ちょっと覚えてないですね
初投稿です。
のんびり更新していきます。
栄光の国・リーデンヴァルク
代々の国王が優れた人格者であり、文化や経済の発展が続く神に愛されしこの素晴らしき国の歴史にも昔々に小さな…いや、大きな染みというものがありまして。
今から300年程前、リーデンヴァルクには美しき王女がおりました。月光をそのまま溶かしたような銀の髪に、薔薇色の瞳。美の神すら膝をつく、と多くの吟遊詩人に題材とされる、いわば絶世の美姫。名をセレスティアと申しました。
しかしまあお約束といいますか何といいますか、彼女は見た目こそ最高の姿をしておりましたが、頭の中と心根に関しては世紀の悪党も裸足で逃げ出すものだったと言われております。
彼女の我儘の枠をこえた暴虐ときたら、あの令嬢の顔が気にいらないから焼いてしまえと火の魔法をぶつけようとしてみたり、あの騎士が欲しいからと無理矢理側におき、怪我で美貌を損うと捨て、ついには男爵令息に熱をあげ当時の婚約者に何と国王の生誕祭にてありもしない嘘を並べたあげく、婚約破棄を突きつけたとか!
これには娘に甘い国王も大層怒り、王女は罪人として裁かれたとか…
え?それで終わりかって?
いえいえ、まだ続くんです。もう少し聞いて下さいな。
しかしここはとんでも思考の王女様、なーんにも反省なんてしませんでした。
彼女は彼女の好きなように生きただけ、やりたい事をやっただけ。なのに何故自分が罪人として扱われるのか。
その理由を考えようともせず、ただただ身勝手な怒りを身に宿した彼女はその怒りの炎に自らの命を投じたのです。
そう、命を代償に王家に呪いをかけました。
『呪われてあれ、王家の娘よ
汝の命よ 呪われてあれ。』
『呪いを解くのは古き約束
果たされてこそ 未来へ繋がる』
とか何とかいう感じの呪いをかけて、彼女は身勝手を貫いて亡くなったのです。とんでもねぇ…いえ、失礼。
とんでもない方です。
普通、自業自得の逆恨みで自分の子孫に呪いなんてかけますか?
しかも王女限定。自分以外の王女が幸せになるなんて許せない!なんていうあれでしょうか。
やっぱりとんでもねぇ。
でもそうでしょう?呪うなら普通、周りの人間だと思うのです。彼女はお世辞にも賢いとは言えない人物でした。
特にこんな自分勝手な人間ならば、自分を直接追い詰めた相手を狙うと思いませんか。
だからね、私は呪いをかけたのは王女ではないと思うのです。どうしてそう言いきるのかって?
「そんなの身に覚えがないー!!」
何故なら、私こそがかつてのとんでも暴虐王女セレスティアにして、現代のリーデンヴァルクの呪われし第一王女。
シルヴィア・リーデンヴァルクだからである。