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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第3幕 虹色の刀士と悪霊連合編
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慎重にエモノ狩る賢い猛禽類が、ある時モズのハヤニエを見かけてマネをしたらしい・・・狙うのはきっと。



 大きな空き地の中で、バイクのヘッドランプやテールランプが踊り狂っている。

 〔ブオォーーーンッ、ブオオオオーーンッ、ドドドドドッ〕

 大きな爆音と共に、若者達の笑い声が闇に響く。


「それでよっ、あいつの頭を後ろからバットでっ。」

「やばくねっ!」

「俺なんて、ブロックを顔面目掛けてよっ。」

「ぎゃはははっ。」

 バイクを楽しむというよりは、暴れる事を楽しんでいる若者達が思い想いの感情を言葉に変えて、意思疎通というよりはドラミングをしていた。


「・・・・・・。」

 そんな若者達のたまり場の入り口に裸足のOLが深い闇の中から姿をふらりと現した。


 〔ブォンッ、ブォンブォンッ、ブォーーーーッ〕

 OLの姿に気付いた一人がバイクにマタガリながらゆっくりと近付いていく。


「おいおい、姉ちゃんっ・・・こんな時間に一人で何しっ・・・ゴボッ?!」

 ストリートファッションに身を包んだ若者がバイクを降りて、OLにニヤニヤしながら近付いたのが運の尽きだった。若者は突然、首元に熱さを感じると、次に口に鉄の味が広がり、息が出来なくなり、首元に近づけた手が真っ赤に染まるのを見て、絶命して倒れた。


「オイッ、ショウッ!何してんだよっ・・・見ろよ、ショウが女の前で倒れてるぞっ!」

「ギャハハハハッ!」

 ショウといわれた若者の仲間達が暗闇で見えないのか、ショウの状況に気付かずにその様子を笑っている。


「それにしても、今日やけに肌寒くね?」

「・・・もう夏終わったんだべっ。」

 秋口のこの時期の話をする若者達。その肌寒さが、季節のものだと疑わない。


「・・・おいっ、待てよ・・・何持ってんだ・・・あいつ・・・。」

 OLが、ショウと言われた肉塊から若者達の輪の中に近付いていくと、一人の若者がOLが持っていてはおかしい物に気付き、それを仲間に知らせるように言葉をこぼす。


「・・・・・・。」

 OLはそのショウの血で染まった物をだらりと持ちながら黙って、歩いていく。


「てめぇーーーっ、なにしてっ・・・ゴボボッ?!」

 最初に気付いた若者がOLに向かって怒号を上げようとしたが、もう遅かった。


 OLは人間離れした素早い動きで、その場にいた若者達を次々と斬り捨てていく。一人も逃がさないように、ちゃんと順番を決めて狙っていく。



「ひっ、ひいぃーーーーーーーっ?!」

 20人近くいた仲間達が突然、永遠に動かない肉塊になった後、一人の若者がOLを見上げながら、声にならない声で悲鳴をあげる。



「・・・・・・。」

 OLはすっかり血まみれになった全身を若者に近づけながら、ニタニタと笑っている。


「こっ・・・殺さないでぇぇぇ~~~・・・。」

 若者は顔を体液でグチャグチャにして、OLに必死に懇願する。


「・・・・・・。」

 OLはゆっくりと脇差の刃を持ち、柄の方を若者に差し出す。


「えっ?・・・ええええっ・・・。」

 若者は訳も分からないこの状況に思考がついていかない。しかし、若者の右手が震えながら、それがごく自然な事のように、柄に伸びていく。



 〔ガシッ〕



「・・・うっ・・・。」

「・・・・・・・。」

 若者がOLから差し出された脇差の柄を握った瞬間、事態が急激に動き出す。


 若者が脇差を持ったまま、白目をムいて、ダランとしたまま静かに立ち上がる。OLは脇差から離れると腕と頭をダランと下げたまま立っている。


 〔グサッ〕

 若者が脇差を静かにOLの腹に納めていく。

 OLは脇差を腹に刺されると完全に若者にもたれ掛かった。


 〔ドサッ〕

 若者はもたれ掛かって来たOLの頭を左手で無造作に払いのけて、地面に生ゴミを捨てる。生ゴミは糸の切れた人形のように地面に倒れこみ、それ以上動く事はなかった。




「準備万端みたいですねっ。」

 空き地の入り口に曹兵衛が立って、脇差を持った若者に声をかけた。




「・・・・・・遅かったな・・・。」

 若者は曹兵衛の姿を確認すると、ニタリと微笑んでそれがさも当然かのように歓迎した。


「・・・釈然としませんね、そのセリフ・・・今際の際まで、慎重に慎重を重ねて身を隠して、こちらを煙に巻いておいて・・・やっと貴方の尻尾を見つけて、事前に貴方の狩場の周りに配置しておいたこっちの人員を丁寧に始末した上でそう言われると・・・。」

 曹兵衛はニコニコしながらも少しぎこちない微笑で若者にそう返す。


「・・・お前からなのか?」

 若者が脇差の刃を舐めながら、ぐるりと辺りを見回す。


 すると、そこには若者の周りをぐるりと囲んだ霊や人で溢れ返っていた。


「いえいえ、私はお邪魔はしませんよ・・・。」

 曹兵衛はそう言うと脇に移動して、後進に道を譲った。


「これはこれは、12人衆筆頭に道を譲って頂き、ありがたい・・・。」

 曹兵衛の後ろから現れたのは、他でもない秦右衛門だった。


「・・・金太・・・久しぶりだな・・・。」

 若者は秦右衛門にではなく、秦右衛門のさらに後ろに控えていた金太に声を掛ける。


「・・・闘々丸っ・・・。」

 金太は震える身体を抑えながら、必死に言葉をしぼり出す。


(・・・ほっ・・・ホントに『い組』の悪霊っ!?)

 金太の大きな体の後ろで身を縮めながら若者の姿を見て、同じく震えている乃華。




「おいおい、ウチの金太をあんまりいじめてくれるなよっ。」

 その声が秦右衛門の背後から聞こえてくると、秦右衛門、金太、乃華が脇に移動して、道を開ける。3人が道を譲った人物の姿が見えるや否や、




「菊の助ッ!!!!!!」

 若者が怒声を上げて、有無も言わさずに光陰の如く、その人物に飛び掛る。


 〔ガキンッ!〕

 若者は青年菊の助に斬りかかるも、菊の助の背後から現れた刀身を受けるために脇差を構え直して、鍔迫り合い(つばぜりあい)になる。


「会いたかったぞ、闘々丸っ!」

 善朗の口を借りて、大前が若者に大きな声をぶつける。


「だいぜんんんんんんんんんんっ・・・。」

 若者は白目を向いたまま、怒りに顔をゆがませて、知るはずのない大前の名を口にする。


「善朗っ・・・すまねぇが・・・たのむぜ・・・。」

 菊の助がまっすぐ善朗の背中を見ながらそう善朗に声を掛ける。


「・・・はいっ・・・。」

 善朗は若者と鍔迫り合いをしたまま、背中に向けられた言葉にしっかりと答えた。





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