フィギュア作り
リアルチートなリョウ君です
※フィギュア作りは普通、かなりの時間を要します
「……」
ログアウトして俺はヘッドギア型装置を外す。……とりあえず運営に問い合わせてみて現実でフィギュアを作って良いか聞き、それからフィギュア作りに入ろうか。運営会社の電話番号はホームページに載っている。
「……」
俺は早速自分のスマホを手に取り運営会社に電話する。
『はい、こちらUnivese Create Onine運営会社でございます。用件で何でしょうか?』
二コールで相手が出た。こう言う問い合わせについて応答する係の女性社員だろう。
「……UCOの著作権について、許可がいただけたらと思っているのだが、ゲーム内のキャラクターやモンスターを現実でフィギュアにしても良いでしょうか?」
俺は怪しい敬語で用件を伝える。
『えっと、実際にキャラクターやモンスターをフィギュアにしたい、と言うことでよろしいですね? 少々お待ち下さい。只今確認して参りますので』
係の女性は少し戸惑ったようだがそう言うと電話を保留状態にした。……流石に一社員が決められることではないからな。上にかけ合ってみるのだろう。
数分後、保留状態で流れていた聞いたことがあるような音楽が止まった。
『もしもし、お電話代わりましたUCO運営会社社長、木谷と申します』
何と、社長が直々に電話すると言う事態になってしまった。……よくよく考えればそうか。全権限を掌握する社長が対応した方が問題がなくて良い。
『それでお客様はUCO内のキャラ、モンスターについてフィギュアを作成したいとのことですが、営利目的ですか?』
「……いえ。作った後譲渡はしますが営利目的ではありません」
『それでは問題ありません、作っていただいても良いですよ。ですが念のためサンプルをこちらに送っていただけますか? 出来ればキャラクターではなくモンスターで。名前は本名でなくても構いません。こちらの住所だけ書いていただき、送っていただくと言う形でも構いませんが』
「……それくらいなら構いません。分かりました。では、サンプルとしてフィギュアをお送りいたします」
『はい、お願いします。それではこれからもUCOをよろしくお願いいたします』
「……こちらこそ、お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございました」
俺がそう言うと、社長は通話を切断した。……まさかサンプルを送るように言われるとはな。フィギュア化させるのも視野に入れてのことなのだろうか。
まあ良い。これでウィネにフィギュアが送れる。
「……サンプルフィギュアか」
モンスターとなると、ゲーム内でも一番多く作成したネプチューンが良いだろう。折角だから初期、岩塊から離れた、憤怒の三つフィギュアを作って送っておこう。サンプルは多い方が良い。
そして俺は一日徹夜し部屋に食事と入浴と食事後のログイン以外籠ってフィギュア作りに取りかかった。……本来なら二ヶ月以上かけて作るフィギュアだが、俺は手早く一日で終わらせる。
……もちろんその分ポーズが微妙だったりはするのだが、ゲーム内で一度作っているのでポーズや細かい装飾に悩むことなく作成出来る。寧ろ現実の方が器用さが高くより細かく作れるのではないかと思う。ゲーム内では八本腕で同時進行だがこちらは二本の腕に集中している訳だからな。
……着色は良いか。時間が惜しい。最悪課題は一日で終わらせられるので、三日ぐらいで良いだろう。ウィネに送る方を着色し完成度を高めるとするならば、運営に送るサンプルなど着色なしで充分だ。
と言う訳で俺は翌日の昼過ぎ、サンプル三体をUCO運営会社に送った。すぐ家に帰って次のフィギュア作成に取りかかる。……妹の部屋から何やら話し声がする。どうやら夏休みの課題をやる会を開いているようだ。俺は無視して自室に籠るとフィギュア作成をし始める。今度は二日使ってでも細かくやるぞ。
食事の時間が決まっている俺の家ではその時間にいないと食事抜きにされてしまう。だがフィギュア作りに集中していた俺は完成して気づいたのだが、翌日の昼だった。……おかしいな。一日ぐらい部屋に籠っていたことになる。早く風呂に入ってさっぱりしよう。
「……ふーっ」
俺はTシャツとズボンと言う姿になって脱衣所から出る。髪を拭いたタオルを肩にかけた。……さっぱりしたな。そう言えばカタラはどうしているだろうか。俺がログインしなくて食事抜きになっている可能性も考えられるが。
と言う訳で昼食を食べるためにリビングに向かう。
すると、
「あっ、お兄ちゃんだ。籠ってたけど何してたの? お腹減ってるでしょ、一緒に食べよ」
と笑顔で手を振る妹がいた。だが妹だけではなく、初対面だが会ったことのあるような三人の美少女も一緒に昼食を摂っていた。
「……フィギュア作成だ。それよりそちらの三人は、どこかで会ったか?」
俺は聞いて長方形のテーブルの向かいに二人、こちらに一人座っている三人を見る。妹は一人で横に座っている。
俺は空いている椅子が一つしかなかったのでこちらに座っているツインテールの美少女の隣に座る。
「……優衣の友達か。勉強会をしているのか?」
「うん。ってかお兄ちゃん、ホントに気づいてないの?」
俺は用意されていた素麺をつゆに浸けながら尋ねる。すると妹は驚いたような呆れたような表情で聞いてきた。
「……?」
俺は不思議に思って三人を注意深く見る。……三人共黒髪だ。隣の娘は巨乳でツインテール。向かいの娘は巨乳でウェーブのかかったセミロング。向かいの隣の娘はショートカットでぺったんこ。これらの見た目に共通する俺の知り合いで妹の友達となればこの推測は正しいだろう。
「……レヴィ、リアナ、セルフィか」
俺は言ってつゆに浸けた素麺を啜る。……やはり、美味い。クーラーが効いている部屋とは言え夏の冷たい素麺は美味いな。
「それだけですか。折角優衣ちゃんが家に呼んでくれるって言うから来たのに」
レヴィは不満そうに言った。
「……これでも充分驚いている。優衣がお前達を呼ぶとは思わなかったからな」
「お兄ちゃんを驚かせようと思って、昨日から勉強会をやってるんだよ。でもお兄ちゃん部屋に籠りっ放しで全然出てこないから」
「……それは悪かったな。食事も昨日の夕飯から抜いていた。だが今からは夏休みの課題をやれる。どちらにしろ部屋に籠るのだが」
「あの、私達の勉強を見てもらえませんか? 優衣ちゃんに聞いたら毎年リョウさんが見てるって言ってたので」
俺は妹と会話しながら素麺を啜っているとセルフィが控えめに挙手しながら言った。……妹の勉強を見るついでに三人の勉強も見ると言うことか。それなら大した負担にもならないだろう。レヴィは要領が良いので教えることが少ないだろうからな。
「……別に良い」
「あ、ありがとうございます」
俺は言うとセルフィは頭を下げて礼を言ってきた。……礼を言うのはまだ早いと思うのだが。
「じゃあとりあえず紹介しておくね。UCOではレヴィこと齋藤麗美ちゃん。セルフィこと瀬名瑠璃ちゃん。リアナこと蓮沢里亜菜ちゃん。で、こっちが優衣のお兄ちゃんこと実加鐘了だよ」
全員共通して現実でもゲームでも知っている妹が俺達の現実での名前を紹介する。
「……よろしくな」
「はい」
里亜菜だけが返事をした。他二人は素麺を啜っていたからだ。
「じゃあ五人で勉強会しよっか。場所はどうする? 五人だと優衣の部屋は狭いから」
「……リビングで良いだろう」
「り、了さんの部屋はダメですか?」
麗美がジッと俺を見つめながら言ってきた。…何故俺の部屋なのか。
「……別に良いが。優衣、大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ。でも大丈夫だからダメなのかな? けどカーテンあったよね、お兄ちゃんの部屋って」
「……ああ」
それなら問題ないか。俺と妹の間だけで通じる会話をした後、俺は「……部屋を片づけてくる」と言って先に素麺を食べ終わり、自室に戻った。
……臭いを気にするなら換気した方が良いな。フィギュアや漫画などが入っている棚やケースは黒いカーテンで覆うとして。二部屋ぶち抜きになっているからフィギュア作成道具などを片づければスペースは問題ない。机を出しておくと良いだろう。夏なので換気はそこそこに冷房を効かせる。
その後一旦ログインしてカタラに説教されつつ、俺は現実で四人と勉強会をやった。
運営から電話があり良いと言われたのでウィネにフィギュアを送る。……運営の社長直々に取り引きと言うか交渉を持ちかけられた時には少し戸惑った。名前をネットでの「ryo」にしたのが間違いだったのだろうか。金は払うからフィギュア化に協力してくれと頼まれてしまった。今はゲームがしたいので時期を見てまた連絡すると言っておいたので、社長の電話番号を教えてもらってしまった。
そして後半の期間となりログインを増やしつつ、遂に事前イベントの日になった。七月三十日の午前零時から七月三十日午後十一時五十九分五十九秒までの事前イベント。
すでに昨日イベントの説明は行われている。
再び妖精入手イベントが開催されるのだ。
俺達は開放された妖精のギルド契約をしてクーアを誰が見ても良いようにすると、もう一種の妖精、戦闘の妖精を入手するために、事前イベント挑むのだった。
……今回は明確に一人で、と記載されているため、どうやってギルド契約をするのかは分からないのだが。




