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ピントがあわない暗がり

作者: 明日咲霞苆
掲載日:2026/07/27


 田舎と都会では暗がりの質が全然違う。田舎っていうのはね、暗いんだよ。街灯が全然ない。夜になるとヘッドライト付けないと何も見えない。でもね、星が見えるんだよ。完全な闇に奴らは存在できないが、灯りに誘われて現れる。つまりは、うーん。要は田舎の暗がりっていうのは空に近いところにある。いや、距離感というべきか、全部が全部、空ではないけど。田舎の深夜は、空にしか化け物は出てこない。よく見かけるのは、昼と夜の境目の空間、写し場があるところだな。やっぱりガラス窓は多い。闇雲に映してしまうからどうしても多い。あとは、開けた場所。田んぼの真ん中は多い。もちろんこれらは現実的な認識との境界の距離感が必要になるから、彼らから危害を加えることは距離的に無理だ。だから、なんというか田舎の方が良かったなぁと思うわけです。人の悪意と同じことを怪異は真似るからね。

 と申し遅れました、自分はそういうのが見えたり感じれたりするタイプでしてね。稲荷信仰に縁のある田舎者でして、そのせいか、人より無差別に襲われやすい体質なもんで、たまにはこういうサイトで愚痴ってもいいかなと。もちろん田舎で怪異は見えつつも襲われていなかったのは、氏神のような稲荷が近かったかもしれない。そもそも田舎の怪異なんて、ただそこにいるだけだったからね。やはり怪異は人の悪意を真似るからね。

 ああ、本題に戻ろう。 都会の暗がりってやっぱり怖い。ほんと近い。ピントが合わなくなるような環境に暗がりができると考えているんだけど、都会って本当にそれが多い。街灯が多い。多いことは悪くないと思うけど、灯台下暗しが多すぎる。怪異は触れなければ無害だが、見えてしまえば害にはなる。認識の危うい中でそれを認識してしまった時から、彼らは私たちを認識し襲いに来る。動機なんて千差万別だが、都会は空気も悪いから碌な霊がいない。彼らは人の悪意に寄っていくからね。

 私は夜道を歩くときは靴の中に髪と人型を入れて歩くタイプの人間なんだが、この前、コンビニ帰りに遠くの街灯にピントをあわせて歩いて、通りかかった自転車に目をやった瞬間、隣の電柱から、2メートル近い流動的な黒いモザイクが湧いてきたときとか、鳥肌だったな。近くの交差点で縁切りしたけど、その間に脚を舐められた感触したし、人型も両足切れてたし、ほんと都会怖い。こちらから触れるのは良くないにしろ、気になって調べたら通り魔による傷害事件とか出てきたし、ほんと都会怖い。そういう悪意が顕現しやすい、ピントの合わせにくい都会が怖いね。これだけ都会について悪く言えばおそらく今晩は、それに関する霊が私を見舞うだろう。人の悪意を怪異は真似るからね。

 あと当たり前だけど、歩きスマホも良くない。自ら視野を狭めて、怪異を呼んでるようなもの。この前だって、ぶつかりそうになってよけた相手がマトリョーシカだったこともある。都会は怪異が好き勝手歩き過ぎている。そいつらが屯すれば闇になるし、なんでこうも怪異の好きな環境になっているのか。人が悪意を怪異に押し付けるからね。

 監視カメラも何とも言えない。全面的にあるなら、出歩く怪異なんて相当な故意がなければ生まれないが、監視カメラのない通りでできた闇が隣の監視カメラに写ったらそれは存在が確定しまいかねない訳でね。そういうのは困る。強い怪異が現れかねないからね。

 そうそう。今、私はお酒が入っている。この疎かな認知の中で、さっきから小窓を叩く音がうるさい。叩くというより、擦るというか、気にしなければ梢の音、気にすれば呼気すら聞こえる。ロング缶で机をたたくと、夜更けに凪が湧いた。人の悪意を怪異は真似るからね。私だけでもできるだけ人を恨まず妬まず生きていきたいものだね。缶をゴミ箱に投げるとゴミ箱が缶を咥えたような気がした。

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