職業紹介PV
タイトル通りです
流し読みでも置いてかれることはないと思います
七月十日。UCOはアップデートのため深夜零時をすでに過ぎている今、メンテナンスを行っている。UCOへログインするためのヘッドギア型装置をネットに繋いでおけば、昼の午後十二時までにはアップデートを完了しログインすることが出来るようになる。そのための十二時間のメンテナンス時間でもあった。
その間プレイヤー達とこれから新たに追加される新規プレイヤー計一万名はアップデート内容やイベント内容、そして各職業の代表者一名による職業選択のアドバイス及び長所と短所及び習得した方が良いスキルなどを紹介したPVを見て気持ちを高めていくのだ。
代表者には元βテスターが多いためPVの作成は素早く終えていたモノも多かったのだが、人々は七月九日午後十時と言うかなりギリギリに近い時間にアップされた最後のPVに関心を惹かれた。
元βテスター達が長所と短所、選ぶと良い種族、選ぶべきスキル、そしてその職業ならではの楽しさと最後に自分の入っているギルドの宣伝を入れていた。
『……《銃士》の代表に選ばれた、リョウだ。他のPVを見て参考したからおかしいところはないと思うが、人数が多い中から選ばれた元βテスターの多い他の職業と違って俺は正式から始めた上に運営に聞いたら《銃士》は俺一人だと言うから仕方なく受けた。他のPVを参考にした順番でいこうと思うが。まず長所。これは極端な晩成型である《銃士》に言えることだが、狙撃銃による超遠距離射撃。近距離は弱いが一キロ先からでも狙える銃もある。機関銃による超連続攻撃。一発一発は通常には劣るが弾が尽きるまで乱射出来る銃もある。散弾銃による高威力範囲攻撃。ショットガンと言うヤツだがなかなか使い勝手が良い銃もある。ただしこれらの場合装備するために移動制限がかかったり装備するのに一定の力が必要だ。因みに俺は二挺銃をやってみたい。まだ見ぬ手の多い種族のための六挺銃と言うスキルもあるかもしれない。なかったら作るしかないな。《銃士》は不遇職と言われているそうだが、俺は後々強くなるため仕方のない措置だと思っている。それに、俺はエアガンでも充分に活躍出来る弾丸とスキルを見つけた』
リョウと名乗るプレイヤーはUCO一の不遇職、《銃士》の代表だ。UCOでも唯一の《銃士》だと言うリョウは堂々とした態度で言った。
『……短所だが、これは簡単だ。防御力だな。物理も魔法も、防御に関しては脆い。ボス戦の動画を観たら分かるだろうが、相殺ダメージと言う微々たるダメージが重なった結果、HPがレッドゾーンまで到達してしまった。防御力とHP。これが《銃士》最大の短所と言える。もう一つ挙げるなら、最初のエアガンとBB弾と言う装備の弱さだな。攻撃力が計2しかないからな。それに、他の武器と比べてNPCが次の装備を売り出すのも遅い。俺が新しい弾丸を開発したとしても新規プレイヤー最初、BB弾で戦うことになるだろう。最初はアイテムバッグを買うのに金を使うからな』
短所を説明するのも淡々としていた。
『……次は選ぶと良い種族か。個人的には手の多い種族の方が良いと思うのだが、どうやら難しいようだな。〈蜘蛛〉や〈蟻〉を選ぶのは《武闘家》向きか。獣人も良いかもしれないな。だが将来目指すスタイルによってどれにするかは変わるだろう。俺のように近接で銃を使うタイプなら素早さと器用さの高い種族。狙撃銃や機関銃を装備したいなら器用さと力の高い種族が良いだろうな。散弾銃なら意外と器用さが高ければ後は防御を重視しても良いのではないかと思う。射程距離が短い分敵に近付かねばならず、しかも装填に時間がかかる。鎧を着てはいけないと言う記述はない。だが鎧が装備出来るくらいの力がないと無理だが。そのために力と器用さの高い種族を選ぶのもありだな。機関銃や狙撃銃を装備したら必然的に使う力が多すぎて鎧は無理だろうが』
どんな銃を選ぶかによって種族は変わってくるが、器用さは必要だと、《銃士》代表は言う。
『……次は選ぶと良いスキルだが、俺は狙撃銃や機関銃、散弾銃などの他の銃専用スキルと言うモノを知らない。なので俺が今使っているスキルの中からオリジナルと既存のスキルを含めてオススメのスキルを紹介しようと思う。《銃士》必須のスキルは『銃術』だ。これは命中率上昇、反動の効果があり銃専用アビリティを覚えられるから必須だ。俺が最初に選んでから多用しているのは『集中』だな。これは周囲の雑音を遠ざけることが出来る。生産にも戦闘にも使え、パーティの声は届くのでやりやすくはなると思う。身体強化のスキルの内、『器用強化』と『速度強化』と『命中強化』は俺の戦闘スタイルには必須だ。将来狙撃銃か機関銃を装備したければ『攻撃強化』と『体力強化』を取ると良いのではないかと思う。前三つは銃の照準の微調整に、銃の装填速度と俺が使う『早撃ち』への道筋に、銃の命中率に関係してくるため取った方が良いだろう。だが安定するかどうかは分からない。安定したいなら他の職業にするべきだからな。他に俺が使っているスキルは『早撃ち』。これは『速度強化』を取らないとまず出来ない。ホルスターから銃を抜きコッキングして撃つまでを約一秒で行うスキルだ。俺もよく分かっていないが何度も木を相手に練習して習得した。成功するまでが大変だ。続いて『精密射撃』。これはおそらく放ったモノよりも小さいモノに当てると習得出来る。俺の場合はBB弾をアルミラージの目に当てて取得した。《盗賊》代表のクノにも教えて成功したから間違いない。『精密射撃』があると便利だ。命中率がかなり上昇するからな。最初の決闘で魔法を相殺出来たのもこのスキルがあってのことだ。その後『魔法破壊射撃』と言う魔法と魔方陣の中心を撃ち抜くことで破壊出来るスキルを習得した。続いてβテスターオリジナルスキルを紹介するが、溜めている癖にレベル9までは威力が上がるどころか下がる『チャージ・ショット』。高レベルまで上げれば強いけどな。対象から一ミリでも離れると効果を発揮しないが零距離でなら通常の五倍の威力で攻撃出来る『零距離射程』。最初攻撃力の低い《銃士》の俺はこれで何とか敵を倒してきた。銃を使った近距離戦闘には必要な『銃殴術』。グリップで殴ったり出来るが防御が出来ないので注意が必要だな。他に俺が使っているのは『跳弾』だな。二回目の決闘で使ったが、弾丸を跳ねさせることが出来て、その度に攻撃力と勢いを増すスキルだ。ただし、対象ではない植物以外の生物に当たると効果を失う。俺が決闘で使ったのは、ゴムで作成したBB弾と『跳弾』を組み合わせたスタイルになる。元々跳ねるゴム弾を跳ねる毎に勢いを増す『跳弾』で放った訳だ。だがそれだけではあの精度を得られない。そこで『射線表示』と言う、弾丸の軌道が視界に視えるスキルが出てくる。習得方法はゴム弾で放った『跳弾』の軌道を予め読んで狙い通りに当てること。難しいが五回以上の跳ね返りが必要となる。習得すれば自分よりレベルの高いプレイヤーも一撃で倒すことが可能となる。相手はどこから弾が来るか分からないのに撃った本人はどこから当てるか分かっているのだからな。ただし弱点があるとすれば相手をその場に留めないといけないことだな。それか途中の軌道上に誘導するしかないが。俺オリジナルスキル『幻影の弾丸』は見えている弾丸が実在せず、見えていない弾丸が実在するスキルだ。だがアビリティではなくスキルのため、見えなかったらあるかもしれないが見えていたら本物か偽者かは、撃った本人しか分からない。このゲームはハイテクだからな、プレイヤーだけでなくモンスターをも騙すことが出来る』
スキルを説明していきその習得方法さえも明かす。まるで、そんな些細なことは明かしても構わないとばかりの態度だ。その先に、もっと使えるスキルがあるかのような――。
『……戦闘のことばかりになってしまったが、『弾丸作成』があると便利だ。あとは石のBB弾を作るために『石工』と『細工』。ゴムのBB弾を作るために『ゴム作成』。自分で使いやすいホルスターを作るために『鞄作成』――は生産スキルを持つプレイヤーに依頼しても良いが。それと出来れば銃がどのスキルで作成出来るか試して欲しいと思う。俺も一応色々な生産スキルを習得してはいるが、見つからない』
《銃士》代表は続いて戦闘以外の、生産についてのスキルを紹介する。
『……長くなってしまったが、これで職業紹介を終わろうと思う。最後に一つ、他の職業の代表者も行っていたように俺も自分が所属するギルドの宣伝をしようか。俺が所属しギルドマスターを務める《ラグナスフィア》は現在の所属人数四人の少数ギルドだ。だが人数制限は十人、つまりあと六人程のメンバーを募集している。入団条件は何かしらの生産スキルを持っていること、他人をバカにしないこと、そして生産の作業を手で行うことだ。面接や試験も行う予定だ。――では失礼する。《銃士》を選ぶにしろ選ばないにしろきっとUCOはプレイヤーを楽しませてくれるだろう。たまに意地の悪いこともあるが第一回のイベントも始まり楽しめると思う。期待して良いと思うぞ』
最後にギルドとUCOの宣伝をして、PVは終わった。
そして七月十日、午後十二時。
遂に待ちに待った第一回イベントが、開催される。