5.気品優先
郁美は言葉より先に手が出るタイプ。イヤですねぇ…
「近野、これ、きちんと動くぞ。バグってなんのことだ?」
「えぇ?」
パコンとセンセーの頭を引っぱたいて席をどかせる。
…ホントだ、キャラ選択画面になってる。
「い、イタイなあ……」
それくらい我慢しなさいよ。全くダラシナイ。
今のあたしに、そんな事に構ってる余裕なんかない。
ホントだ、なんだちゃんと動いてんジャン。
あのお美しいオープニングじゃないけど、白河の事だから適当にすっ飛ばしたんでしょ。
いきなり、タペストリーな装飾の施された画面の中で、キャラクター選択になってる。
種族と性別を選んで、基礎能力にボーナスポイントを振り分けるという、まさにお約束設定。
人間は、職業も選べるようになっているらしい。
選び終わると、お顔がみられるわけね。
早速、人間、男、剣士さま、剣士さまっと。
「……な、なによコレっ!」
出てきたのは、見るからにイカツイ、不細工なゴツゴツ顔の男だった。
「なによって、なにが?」
「とぼけんじゃないわよっ!あたしはこんな男でプレーしたくて来たんじゃないっ!」
白河の首根っこを引っ掴んでウラウラやってると。
「せ、先輩、まだボーナスポイント振り分けてないじゃないですか」
部員の一人がオズオズと口出ししてくる。
「なにそれ?」
「だから、腕力とか敏捷力とかを、能力に振り分けてやるんですよ。そうすると、それに見あった感じの顔になりますから」
「そういう事は早くお言いっ!」
白河を投げ捨てて、早速画面に向き直る。
とっつきやすそうに見えたゲームだけど、結構、細かいじゃないのさ。
えっと、あの剣士さま、無茶苦茶強そうだったけど。
でも、なによりお顔、お顔よぉ!
「カッコイイお顔にするには?」
「そりゃあ“気品”を上げればいいんですけど、戦闘にはあまり役に立ちませんよ?」
「いいのよ別にんなこと」
一気に気品をマックスにしちゃう。
と。
来た来た来たァ!
愛しの剣士さまよぉ! またお会い出来ましたわぁ!
「……姫、ご無事でしたか」
おおっ、音声まで出るとは(しかも渋いっ)、随分と出来のいいゲームソフトじゃないのさ。
「先輩、いくらなんでも、それじゃあ勝てないと思うんですけど」
「だよなあ、判ってなさすぎだし」
あたしのマユが、ピクリと上がる。
「へえ、このあたしに、そんな口聞いてタダで済むと思ってんの?」
子スズメ共の分際で、そんな口を叩けるわけ?
白河のヤツ、部員の躾けがなってないゾ。
って、気絶してんのか。ちょっとやりすぎたかな?
「いや、普通のキャラだったら、僕らじゃ相手になりませんけど。でも、気品しかない人間の男なら、ネエ……」
互いに顔を見合わせて、ニヤニヤ笑う部員ども。
「オッケー、その挑戦、受けたげるわ」
あたしも、中指をおっ立てて指招きして上げる。
海浜のゲーマー女王の呼び名、伊達じゃないって教えてあげるん。
気品にしか振っていないキャラになんて、負けるわけがない。
コイツアホだ。ホントーにアホだ。




