表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第3幕 虹色の刀士と悪霊連合編
75/171

狸と狐の化かし合い。人と人との化かし合いよりもなんと尊いものか。



 廃墟の外で、秦右衛門達が子供のお使いのように悪霊に対処しているその時、

「・・・そちらはどうですか、武城さん?」

 曹兵衛がスマホで武城と連絡を取り合っていた。


「穏健派はけっこう連絡を取り合ってるみたいだな・・・だが、直接あいつらに接触してるようには見えない・・・あの坊主もスマホで穏健派の仲間と連絡は取ってるが、俺達から必要以上に離れたりはしてないね・・・。」

 武城が穏健派のメンバーと行動を共にしながら、その動向を曹兵衛に細かく伝えていた。


「なるほど・・・結構用心深いですね・・・でも、こちらの情報があちらにもれているのは確かです・・・。」

「あぁっ・・・きれいに大将を避けてるしな・・・。」

 曹兵衛と武城の口調が暗くなる。


 ここ3週間、悪霊連合の討伐で人と霊の連合軍が総出で、一般人に被害が出ないように除霊に動いていたのだが、どうにも腑に落ちないことがあった。それは、



 12人衆、特に曹兵衛を避けるように悪霊連合が動いている事だった。



 12人衆や曹兵衛は『い組』の悪霊である闘々丸と断凱にぶつかる様に、わざわざ部隊編成と配置をしていたのだが、どうにも不思議と交わされていた。それだけならまだしも、12人衆が編成されていない部隊が何部隊も壊滅、又は行方不明になっており、明らかに悪霊連合がこちらの動きを先読みして、12人衆を避ける動きをみせていたのだ。流石に、曹兵衛もそこまで動かれると、内通者の大体の目星がつくのだが、その人物は悪霊側と接触した形跡はなかった。


「どうする、大将・・・一旦、編成しなおすかい?」

 スマホの向こうで武城が曹兵衛に今後について尋ねた。


「・・・いえ、被害は見過ごせませんが、今動くのは得策ではありません・・・闘々丸の方がこちらに接触したがっているようなので・・・武城さんの方は断凱とお仲間さんが余り悪さをしないように警戒を強めて下さい。ゴウチにも、助力を頼んでおきます。」

 曹兵衛は今の状況を鑑みて、武城にそう告げた。


「あいよっ・・・あの坊主からは目を離さないようにはしとくわ・・・。」

 武城はそう曹兵衛に答えると通話を切った。



 曹兵衛がスマホで武城と通話を済ませた丁度その時、

「お話中でしたか?」

 お使いを終えた秦右衛門達が廃墟の中に入ってきて、曹兵衛に声を掛けた。



「・・・あぁっ、お気になさらずに・・・今、終わった所です・・・。」

 曹兵衛は秦右衛門にそう答える中で、廃墟の出入り口付近で、誰かと通話しているサユミの姿を見逃さなかった。


 秦右衛門は曹兵衛の視線を追っては見たが、

「・・・近くに居るのは確実でしょうが・・・まだ、直接会いたくないようですな・・・。」

 そのことには敢えて触れずに、悪霊達と戦って感じた事を素直に曹兵衛に話した。


「そうですか・・・ダイブ向こうの数も削ったと思いますから・・・そろそろ動き出すと思いますので・・・こちらもさらに気を引き締めましょうか。」

 曹兵衛はニコリと頬を緩めて、秦右衛門達に話す。


「これからどうするの?ここからたどれそう?」

 サユミが話の腰を折らないように少しズラしたタイミングで会話に入ってくる。


「・・・どうですか、乃華管理官?」

 サユミの問いに、曹兵衛は適切な人材に話を振った。


「えっ・・・あっ、はい・・・その・・・残留している霊力はあるのですが、そこからたどるような霊力はきれいに消していますね・・・どうやら、さっきの悪霊達の目印だったのでしょうか?・・・・・・ただ・・・。」

 乃華はいきなり話を振られて、戸惑うも、管理官としての見解を正直に話し、最後に言葉をとめる。


「ただ?」

 秦右衛門が乃華の不自然な言葉に、その言葉を復唱する。


「・・・ただ、遠くで、微かに似ている霊力がここから南東に移動したのを感じました。」

「金太っ!?」

 乃華が秦右衛門に尋ねられた事を少し自身の中で、考えてから慎重に出すように言葉を発すると、その言葉に秦右衛門が目をぎらつかせて、即座に動いた。


「あっ、秦右衛門さんっ、待ってくださいっ!」

 曹兵衛が一瞬反応を遅く、秦右衛門が金太と一緒に即座に廃墟から出て行く姿を手で制止しようとするも、その手をする抜けていくのに、顔を歪める。


「ちょっ、ちょっとっ!」

 サユミは自分を寸前で交わしていく秦右衛門に驚く。


 曹兵衛は反応が遅れた自分と不用意に乃華に意見を求めた事に苛立ちながらも即座に立て直す。

「あぁ~~もうっ・・・サユミさんとヒヒロさんは引き続き、冥さんを頼みますっ!乃華さん、すいませんっ!」」

「キャッ?!」

「えっ、ちょっと!?」

 曹兵衛は右手から細い糸を飛ばして、乃華をぐるぐる巻きにして、廃墟を出て行った二人を素早く追いかける。走り去る際に、その場にいたサユミとヒヒロに指示をして、あっという間に出て行った。余りの速さにサユミは言葉をかけるまもなかった。





「お二人とも、危険ですっ!お待ち下さいっ!!」

 曹兵衛は廃墟から飛んで出て、廃墟から南下して行く秦右衛門達に向かって叫ぶ。




「・・・・・・。」

 秦右衛門は廃墟から南下した少し離れた高い木の上でキョロキョロと当たりを必死に見回している。


「・・・・・・。」

 金太も秦右衛門と距離を取って、木の上に立ち、当たりを見回す。


「秦右衛門さん・・・貴方達の思いも分かりますが、今はチームとして動いて頂かないと・・・。」

 曹兵衛が秦右衛門の隣にさっと立って、秦右衛門に向かって注意した。


「・・・申し訳ない・・・殿からの勅命ともあってね・・・。」

 秦右衛門はそういいつつも、曹兵衛の方には一切目を移さずに、辺りを未だに見回していた。


 急展開が収まった頃を見計らって、曹兵衛の腕の中にいた乃華が

「あっ・・・あのっ・・・。」

 恥ずかしそうに上目遣いで曹兵衛を見る。


「あぁっ・・・これはこれは、申し訳ありません・・・索敵が優秀な方は連れて行かないと・・・と思いまして・・・。」

 曹兵衛はそう言いつつ、乃華をぐるぐる巻きにしていた糸をあっという間に裾の中に吸い込み、乃華を丁寧に下ろした。


「・・・どうだい、乃華ちゃん・・・霊力は感じるかい?」

 秦右衛門がやっと乃華の方に視線を移して、乃華に尋ねた。


「・・・霊力の痕跡を散らしながら、移動していて微かにしか追えませんが・・・。」

 乃華はキョロキョロしながらも目標を捉えているかのようにゆっくりと移動する。


「・・・・・・。」

 秦右衛門達は静かに乃華の後を追う。


 しばらく飛んでいくと、乃華は立ち止まる。

「ここらへんで、完全に消えています・・・たぶん・・・向かった先はあの街だと思いますが・・・。」

 乃華は空から遠くに見える街を指差して、そう秦右衛門達に話した。



 乃華が指差した先には、山間を抜けて、盆地になって広がる少し大きな街があった。



「あっ、ギキョウですか・・・大至急、部隊を動かしてほしいのですが・・・。」

 目星がついたのを見計らって、曹兵衛が透かさず、スマホで連合の本部にいるギキョウに連絡を取って指示を出し始める。


「乃華ちゃん、さすが管理官だねっ。」

 秦右衛門が乃華の肩を右手でガッシリと掴んで讃える。


「えっ・・・そっ、そうですかっ・・・お役に立てたみたいでよかったです・・・。」

 頭をかきつつ、テレながら秦右衛門に言葉を返す乃華。


「この街のどこかってことしか分からないのか?」

 金太がお腹を擦りながら乃華に尋ねる。


「・・・そうですね・・・街の方角に続いていただけかもしれませんし・・・。」

 乃華が辺りを一通り見回して、そう話す。


「・・・いや、きっとここで間違いないよ・・・殿に連絡しよう・・・。」

 秦右衛門は目はぎらつかせながらもニヤリと笑って、スマホを取り出した。




 囲い罠に入ったのは、エモノか・・・それとも・・・。

 

 入ったのか、誘われたのか・・・。






お手数でなければ、創作の励みになりますので

ブックマーク登録、いいね、評価等よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ