第7話
「こっちだ、来るといい」
セウタは北東の家に向かう。
通常な何の変哲の無い家だ。
ドアには根の張った木の造形のノッカーが付けられている。
ゆっくりと2回鳴らす。
「この情勢だ、当然誰も出ないだろ。」
セウタはドアを開け、中に入る。
中も一般的な民家と一緒だ。
「ここからは暗い。頭と足に注意してくれ」
セウタはそう言うと、しゃがみ、壁の一部分を触る。
床と接している部分だ。
押してみれば、通常押せるはずのない壁は凹んだ。
出来た凹みから床の板に手を付け、今度は床を開ける。
廊下のど真ん中に下へ続く階段が現れた。
「一番最後の人は締めてくれ」
懐中電灯を灯したセウタに続く。
暗い通路は網目状に入り組み、はるか先へと続いていた。
見えない足元はきれいに平たくなっている。
天井もよほどの大きさでない限り当たることはない。
セウタは疑問を投げられても、「到着したらで」と返した。
20分ほど歩いた。
階段を上がり、入る際と同じように天井を開ける。
槍を持った男が一人、一行を睨んでいた。
「セウタだったか。ならそちらが例の?」
「そうだ。書庫まで行く」
男は道を開け、真っすぐ立つ。
建物内は広い。
壁は白く、天井のガラスから光が差し込み、美しさを更に引き立たせていた。
そして人は大勢いた。
「もう少しだ」
階段を上り、通路を進み、そしてまた下る。
そして昇る、長く上る。
「ここだ、入ってくれ」
おそらく先ほどの会話から、書庫を言われている部屋だ。
その名の通り、本が棚に敷き詰められている。
夕日は本を照らさず、中央に位置する丸いテーブルを照らしていた。
セウタは一つ本を手にする。
題はなく、何の装飾もされていない。
「これが、ジクラム教の聖典だ」
「ジクラム教?カルト教団に入るつもりはない」
「ああ、勧誘じゃない。知ってほしいんだ。このエピデミックは仕組まれたものだ。奴らは自分達をサルカイドと呼び、我々もそう読んでいる」
「それで、その2つが何の関係を?」
セウタは「聖典」を開く。
「ここだ。ジクラム教は自然を敬う宗派だ。一方でサルカイドはゾンビを信仰し、あの非自然的なものを崇めている。これは我々の教義と相反する」
そう放った後、聖書に指で示す。
「神は我々に死を与えた。だが罰ではなく、救済でもない。死を繰り返し、魂は昇華する」
もう一つ。
「神以外、神聖な死と生をどうにかしようとしてはいけません。魂は次の命を得られなくなってしまいます」
セウタはカルヴァを見て、聖書を閉じる。
建物内にゾンビの声はしない。




