第5話
筒を握るシレト。
カルヴァとミロスはゆっくりと後ろを向く。
「お前ら、俺を裏切るのか?」
彼の目は、常人では無かった。
「落ち着け、裏切るも何もない」
導火線に火をつける。
火が紐に沿ってゆっくりと進む。
「逃げるぞ!」
カルヴァとミロスはその部屋のドアを蹴り、逃げる。
廊下にはほとんどゾンビはいなかった。
しかし、そこらをうろつくゾンビが時折、罠にかかり肉片と化していた。
「ここは安全なのか?それとも危険なのか?」
「もうどっちでもいいわ。下に行きましょう」
下に空いた穴を覗く。
そこにはゾンビが多く残っていた。
「逃げ場はないようね」
「戦うか。ミロス、そっちに。待ち伏せだ」
「ええ、分かったわ」
2人は分かれ、シレトを待つ。
シレトは現れない。
少しの時間の後、爆発が起きる。
これまでの爆発とは異なる爆発だ。
大きく、建物全体が揺れる爆発だ。
「まずいぞ、ベランダに行け!」
「え、それってどうゆう?」
カルヴァは答えず、ミロスの横を通り過ぎる。
それに続くように、ミロスも後を追う。
ベランダはすぐ近くだった。
カルヴァは下を向く。
ここは5階。
揺れは既に大きい。
「行くぞ!」
カルヴァは身を投げ出す。
「ああ、神よ!」
ミロスもそれに続く。
2人は、自由落下に身を任せる。
そして何メートルという厚みがある雪の上に着いた。
カルヴァはゆっくりと起き上がる。
マンションの5階より上は、今にも崩れようとしていた。
だが、崩れはしない。
保たれたバランスの上に、成り立っている。
「すまない。大丈夫か」
ミロスは、カルヴァから差し出された手を握り、起き上がる。
足音と共に、ゾンビが襲いかかる。
カルヴァは懐から銃を取り出し、ゾンビに向ける。
しかしすぐに、爆発四散した。
その下、マンホールの蓋が開く。
汚れた緑色のジャージ。
パーカーを被っているせいで顔はほぼ見えていない。
しかし、かすかに見える顔はかなり疲弊していた。
先ほど2人に見せた狂気的な顔とは違う。
シレト・アイルドだ。
導火線を持った筒を持ち、青く大きいバックパックを背負っている。
「さっきは、俺が取り乱していた。すまない。ただ俺も、あそこで籠城はできない」
「自分であんなにしたんでしょ……」
「とにかくだ。安全な場所まで一緒に行かないか?やっと落ち着いていた」
「……勝手に来い。ただ、いざとなっても守らんし、次何かしようとしたら容赦なく撃つ」
カルヴァとミロスは呆れ、そして雪の中から立ち去る。
シレトもそれを追う。




