朝に覚めれば賢妹が!
妹っていいですよね。
昨夜は自分の出生について疑問が出てきたが
夜も更けていたので眠ることにしたのだ。
夜が明け、窓から陽が射しているのに気付き
むくりと起き…ない。
この温いベッドから出たくない。
こんな至福の空間から出るなんて考えられない。
が、
「兄さん、いつまで寝ている気ですか!」
「あ、ちょっ、待てぇぇ!」
「ふぇっ!?何で、は、裸なんですかぁ!」
赤面しながら剥いだ毛布を俺に差し出す。
だが、すぐに哀しい表情を浮かべる。
「その傷…」
「気にするなって。コイツは馬鹿やらかした俺への戒めなんだ。」
「でも…!」
皆まで言うな、
と優しくティノを抱擁する。
「ありがとな。心配してくれて」
左肩から右の肩甲骨の下角までに
掛けての背面にある傷。
鋭利な刃物で斬り抉られたような、深い深い傷。
存在しない筈の幼馴染を探す
無謀な旅にて受けたものだ。
だからこそ、
この傷は戒めであり、
あの旅にて得た成果なのだ。
ティノはこの傷を見る度に哀しそうな顔をする。
それもあってか俺の事を気に掛けてくれている。
こんな辺境の地で引きこもっている
俺を毎朝訪ねて来る程に。
両親はそろって
俺達兄妹が幼い頃に
かなり遠い所に行ってくる、
と言い残してどこかへ行ってしまった。
だからティノは唯一の家族なのだ。
世界でたった1人の。
だからどんな事があろうと、
ティノだけは守ってみせる。
…こんな事を言うのはシスコンみたいだが、
宣言しよう。
俺は断じてシスコンではない。
「…」
「…」
互いに無言で見つめ合う。
透き通るような碧色の長髪、陽光のような鶯色の瞳、改めて見てもティノは凄い美少女だ。
ティノが幼馴染だったなら、確実に神に感謝感激雨霰、どんな要求にも応えただろう。こんなにカワイイ妹がいるだけでとても幸せなのだが、やはり高望みなのだろうか…。
「に、兄さん…」
赤面しながらそっと横に目線を逸らす。心の内が口に出てしまっていたのか?
「その…早く前、隠して下さい」
「えっ」
そう言われ下を見ると…一糸纏わぬ姿だった。
全裸で妹に抱きつくとか、変態じゃないか…。
シスコン主人公は、割といい奴…のはず。