表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

ep.4 アイドル

学校から徒歩20分、自転車で10分のところにあるこの1Kマンションが俺の家だ。駅も近く割となんでも揃う為生活において不自由は特にない。むしろ便利とも呼べるくらいだ。あと余談だが近所の精肉店のコロッケが格別にウマい。




 両親が離婚したのは俺が中1の頃でそれ以来男二人暮らしが続いたのだが俺の高校進学と同時に海外赴任が決まったらしい。当時は2人で海外に移り住む計画だったらしいが、慣れ親しんだこの町で暮らしたいという思いでなんとか説得し一人暮らしを始めた次第だ。




 そんな愛すべき我が家につきソファに腰をかけ今日あった刺激的な出来事を回想する。




 「何なんだ今日は一体」




 思い返すだけで現実かすらも疑うレベルの大イベント。心音の告白に関しては言われるまで男として意識されているとさえ思いもしなかったから正直嬉しい反面戸惑う気持ちも大きい。LOVEかLIKEで言うとLIKE寄りだと思ってたけどあんな事言われたらこちらも意識しちまうだろ。




 そして極め付けは心音の告白を受けるかどうか迷った原因、と言ったら失礼かもしれないけど心の片隅にずっといたあの青い瞳の美少女、もとい篠崎詩音さんがこのタイミングで急に現れたことだ。


 何の巡り合わせか同じ高校に転校してきたみたいでこれが偶然か必然か。必然だったら普通にちょっと怖いけど。もちろん5年ぶりに再会できて嬉しい気持ちはある。あの頃と変わらない眩しい笑顔と綺麗な青い瞳。変わったところと言えば距離感がかなり近いところと長かった髪がボブになっているところか。正直あのルックスであの距離感取られたら普通の男子ならイチコロだろう。




 「なんだか今日はもうカロリーオーバーだな」




 項垂れながらテレビの電源を入れると若者に人気のバラエティ番組の放送中だった。特に街角にいる変わった人にインタビューするコーナーが中高生を中心にバズっているらしい。そしてゲストは"今世紀1番売れているアイドル"で話題のポッピンアイスキャンディ、通称ポピキャンの人気メンバー櫻葉桃果(さくらばももか)夏海ひまり(なつみひまり)涼原リオン(すずはらりおん)の3人だ。




 「ここで本日のゲスト櫻葉(さくらば)さん、夏海(なつみ)さん、涼原(すずはら)さんへの一問一答インタビューコーナーです!!」




 司会のアナウンサーが告げると番組観覧に参加しているであろうヲタクたちの熱い声援がスタジオに響き渡る。




 「桃ちゃん今日も可愛いよ!!!」




 「ひまりんビジュ良すぎ!!」




 「涼原リオンは俺の嫁!!!!」




 3人はそんな観覧席に向けてキラッキラのアイドルスマイルを浮かべながら手を振っている様子。





 合計10の質問を順番に答えていく形式で始まったインタビューコーナーも残すところ最後の質問だけになっていた。




 「それでは最後の質問です!!ズバリ!!好きな男性のタイプは!!」




 アナウンサーがそう告げた瞬間、スタジオの空気がガラリと変わって緊迫した雰囲気が流れ始める。観覧席のヲタクたちも固唾を飲んで見守っている様子だ。すると1人目のメンバー、櫻葉桃果が大きく息を吸った後で質問に答え始めた。




 「好きなタイプは優しくていつも応援してくださっているファンの皆さんです!!」




 「なんて良い子なんだ、、、」




 俺は特別アイドルが好きなわけではないんだが流石のトップアイドルの答えに画面の前で感嘆してしまった。緊迫していた会場の雰囲気が熱狂に変わりヲタクたちが魂の叫びを披露し始める。




 「うぉぉぉぉぉぉお!!!!桃ちゃん愛してる!!!!!」


 


 「もう桃ちゃんしか見えねえ!!!!!!」




 「桃ちゃんしか勝たん!!!!!」




 ヲタクって単純だなぁと思いつつ自分がヲタクだったらそっち側だっただろうな。なんて考えながら続く2人の回答を見る。




 「私のタイプは私のパパみたいな人です!!!!」




 ひまりパパ、あんたの娘最高だよ。ヲタクの様子も随分盛り上がっている。




 「俺今日からパパになる!!!」




 「ひまりん!!パパだよ!!」




 流石にそれはちょっとキモい。けどまぁ気持ちはわかる。そして3人目の涼原リオンの番になった。クリーム色の髪を低めのお団子ツインに纏めていて薄い青色の瞳をしている。少しクールなタイプなのかと思っているとリオンが質問に答え始めた。




 「私は一途な人がタイプです。だからこれからも私とこのグループを一途に応援してくれたら嬉しいな。」




 スタジオが今日1番の盛り上がりを見せた。ヲタクの歓声が響き渡る。メンバーも駆け寄って抱きあっている。




 「りーちゃん大好き!!これからも頑張ろうね〜!!」




 「りーおんも私たちに一途でいてよね!!」





 「なんて微笑ましいんだ、、、」




 テレビの前の俺もその尊さに心が浄化されたような気がした。




 「一途か、難しいな。」




 一途に俺を思ってくれている幼馴染と一途に思っていた篠崎さん。俺は一体どっちのことが。そう考えているとポケットに入れているスマホが鳴った。親父からだ。




 「親父?珍しいな、急に電話寄越すなんていつ以来だろ。」




 そうして俺は親父からの久々の着信に応えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ