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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第3幕 虹色の刀士と悪霊連合編
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ヒーロー大集結だ!ついでに、世界観の違うヒーローも連れて来い!オラ、わくわくすっぞ!



 悪霊達が暴れまわる現世を尻目に、未だに平和な霊界の中心地、ネオ大江戸五重の塔の最上階の一室に12人の霊が集まっていた。部屋に置かれた円卓に添えられた12の椅子に、それぞれ一人一人座って、お互いの出方を伺っている。




「これはこれは、辰区裏番佐乃殿・・・12人衆『虹色の刀士』菊の助殿ではなく、あなたがそこに座っている理由をお聞きしても?」

 黒いライダージャケットが目印の寅区筆頭の武城は、目を閉じて、腕組みをし、本来ならば、菊の助が座っている席に代わりに黙って、座っている佐乃に向かって話しかける。


「菊の助殿の代理人が参加するとは、我々は聞いておりませんが?」

 武城に続いて口を開いたのはもちろん、武城と仲のいい丑区筆頭のノムラだった。


「・・・・・・菊の助は恐れをなして、私に席を譲ってね・・・私も渋々なんだが、あいつとも腐れ縁だ・・・しょうがないから、ここにきたのさ・・・これで満足かい?」

 佐乃はゆっくりと目を開いて、武城達を睨み、答える。



「二人とも、今はそこまでにして置いて下さい・・・話が進まなくなります。」

 仲裁に入ったのは、子区筆頭の『真孔しんこう 曹兵衛そうべえ』という男だった。



 曹兵衛は青いストレートのロングヘアをさらりと腰まで流している細身の男で、着物もきっちりと着こなしている。全体的に整えられた立ち姿に清潔感が前面に押し出されて、笑顔が輝かしく見えるような、俗に言う優男のような外見だった。


「へいへい、12人衆筆頭のお言葉とあらば・・・。」

 武城が曹兵衛の言葉に観念して、佐乃から視線を外して、手を頭の後ろで組み、身体を椅子の背もたれに預ける。


「もうしわけないね・・・連絡が無かったのは謝るよ・・・邪魔をするつもりは無いから話をすすめておくれ・・・力不足と言うなら、試してもらってもいい・・・。」

 佐乃が武城に続いて、曹兵衛に謝罪はするも、腕組みをしながら挑戦的にニヤリと笑う。


「・・・・・・。」

 他の12人衆は佐乃の言葉に何の反応もしない。佐乃がここにいることに同意した表れだった。


「・・・それでは、佐乃さんを菊の助さんの代理としてお認めして、議題の方に移りましょう。」

 曹兵衛は皆、異論がない様なので、佐乃を菊の助の代理として認め、席について、置かれていた資料をめくっていく。




 曹兵衛が席について、資料に目を通していると、隣の席に座っていた大柄の男がおもむろに立ち上がり、資料を読みながら話し出す。


「今回、我々の議題に上がっているのは、悪霊連合の活発な活動による、現世の被害の拡大の抑止と霊界にも影響を及ぼす前に、対応しようと言うものであります。」

 曹兵衛の隣で、会議を進めていく男は、金太よりも大きく、筋骨隆々の男だが、しゃべり方も丁寧で、言葉の端々に知性を感じさせる。外見からはとても想像できない人物だった。




 その巨漢の名はゴウチ。

 亥区筆頭の男で、40代ぐらいの男に見えるが、実際は20代。服装は足軽のような軽装の甲冑に身を包み、頭にはターバンのように布を巻きつけている。そこから後ろに背中の方まで黒い髪を流して、ちゃんと手入れされているのか、曹兵衛に負けないぐらいのキューティクル感がある。目は細めで、いつもにこにこしているので、瞳を見た事がある者は少ない。


 ゴウチは淡々と資料をめくって、話を進めていく。

「そのために今回は、現世において、討伐隊を結成し、霊能力団体『救霊会』との連携を取りまとめたいと思います。それにつきまして、12人衆筆頭曹兵衛殿と数名を選抜する事も議題の一つとなります。」

 ゴウチはそこまでいうと静かに席について、ニコリと笑った。


「ゴウチありがとう・・・皆の耳にはすでに入っていると思うが、悪霊連合の動きが活発化したことにより、少なからず、フリーパスなどで霊界から現世に行った者の中にも犠牲者が出始めている。霊界に過ごす全ての霊が安心して、現世との行き来を出来るように我々は動かなければならない。悪霊連合の規模は、我々の想定をはるかに凌ぐ数に膨れ上がっている。このことから、我々だけで対処するのは余りにも危険が大きいと言う事で、現世の人間達にも協力してもらおうと思う・・・何かここまでで質問がある人はいますか?」

 曹兵衛が資料に目を通しつつ、12人衆の顔をそれぞれ見ながら、丁寧に説明していく。



 曹兵衛が質問が無いか出席者に尋ねると、スッと一人の男が手を上げた。

「・・・・・・。」

「・・・はい、武城さん・・・。」

 曹兵衛は少し間を取った後、武城に発言権を与えた。



「・・・今回の悪霊連合のタガが外れたきっかけは辰区にあると聞いてるが・・・それについての説明はいいのかい?・・・ここにいる全員が協力的ではないのは筆頭も知ってるだろう・・・。」

 武城は背もたれに身体を預けたまま、目を閉じた状態で曹兵衛に意見する。


「ヒソヒソヒソヒソ・・・。」

「ヒソヒソヒソッ・・・。」

 円卓のそこかしこで、隣同士の人間が小声で意見交換をしている。


「それはっ。」

「筆頭・・・ここはあたしがっ。」

 曹兵衛が武城に話そうとしたとき、佐乃がおもむろに立ち上がり、武城を見た。


「たしかにそもそもの原因は辰区管轄内で、悪霊ろ組の縄破螺を除霊したことがきっかけだ・・・でもね、その理由も武城さんはご存知なんじゃないのかい?」

 佐乃が円卓に両手をついて、前のめりで武城に対して話す。


「・・・・・・。」

 武城は目を開けて、佐乃を見ているだけだった。


「佐乃さん、座ってください・・・あなたが前に出るとややこしくなりますので・・・。」

 曹兵衛が優しい笑顔なれど、目の奥を光らせて、武城と佐乃を見て、佐乃に着席するように促した。


「・・・悪かったね・・・。」

 佐乃は曹兵衛に謝罪して、再び静かに席についた。


「武城さん・・・確かにそもそもの原因は貴方の言ったとおり、辰区管轄内で起こった悪霊との小競り合いが発端かもしれません・・・が、そもそも、縄破螺が除霊されたのは、辰区関係者の親族の子供がとり殺されるのを防ぐためだったと報告書には書かれております。正直に言いますと、私はルールを重んじる方ではありますが、ルールだからといって、目の前で助けられる小さな命を、自分達の都合で見過ごすような事は・・・私は許しませんっ。」

 曹兵衛が淡々と武城に事の経緯を話していき、最後に語尾を強めると、曹兵衛は優しい柔らかな表情のままだったが、その場の空気が凍て付く様にピリつかせた。


「・・・・・・。」

 武城は曹兵衛をジッと見て黙っている。


「私としては、辰区の関係者に責任はないと考えております。むしろ、これまで、そのような事を許していた私達全員の責任だと思っております・・・私としても、えらそうな事を言いましたが、自分の管轄外ということで、動かなかった事を今では恥じております・・・。」

 そこまでいうと曹兵衛は円卓に両肘をついて、手を組み、その上にあごを乗せて、目を閉じた。


「・・・・・・。」

 一時の沈黙がその場を支配する。




 皆が納得したと認識したゴウチが沈黙を破る。

「・・・それでは、議題をすすめます。まず、現世に赴き、救霊会との階段に曹兵衛殿と共に参加していただく方は・・・まず、自薦を求めます。」

 ゴウチはそこまでいうと全員をぐるりと見て、様子を伺った。




「・・・・・・。」

 全員が何も動かず、沈黙が再び流れる。

 その様子を見て、ゴウチが曹兵衛の方に視線を送り、うなずく。曹兵衛はゴウチのうなずきに黙ってうなずきで返して、口を開く。


「それでは、こちらが事前に決めておいた者の名を呼びますので、その方はこの後、私と一緒に現世に来ていただきます・・・その際は特別にフリーパスを用意しますので、式霊ではなくても、その点は安心して頂きたい。」

 曹兵衛はそう言って、資料に書いてある名前を読み上げていく。


 その後も細々とした霊界に関する議題の説明と採決が数時間続き、12人衆の集会は終わった。








「ん~~~~っ、かったるいなぁ~~~。」

 佐乃が集会の終わりの後、出入り口に向かって歩いていると、佐乃の横で背伸びをしながらそう呟く女性がいた。


「・・・あたしらの仕事はこれからだよ。」

 佐乃はその女性に対して、微笑んでそう話す。


「そうだよねぇ~、いやんなっちゃうなぁ~・・・佐乃さん?だっけ、あの菊の助の代理なんだから相当強いんだろうね・・・霊界では女も男も無いから、その点は過ごし易くていいよねっ。」

 女性は後ろで両手を組んで、にこやかに佐乃と会話を楽しむ。


 この女性は酉区筆頭、名を『天凪あまなぎ ゆう』。

 短いボーイッシュの赤い髪が特徴的で、生前にしていた事が忍なのか、全体的に布の面積が少ない印象が強い。スタイルは胸は程よく大きく、全体的に流れるように整えられている。足はお尻から太ももにかけて、網目状の黒いタイツが覆い、ボディラインを惜し気もなく、前面に押し出している。相当自分に自信がないと出来ない格好だ。



「佐乃ちゃん、一緒に行けるみたいでよかったわ。」

 佐乃が天凪と話していると、後ろからヒヒロが入ってきた。



「ヒヒロ様とご一緒できて光栄です。」

 佐乃はヒヒロの方に身体をきちんと向けて、深めのお辞儀をした。


「まぁ、あのノムラも一緒なのが減点だけどねぇ~・・・。」

 腕組みをして、ジト目でノムラの方を見る天凪。


「お三方、一応仕事ですので、浮かれるのも程々にお願いしますね。」

 少し離れた所を歩いていた曹兵衛が柔らかい笑顔で佐乃、特に天凪に釘を刺した。


「はいは~~いっ。」

 天凪が右手を大きく上げて、先生に対して元気に返事をする。


「ヒソヒソヒソヒソ。」

 曹兵衛が天凪に軽く手を振って答えた後に、ノムラが曹兵衛に近付いて、佐乃達の方をチラチラ見ながら小さな声で話をし出した。


「いやぁ~ねぇ~・・・ああいうちっちゃい男は・・・。」

 ノムラの様子を見て、天凪が渋い顔をしながら、少し身を引く。


「ノムラちゃんもあれで武城ちゃんとの間で大変なのよぉ。」

 ヒヒロがニコニコしながらノムラについてフォローした。




「・・・・・・。」

 佐乃や曹兵衛の様子を伺うように距離を取って、後ろから武城と数名が黙ってゆっくり歩いている。




 武城の周りに居るのが、いわゆる、穏健派といわれる面々のようで、武城はそちら側にあえて身を置いていた。武城とノムラの後ろには、ゴウチが、そして、曹兵衛がいる。穏健派の動きが怪しい事から、曹兵衛とゴウチが武城たちを使って探らそうと種を撒いた結果だった。


 あえて、武城が佐乃を挑発したのも、穏健派に潜り込む為の予め指示された動きだった。佐乃やヒヒロ達にはまったくしらされていない・・・水面下の大人のつばぜり合いは静かに進行する。12人衆は霊界や現世においての最高戦力といっても過言ではないが、一枚岩に成り切れない組織としての大きさがカセとなっていた。これはその現状の苦肉の対応策といえる。






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