第3話
カルヴァは目を開ける。
「何が…」
目の前には、ミロス。
身体を動かそうとするが、椅子に縛られ、固定されて動けない。
「おはよう。カルヴァ」
「ああ、おはよう。ここまでの目覚めは今までにない。新鮮だ。安全なんだろ、ここは」
「ええ、ここは大丈夫。ゾンビは来ない。来ても全部私が倒してあげる」
一般的なマンションの部屋だ。
「それで?どうして俺はこんな事になっているんだ?」
「カルヴァはそこに居るだけで良いの。ここには誰も来ない。あなたはゾンビ騒動で行方不明になっていることにしましょ。そして結婚しましょ。きっと幸せになれる」
「とんだ理想だな」
「あなたは何もしなくて良い。私がご飯を作って、仕事へ行き、何でもやってあげる。大丈夫。あなたがその気になれば、この家の中では自由にしてあげる。でも、外に行くのは駄目だから」
部屋にある机の上にはミロスが持っていた斧が置かれていた。
「それで、そうなった場合、俺はお前のために何をすればいい?」
「あなたは何もしなくて良い。私が全部やってあげる」
カルヴァはため息を一つする。
「残念だが、それは駄目だ」
「何で?良いと思うけど」
「そんな理想を掲げているということは、お前は俺の事を愛していると言うんだろう。だが、お前は俺を信頼していない。それじゃあ、愛しているとは言えないだろう」
「そう、ならいいわ。あなたはその場所から動けない」
ミロスはそう言い残し、キッチンへ移動する。
カルヴァは縄をほどき、素早く物陰に隠れた。
「あれ?」
ミロスは椅子の方を振り返る。
「いない、何処に行ったの?」
ミロスは斧を手に取る。
カルヴァは音でそのことを察知した。
重い金属の音だった。
近づく足音。
逃げようにも、逃げる場所はない。
カルヴァは物陰から出ようとした。
その時だ。
突然通路の方から爆竹に似た音がした。
2人は音の発生源を向く。
「カルヴァ!?もうそっちにいったの!?」
ミロスは慌てて玄関の方へ行く。
カルヴァはその隙に窓、ベランダへと行く。
そしてベランダから外の様子を見る。
見下ろした先、道には雪。
その雪に、赤い箇所が所々に。
そしてその上を徘徊する人形の物。
ゾンビだ。
それがいつ、ここに来るかは分からない。
2人が見合う静寂は来なかった。
爆発音、それに続いて瓦礫が崩れる音がした。
発生源はこの部屋、ミロスの後ろだ。




