ティノが告るよドヤ顔で!
今回は長めです!
着替えてから、居間の中央にあるテーブルに
ティノと向かい合って座る。
…つもりだったが、ティノは俺の隣に座った。
「あの…、ティノさん?」
ティノは真剣な眼差しで
俺を見つめ、左手で右手首を軽く握っている。
こういう仕草をする時は
決まって大切な話をする時だ。
「兄さんが外に出なくなってから
もう1年も経ってしまいましたね。」
「そ、そうだね」
「この1年で、世界は大きく変わりました…。
特に【神殿】攻略に関する事柄が、です。」
「へぇ〜」
外界に出ていないので
どの程度世界が変わったのかは
確認出来ないしする気もない。
もう、この世界には興味が無い。
幼馴染がいない、こんな世界…
「兄さんの願い、叶うかもしれません!」
「まさか、そんなはずないさ」
「そんなはずあったんです!ふっふっふっ…」
なにやらティノさんが興奮気味だ。
だって…凄い吐息がかかってますもん。
顔が近い、あと数cmで唇が重なるくらい。
必然的に、鼻腔がティノの香りで満たされる。
…なんか変態みたいな言い方だな。
宣言しよう、俺は断じて変態ではない。
そして、ティノは唐突に
凄いドヤ顔を浮かべ、誇らしげに叫んだ。
「私のパーティーが、【光界】を攻略しました!」
「!!?」
衝撃の告白とドヤ顔が、俺の心の中に響き渡る。
どうやら、我が妹はたった1年で
"最強クラス"の冒険者になったらしい…。
><><><><><><><><><
【神殿】
ーそれはこの世界の始まりから存在し
消滅する事のない永遠の象徴。
この世のものではないであろう美しい装飾
神の力とされ【神殿】周辺に
渦巻く数多の怪奇現象。
怪奇現象に包まれたその一帯は
【聖域】と呼ばれ人間だけでなく、
あらゆる生命が引き寄せられる。
竜や巨獣、ついには災厄とされ
童謡として語られるような
怪物や魔物までもが引き寄せられる。
そのため、普通の人間には危険な地帯であり
足を踏み入れる事は無い。
そのせいか、
巷では〔神が住む場所〕とまで言われていて、
一般人には夢のある場所なのである。
…が、その正体は超大型迷宮ー
いわゆる超超高難易度ダンジョンである。
アレの中は【聖域】を徘徊している生命とは
比較にならない程の戦闘力を持った
【支配者】
と呼ばれる'天使達'が支配する
【光界】を中心とした異世界になっている。
そこは、精鋭の冒険者達が束になって
戦っても蹂躙されるような、地獄であった。
><><><><><><><><><
え?何?攻略した?あの【光界】を?
『私の』パーティーが?と思考錯綜している中、
「トモ兄〜、ご褒美のちゅぅ〜♡」
トンデモナイモノをねだりながら
ティノが勢い良く抱きついてくる。
反動で椅子とティノが
組みついたままの俺が倒れる。
うぅ…頭を打ったのか
少し景色がぼんやりしている。
今、ティノに押し倒されている形なのだが…。
…まずい。
ティノの目が本気だ。
「ともにぃぃ♡」
「てぃ、ティノさ…!」
次の瞬間にはティノの唇が
俺の唇に重なっていた。
柔らかくて、温かくて…。
初めての接吻の最中、
意識が遠退いていくのを感じた…。
ティノさんはヤンデレだった…?