一帯では大型モンスターの出没が稀で
小・中型モンスターも松明で振り払えるため
地理的には野営地として最適だ。
とはいえ、念のために
野営地の周りは交代制で見張っている。
「ティノ、そろそろ時間だ」
「了解した」
声を掛けられ振り向くと見慣れた仲間の顔が。
「もう、待ちきれないみたいだな」
「あぁ、もう、全身の血液が沸騰して爆発しちまいそうだぁ!」
「ふふ、お前らしいなベルナルド」
「当然だぜ!この日の為に生きてきたようなもんだからなぁ!」
この熱血漢の名はベルナルド。
私のパーティーメンバーで、
私が駆け出しの頃に知り合った。
200cm以上の長身に浅黒い肌、
鎧の如く全身を包む隆々とした筋肉、
程良く蓄えられた色濃い顎髭に
一本角が生えた特徴的な朱兜。
30代半ばの男性で
'熱血漢'と形容するのが適切な、
ゴリゴリマッチョのナイスガイ。
初見の人にはよく『こわい…』と言われるが
仲間想いの優しい男だ。
「しっかし、俺ぁ未だに信じられねぇぜ」
「何が信じられないって?」
クスッと笑いながら目の前の大男に問い掛ける。
「酒場で出会ったか細い小娘が、1年足らずで最前線の猛者どもまとめ上げて、あの【神殿】を攻略しようってんだぜぇ?いつから童謡の中に迷い込んじまったんだ俺ぁ?」
「お前は以外とロマンチストだな、ベルナルド?」
「冒険者なんてぇのは、皆ロマンチストだろぉ?」
白い歯を見せるベルナルド。
「ふふ、それもそうだな」
微笑みをこぼす私。
「そろそろ野郎共も我慢ならねぇようだぜ?」
とベルナルドが【神殿】入口を指差す。
そこには待ちきれんとばかりに集結する
猛者集団御一行の姿が。
少しお喋りが過ぎたようだ。
「そろそろ行こうか」
「待ちわびたぜぇ、その言葉ぁ!」
がっはっはと叫びながら
猛者集団の方へ全力疾走するベルナルド。
私は、笑いながら大男の背中を追いかけた。
ファンタジー満載で参ります。