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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第一章

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『変幻弾丸』

初めて設定が凝っていると言われて舞い上がり、五話程追加で書き終えてしまいました(笑)

 人気のない場所を選んで行動し、昼食を経て久し振りに睡眠を取ることにした。

 ぐっすり眠るとすぐに夕飯となる。


「お兄ちゃん、観た。《銃士(ガンナー)》なのに四対一で決闘(デュエル)に勝ったんだって? 流石はお兄ちゃんだね!」


 夕飯で一緒になった妹が、決闘(デュエル)について聞いてきた。その際どんなスキルを使っているのか聞かれたので答える。


「……お兄ちゃんは、やっぱりお兄ちゃんだよねぇ」


 と呆れて呟かれてしまったが。


「……優衣はどんなキャラクターを?」


 俺は言葉少なく尋ねる。


「優衣はね、ユイって言う名前のエルフで、《呪術師(シャーマン)》だよ。全属性の魔法を満遍なく使う戦闘スタイルだよ。もうレベルは20超えたけど」


 サラリと凄いことを言われてしまった。……きっと四つの内一番強いフィールドで戦っているからだろう。俺はまだ11だ。生産でも経験値は貰えるからな。


「……そうか」


 俺はそれだけを言った。……妹の容姿なら適当でも見つけられると思ってのことだ。だが少し気になることがある。魔法を主体としているのに《魔術師(マジシャン)》ではなく《呪術師(シャーマン)》だと言う点だ。


「……《呪術師(シャーマン)》なのか?」


「うん。《魔術師(マジシャン)》でも良かったんだけど、《呪術師(シャーマン)》の方が相手を状態異常にしやすいの。その分魔法攻撃力は落ちるけどね。使い勝手が良い方を選んだんだよ」


 妹は俺の意図を察してきちんと説明してくれる。……なるほどな。それを得意とする分野の職業を選んでも良いが、選ばなくても良い。極端な話、《剣士(ソードファイター)》が銃を使っても良い訳だ。剣と銃を交互に使えば剣と銃を片手ずつ持てるようになるかもしれないからな。


「……一つ質問だが、魔法ではないオリジナル戦闘スキルを作る時はどうすれば良い?」


 例えばだが、銃ならどう言う弾丸を放つ、と言うスキルを作りたいとする。するとその弾丸を作らなければならないと言うことになってしまう。それでは折角思いついたスキルが作れない。


「う~んと。つまりお兄ちゃんは、銃が近ければ近い程威力が高いからって零距離で放って作った『零距離射程(レンジ・ゼロ)』とか、銃で格闘して作った『銃殴術』とかじゃなくて、これはもうあるけど剣で言う斬撃を放つ、みたいな自力じゃあ何とか実現出来ないスキルを作りたいんだね?」


 妹は考え込むようにして言うが、ほぼ合っている。流石は俺の妹だ。察しが良い。伊達に付き合いが長い訳ではないな。


「……ああ」


「それなら簡単だよ。スキル名と概要とアビリティを運営にメッセージで送って承認されたらオッケーだよ」


 どうやら言葉で説明するしかないようだ。……だがまあ、大丈夫だろう。問題ないハズだ。


「どう言うスキルかだけ、教えて?」


 妹がチロリと舌を出し両手を合わせ片目を閉じ上目遣いで俺を見上げてくる。……やはりわざとらしい。


「……無事に承認されたらな」


 断る理由はないが今教えて承認されなかったら虚しい。今は言わないことにする。


「じゃあ明日の朝ご飯の時教えてね」


 妹はそう言うと、「ごちそうさま」と言って食器を重ね、流しへ持っていく。食器を水に浸けたのだろう、手を洗うとすぐに二階の自室へ駆け上がっていった。……俺も食べ終わり、ゆっくりと食器を流しの水に浸けると二階へ上がっていく。今日は平日なので母がいない。料理を作ったのは妹だ。俺も作れないこともないが、料理に凝ってもらっては困ると言う母と妹の言葉で簡単なモノしかさせてもらえない。別に出来ないと言うことはないが。

 自室のベッドに寝転がりUCOにログインする。


 俺は街の門近くにログインして特に注目された様子がないことを悟るといつもの無表情で初心者用工房に向かう。


「……」


 そこには鍛冶少女しかいなかった。もう前からいたプレイヤーはどの生産スキルを上げていくかを決め専用の工房にいるか、生産職の集まった生産ギルドに入ったか、まだ早いかもしれないが個人経営の店と工房を持ったかのどれかだろう。

 となるとこの少女が何故ここにいるのか不思議に思われる。ここより鍛冶専用の工房に行った方がやりやすいだろうに。


「……ありがと」


 すると急に少女が礼を言い始めた。……一瞬何のことか分からなかったが、そう言えば今朝ナンパ男達から助けたのだと、思い至る。


「……別に良い。困っているのが分かってもらえないのは分かるからな」


 俺はそう言っていつも通り少女から十メートル程離れた隣に座る。


「……そう。いくつか聞きたいことがある」


「……何だ?」


 だがそこで会話は途切れない。そのまま続いていく。


「……今朝の決闘(デュエル)。あのエアガンで放った石の弾は何?」


 どうやら少女には見えていたらしい。……そう言えば妹にも聞かれたな。分かる人には分かるようだ。当然、BB弾と色は違うからな。

 それに、決闘(デュエル)は全て記録され、動画として運営からアップされる。その許可もUCOプレイヤーには取ってあるので文句は言えないが、言いたい。早速俺が勝者となったあの決闘(デュエル)はUCOの宣伝として使われているそうだ。……まだ決闘(デュエル)をしたプレイヤーが少ないからだと思いたい。


「……石のBB弾。小石をBB弾と同じ大きさに削って作った。『石工』と『細工』と『弾丸作成』」


 俺は必要だと思うことだけを話す。三つのスキルのいずれでも作成出来る。それらに精通しているからだろう。


「……『零距離射程(レンジ・ゼロ)』は分かる。でもあの爆発と粉は何?」


「……オリジナル魔法『粉魔法』と『家事魔法』を組み合わせたモノだ。弾はBB弾に粉を詰めた。粉塵爆発を誘発した」


 俺は簡潔に事実だけを告げる。……並行して運営へのスキル申請をメッセージとして送る。運営へのメッセージと言うところをタッチし、スキル申請と言う題をつける。


「……最初の一撃は?」


「……木を相手に練習した早撃ちだ。スキルとなっている」


 俺は少女の問いに答えながら「スキル名 変幻弾丸(プロティン・ブレット)」と入力していく。


「……じゃあ魔法を相殺したあれは?」


「……元々持っていた『精密射撃』で魔法の中心を撃った。終わった後『魔法破壊射撃スペルブレイク・ショット』と言うスキルを会得した」


 「スキル内容 銃で発射した弾丸を槍や矢や剣に変化させるスキル」と次いで入力する。


「……何で人間なのに蟲人族(ちゅうじんぞく)の手や尻尾が戦闘で使えるの?」


「……? 慣れればどうと言うこともない」


 一瞬質問の意味が分からなかったが答える。「アビリティ例 【ランス・ブレット】 【アロー・ブレット】 【ソード・ブレット】」と入力して送信する。


「……凄い」


 そこで顔を上げ少女を見ると、俺を見る目が少し憧れの混じったモノに変わっていた。……そこまで言われる程か?


「……別に凄くはない」


 俺はそう言って早く返信が来ないかと待っていた。すると、


『You have got Mail』


 渋い男の声がメッセージが届いたことを知らせてくれた。


「……何のメール?」


「……運営から。スキル申請をしていた」


 俺は簡単に告げてメッセージを開く。……これはメールで良いのか。声もメールと言っているから良いのか。

 そんなどうでも良いことを考えながらメールを開き、読む。こう記されていた。



リョウ様へ


 UCOをご利用いただきありがとうございます。早速本題に入りますが、申請していただいたスキル『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』につきましては、《銃士(ガンナー)》強化のためこちらとしてもありがたくオリジナルスキルとして認定させていただきます。


 しかしいくらか制限をつけなければなりませんので、スキル詳細は以下のようにしたいと思います。



 スキル名 『変幻弾丸(プロティン・ブレット)

 スキル内容 銃で発射した弾丸をあらゆるモノに変えることが出来る。ただし初期弾丸では初期にある武器のみとし、弾丸の性能が上がる毎に変化可能な武器が増えていく。例としてBB弾ならば初期の武器。(リョウ様がオリジナルで開発された石のBB弾につきましては、こちらで同等のモノを選別しておきます)。アビリティ名は変わらず弾丸を変えることによって変化後の武器の性能が決まる。スキルレベルが上がる毎に変化出来る種類が増えていく。

 必要習得スキル 『銃術』 『弾丸作成』 『錬金』


 ※『錬金』は弾丸を変化させる性質上必要不可欠となります



 これでよろしいかメッセージを送りよろしければこれで決定とし、悪ければどこをどうしたいかと言う旨を伝えて下さい。



 ……。

 …………。

 俺が思っていた以上に、詳細なスキル内容になっていた。まあ際限なく変化されたらゲームバランス崩壊だろうからな。

 と言うか、一つ気になることがある。「あらゆるモノ」とはどう言うことだろうか。俺は武器だけでも良いと思ったんだが、どうやら変化出来るモノの上限がない。


 俺はそれについて質問してこれで良いと言うメールを送る。


 するとすぐに返ってきたのだが、「武器以外につきましては自分でお考え下さい」と書かれていた。……意地悪な運営だ。だがまあ良い。アビリティに追加されていくハズだからな。


「……承認された?」


 俺をジッと見ていた少女が聞いてくる。


「……ああ。これから習得に必要な『錬金』を習得する」


「……そう」


 少女は俺に言われると自分の作業に戻っていった。邪魔をして欲しくないと言う『職人』ならではの意思が伝わるのだろう。……別に邪魔と言う訳でもないので良いのだが。


 俺はクエスト集会所へ行き、SP――おそらくスキルポイント――を消費して『錬金』と『布作成』のスキル習得クエストを受ける。SPはおそらく最初10ポイントあった。そこにレベルとスキルレベルが5上がる毎に増えていく。レベルが一回2ポイント、スキルレベルが一回1ポイントだ。だがおそらくこれは初期スキルと初期職業だからだろう。初期スキルでも10も消費するスキルがあるのだ。上位スキルになれば習得出来ずに終わってしまう。上位になればなる程SPも増えやすくなっていると思われる。

 生産初期スキルは全て2ポイントだ。


 『錬金』は道具を必要としない。必要なのは気合いと両手と運のみだ。

 初心者工房に戻った俺は、小石と小石を右手と左手に一個ずつ置く。続いて小石を落とさないように胸の前で両手を勢いよくパン! と合わせる。そして叫ぶのだ「錬金!」と。……恥ずかしいから俺は心の中で叫ぶが。すると小石二つが――ボロボロに砕け散った。

 ……そう。『錬金』は素材されあれば簡単に出来るのだが、最初は成功率が低い上に失敗すると素材がダメになってしまうのだ。上級者になると失敗した素材を元に戻すことも可能らしいが、今の俺では『錬金』さえ持っていないので無理だ。

 因みに小石二つを『錬金』すると石が生まれる。最もやりやすくショボい『錬金』だ。

 俺は六十個程小石を潰したところでようやく『錬金』を習得する。……小石と小石を『錬金』してもただの石しか精製出来ないのだが。


 スキル使用可能の表示が出た。……これで『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』が使える。これがあればプレイヤー対戦でかなり相手を驚かせることが出来ると思う。


「……そのオリジナルスキルは《銃士(ガンナー)》を再興出来るの?」


 少女が聞いてきた。俺が新スキル使用可能を見たから、ではないだろう。他人からウインドウは見えない仕様となっている。俺が作業に没頭していないからだろう。


「……知らないな。興味ない」


 俺はサラッと前回嘘をついたことをバラす。


「……嘘ついたの?」


 案の定覚えていたようで、少しだけだがスッと少女の目が細められる。


「……ああ。《銃士(ガンナー)》の再興はどうでも良い。相手が俺を《銃士(ガンナー)》だと思って嘗めてくれるからな」


 仕方なく、俺は正直に白状した。……とは言ってもこれは決闘(デュエル)をやって分かったことだが。


「……何で嘘ついたの?」


 だが少女の機嫌は直らない。……妹もそうだが女子と言うのは小さいことでもかなり機嫌が悪くなるからな。一回嘘をついたくらいでここまで不機嫌になるとは。人間誰しも嘘をついて生きているモノだと言うのに。


「……特に意味はない。正直に言う必要もなかったからな」


 俺はサラリと酷いことを言う。……これが有名なネットゲームプレイヤー相手だったらスレで滅茶苦茶叩かれるだろう。


「……そう。悪意がなかったなら良い」


 だが少女はあっさりと引き下がった。……その嘘にどう悪意を込めろと言うのか。


「……」


 俺は次に『布作成』をしなければならないので、布作成道具セットを取り出す。少女は何やらウインドウを操作していた。


 布作成道具、とは言ったがまず『糸作成』から始めなければならない。糸作成道具を出した。『布作成』に使う道具は糸と機織り機(はたおりき)を使うので、糸がなければならない。小型機織機が道具セットである。……よくよく考えればセットではないが、統一のためだろう。と言うか足で踏むペダルがあるのに小さいせいで手で押すようになっている。糸作成道具セットは糸車とかせ取り棒と小さな糸と中性洗剤だ。

 糸車に取り出したショーンミラージの毛をセット。毛は小さく千切って向きを揃える。……難しい。八回程失敗したところでようやく糸のようなモノが出来上がった。それを二本合わせて反対方向にっていく。綛取り棒にグルグルと巻きつけ、糸で数ヶ所束ねて棒から外し輪を作る。『家事魔法』の一つ【コンロ・ファイア】を使って温めた微温湯(ぬるまゆ)を使い洗剤で洗っていく。その後適当に干しておくと時間短縮をするかどうかの表示が出たので「はい」をタッチし糸が段々とフワフワになっていく様を見ていた。出来上がったモノを何となく毛糸玉にしておく。

 これで『糸作成』も習得した。


 するとスキル習得のウインドウの後にこんなウインドウが出た。


『カタラさんからフレンド申請されました。受けますか?』


 と言うモノだ。チラリと少女を見ると、俺をじっと見つめてきた。……どうやら彼女がフレンド申請をしてきたようだ。フレンド登録をするとメールやコール(電話のようなモノ)が出来るしログインしているかどうかも分かる。あまりいらない気もするが、まあ受けておこう。


「……ありがと」


 俺が「はい」を選ぶとフレンドリストが表示された。もちろん未だカタラさん一人だ。同じような表示がされたようで、礼を言ってきた。……礼を言われる程のことではないのだが。


 俺は毛糸玉を崩して(何で玉にしてしまったのか)機織り機にセットし、ギッコンバッタンと布を織っていく――直前で二つ糸が必要だと言うことに気付いた。急いで再び毛糸の作成に移る。それからもう一つをセットし遂に『布作成』に移ることが出来た。……『布作成』はほぼ手作業ではないので一発で成功する。

 ……だがこれで普通の服が出来るとは思えない。やはり綿花を探さなければならないか。それか化学繊維が紡げる花があれば良いのに。


 仕方がないのでショーンミラージの毛から作れるだけ毛糸を作って毛糸玉にしておく。


 その最中に考え出したオリジナルスキルを再び運営へメールで送り申請しておく。効果が簡単なのですぐに承認された。


 『幻影の弾丸(ファントム・ブレット)』。ない時にあってある時にない弾丸を放つのがその効果だ。

 銃の引き鉄を引いて弾丸が放たれたら本当はなくて、不発かと思ったら実はある。つまりは騙すためのスキルだ。《銃士(ガンナー)》が弱いことに変わりはないため、戦略の幅を広げなければならない。


 俺はオリジナルスキルを試す前に時間が来てしまい、朝食のためログアウトすることとなった。

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