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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第3幕 虹色の刀士と悪霊連合編
73/171

許可なく廃墟に入ってはいけません!そこにいるのが霊なら、まだ救われている方です・・・か?

 




 〔ざわざわっ、ガヤガヤっ〕

 ある空間に人と霊がスシ詰め状態のように集まっている。


 ここは現世の救霊会の本部の地下施設に広がる広大なロビーのような場所。あるビルのボイラー室の隠し部屋にあるエレベーターから地下に降り、最初に足を踏み入れる場所。そこに日本中から今、名立たる霊能力者やその式霊の他に、フリーでも霊界でそこそこ名の通った霊も集められていた。


「ここの飯は質素でいかん・・・量も少ないな・・・。」

 小皿に大盛りの料理を盛り付けて、バクバクと食べながら金太が嘆いている。


「まぁ、料理もお酒もお飾りみたいなもんだ・・・それが目的じゃないからね・・・。」

 金太の隣で通い徳利で、自分で用意したお酒をいつものように楽しんでいるのは秦右衛門。


 そんな二人を横目で見ていた冥がイライラしている。

「・・・二人とも、もっと真面目に話を聞いてくださいよっ!」

 冥がだらしない態度で居る二人をしかりつけるように小声で怒鳴る。


「まぁまぁ、冥ちゃん・・・善朗君が居ない寂しさを俺達で紛らわさないで、落ち着いて・・・。」

「紛らわしてませんっ!」

 冥の怒りを巧みにはぐらかす秦右衛門に、つい大声で反論してしまう冥。


 3人の隣に偶然来てしまった年配の霊能力者が冥を含めて、ジロリと睨む。

「んっ!」

 隣で真面目に話を聞いていたその霊能力者が我慢できずに咳払いをする。


「・・・すっ、すいません・・・。」

 なぜか一人謝る冥。





「みなさん、お静かにっ・・・只今より、大江戸12人衆筆頭、曹兵衛様より、今回の作戦の説明がございますっ・・・お集まりの皆様は事前に配られた資料を手に取り、ご確認下さいっ!」

 空間の一番奥の下座に用意された立派な机に置かれたマイクを使って、事務員風のメガネをかけた女性が説明に現れた。




 その後、女性は足早にその場を離れると、入れ替わるようにして、曹兵衛が中央の立派な机の前に現れる。


「皆さん、この度はお集まり頂き、ありがとうございます。先ほど、紹介された曹兵衛です。この度は、皆様方に悪霊連合討伐にあたり、チーム編成と行動についての説明を致します・・・。」

 曹兵衛は丁寧な挨拶の後、今回の作戦についての説明を始める。


「いやいや、曹兵衛君・・・見違えるほどえらくなったねぇ~・・・。」

 曹兵衛の大勢の前できちんと説明する姿に涙目になりながら秦右衛門が曹兵衛を褒める。


「もぐもご・・・初めて会った時は、善朗みたいにオドオドしてたんだがなっ。」

 金太も秦右衛門に続き、曹兵衛について語り出す。


「あの・・・お二人とも、話し聞いてます?」

 資料も見ずに、昔話ばかりしている二人に冥が今度は不安になってくる。


「僕達は、どうせ事前に決まってる動きがあるからね・・・ここに参加してるのだって、形だけなもんだから・・・。」

 相変わらずお酒をたしなみながら秦右衛門がニヤニヤして話す。


「んんっ!」

「うっ・・・ごめんなさい。」

 不真面目な二人の霊の飼い主?として、冥が年配の霊能力者に圧力を受ける。


「僕達はお邪魔みたいだし、向こうに行こうか?」

「へっ?」

 秦右衛門が周囲を気遣って場所を変えようとして、冥の腕を掴んで促す。その誘いに、冥は驚きを隠せない。


 冥の袖を引っ張る秦右衛門に続いて、金太も口を開く。

「何してんだ?お前は善朗の契約者だろ・・・一緒に動くに決まってるだろ?」

 皿の料理をすっかり平らげた金太が皿を指の上で回しつつ、驚く冥に当然とばかりにそう話す。


「僕達には僕達のやらなければならないことがあるんだよ・・・善朗の契約者として、冥ちゃんも一心同体なわけ。」

 秦右衛門がウィンクしながら再度促した。


「・・・わっ、わかりました・・・。」

 冥は状況についていけずに困惑するも、まずは秦右衛門達に従う事にした。


 冥は善朗が修行で動けない以上、また身の入らない雑用係に配属させられるとばかり思っていたのだが、どうやら冥の知らない事情が裏で動いている事に内心、ウキウキしていた。








 大勢の人と霊がひしめくロビーを離れて、冥達は個室に移動する。

 冥が個室の扉を開けて、中には入ると、


 冥の姿を見て、猪の一番に驚く男性がいた。

「んっ、冥じゃないか・・・なぜ?・・・あっ、まさかっ?!」

 部屋に入ってきた冥を見て、部屋の中に既に居た空柾が驚いて何かを察する。


「鼓條兄妹の共同戦線ってことですかぁ~・・・いいですねぇ~・・・。」

 秦右衛門がニヤニヤしながら、誰かに向けるとも知れず、言葉を発する。


「秦君、どういうことなの?」

 空柾の隣に居た空柾の式霊であるヒヒロが秦右衛門に近付いて、事情を尋ねる。


「いやはや、兄の妹を思う愛を思っての行動をトガめる気は無いんですがね・・・お兄さんの手回しを更に回してあげただけなんですよぉ~・・・。」

 秦右衛門が空柾を見つつ、ヒヒロに説明する。


「空柾の判断は、家族を思っての行動だ・・・闘々丸の事を知らない以上、責められん・・・こちらの事情で妹さんを巻き込んでいる形だからな・・・。」

 金太が部屋に入るなり、食べ物を物色しながら話す。


「・・・・・・。」

 空柾は自分のしていた行為を見透かされて、無言で目線を下に向け、目を泳がせる。


「空柾君、さっきも言ったとおり、君の行動は正しいから責めてないよ・・・闘々丸について、説明してなかったこちらの落ち度だからね・・・。」

 秦右衛門がバツの悪そうな空柾をフォローする。


「・・・どういうことだ、秦右衛門・・・我々にも分かる様に説明してくれ・・・。」

 部屋のソファーに座っていたノムラが秦右衛門に尋ねる。


 ノムラに尋ねられた秦右衛門が酒を一口飲むと話し始める。

「ここに集まってる皆は、曹兵衛君に説明されていた通り、妖刀闘々丸を除霊するためのチームであってるよ・・・ただね、闘々丸の狙いがウチの善朗君ってことは聞いてる?」

 秦右衛門が部屋にいる面々をぐるりと見ながら反応を確認する。


「・・・・・・。」

 部屋にいる面々は静かに秦右衛門を見ているだけだった。


「たぶん、チームリーダーの曹兵衛君が来てから僕より詳しく丁寧に話してくれると思うんだけど・・・善朗君がターゲットである以上、善朗君の契約者である冥ちゃんはまっさきに狙われるからね・・・エサとして・・・。」

 秦右衛門の顔はニコニコしているが、その瞳の奥がどす黒く光るのを一部の人間は感じ取る。


「なるほどですね・・・事情を知らないお兄さんは妹を危険から遠ざけようとしたけど、それは返って危険だから処置したって事ですねっ。」

 そう話すのは、ノムラと一緒にソファーに座っていたジャージを来た茶髪で短髪の青年だった。



 その男の名は「ゴウ」。

 表向きの職業は体育教師で、いつもニコニコしている。ジャージで隠れていて中肉中背見えるが、バランス良く鍛え抜かれた身体で、弓使いのノムラと共に、多くの悪霊を除霊してきた救霊会ナンバー3の凄腕の霊能力者だ。



「あら、いつもみたいに女の子を手当たり次第ナンパしてたかと思ったけど、真面目な理由だなんて珍しいっ。」

 部屋の真ん中で仁王立ちして、秦右衛門をいつも通りの看護士姿で見ているサユミが皮肉る。


「サユミちゃんひどいな~・・・久々に会ったのにその言い方・・・。」

 秦右衛門はサユミの皮肉に苦笑いを返す。


「おかしいと思ったんですよね・・・闘々丸っていう悪霊は刀でしょ?近接だから、弓使いのノムラさんや銃使いのサユミさんがいるのは分かるとして・・・ナンバー4のアキちゃんとヒヒロさんコンビに貴方達・・・そして、12人衆筆頭の曹兵衛さん・・・い組とはいえ、警戒しすぎだし・・・数名は冥ちゃんの護衛ですか?」

 秦右衛門の説明を聞いて、ゴウが淡々と状況を自分なりに整理していく。


「ご名答・・・流石は救霊会の凄腕だけあるね・・・僕達は・・・。」

 秦右衛門がゴウの推測を聞いて、感心しながら、そこまで話すと、


 〔ガチャッ〕

 秦右衛門達の扉とは別方向に設置してあった下座の方の扉が開く。




「お待たせしました・・・いやはや、まとめ役と言うのはいつも忙しいもので・・・あれ、どうかされましたか?」

 曹兵衛が軽く会釈をしながら、部屋に入ってくる。どうやら、ロビーでしていた大集会を終えたようだった。が、何やら少し張りつめた部屋の雰囲気に驚いて、その事について尋ねた。




「ご苦労様ですっ。」

 曹兵衛の姿を確認するや否や、ゴウと空柾がきちんと背筋を伸ばして直立になり、曹兵衛に対して、深々と頭を下げた。


「あぁっ、丁寧な挨拶は・・・必要ないと言っても・・・しょうがないですね・・・どうやら、話がすすでいるようですが・・・秦右衛門さん・・・どこまで?」

 丁寧に頭を下げる空柾達に答えた後、曹兵衛が雰囲気を察して、秦右衛門に尋ねる。


「メンバー構成と、冥ちゃんの護衛に関してまでですよ。」

 秦右衛門がニコニコと笑顔を曹兵衛に返す。


「そうですか・・・それは話が早くて助かります・・・察しの良い方は分かるかもしれませんが、このメンバーは闘々丸討伐というよりも捜索に重きを置いています・・・ご存知の通り、闘々丸は、い組の化け物です。どれほどの実力があるかは計りかねます・・・ですから、捜索しながらも、冥さんをガードしつつというのが我々の任務です。菊の助さんのワガママというのもありますが、敵を知っている菊の助さんの言葉を無視するわけにもいきませんので・・・。」

 曹兵衛が部屋に用意されている机に向かいながら歩きつつ、面々の顔を見て、ちゃんと説明していく。


「闘々丸について、人員が多いと感じている方もいるでしょうが、い組の悪霊についての備えは出来る限り、多いに越した事はありません。《断凱(だんがい)》という化け物もいる以上、そちらの討伐チームとの連携もしますので・・・ここまでで、ご質問はありますか?」

 曹兵衛が机に座って、面々の顔を再度確認しつつ、尋ねる。


「情報は何処まで?」

 秦右衛門が単刀直入に曹兵衛に尋ねる。


「・・・正直、闘々丸と断凱については掴めていません・・・どうにも、あちらの手駒が散らしている様で・・・それにともない悪霊達の動きが活発なっています・・・密かに動いてはいると思いますが・・・。」

 曹兵衛が真剣な表情で、正直に秦右衛門に答える。


 すると、空柾が手に資料の束を持って、曹兵衛の机に静かに近付き、資料を机の上に置いた。

「闘々丸は妖刀と伺っておりましたので・・・悪霊の殺人事件と思われる中で、刃物によるモノをまとめておきました。」

 空柾は深々と曹兵衛に頭を下げて、自分の行動について説明する。


「これはこれは・・・ギキョウに聞いていた通り、優秀な方で助かります・・・まずは、空柾さんが集めてくれた資料を見ながらシラミ潰しと行きましょう・・・冥さん、貴方の安全は私が保証しますので、貴方も安心して力を発揮して下さいっ。」

 曹兵衛は空柾の行為を素直に賞賛して、部屋の隅で、借りてきた猫のように縮こまっている冥を気遣うように声を掛けた。


「はっ、はっ、はいっ!」

 冥は曹兵衛に声をかけられると直立不動で固まって、お辞儀を忘れ、元気よく挨拶した。


 冥と関係がそれなりになるものはその様子を微笑ましく見て、そうでないものはどこか不安げな様子だった。









「えぇっ、『Year!tube』をご覧下さいっ!こちらの廃墟はかの有名な場所○○です!」

 一人のストリート風の服装の男性がもう一人の男性が持つカメラに笑顔を向けながら声を張り上げている。


 男性二人組の周りは光の全くない夜の闇が広がり、ウッソウとした茂みに囲まれており、ストリート風の服装の男性の後ろには朽ち果てた廃墟がある。どうやら、心霊スポットの動画の撮影で訪れているのだろう。


 そんな二人が廃墟を撮影していると、


「んっ・・・誰あれ?」

 カメラを持っていた男性がストリート風の服装の男性の後ろに写る女性の人影に気付く。


「えっ・・・何?・・・おっ・・・・・・えっ・・・。」

 ストリート風の服装の男性がカメラマンの男性の声に誘導されるように振り替えるとそこにはOL姿の女性が立っていたのだが、そのボロボロの服装に目がいくや否や、腹部に熱いモノを感じる。




「ああああああああああああああああああああっ!!」

 ストリート風の服装の男性が、自分の腹部に目をやると何かの刃物が自分の腹部に深々と刺さっているのに気付き、悲鳴を上げる。




 〔ザシュッ!スパッ〕

 ストリート風の服装の男性が悲鳴を上げると、女性は内部で刃物をひねり、左腹部から右胸に肋骨の存在を無視するかのようにきれいに切り裂く。その後、素早く悲鳴を上げるその喉元を一文字に刃物を流した。


「ゴボッ、ゴボボッ・・・。」

 ストリート風の服装の男性は斬られた首から吹き上がる血により、声を失い、首から飛び出る鮮血で染まる両手を凝視しながら絶命し、地面へと崩れる。


「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!!」

 カメラマンの男性がその光景を見て、カメラを捨てて、悲鳴を上げながら、その場から逃げようとするが、


 その後ろから、口が裂けるほどに口角を上げる白目の女性が血に染まった脇差を右手に握り、その脇差を振り上げながら人間とは思えない跳躍力で一気に距離を詰める。




「待っていろ、大前・・・もうすぐだ・・・。」

 女性は静かに自分の口を動かして、言葉を発する。




 その足元には、右肩から左わき腹をきれいに切られて、両断された血の海に沈む男性だった肉塊が横たわっていた。









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