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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
幕間2 JK霊能力者 冥
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恋も仕事も、趣味すらも、ライバルとしては抜け駆けは許されない!そんな気持ちで向かってくる友・・・キモくなっ・・・あっ、エモくない?

 

「ずっこいわ~~~・・・。」

「・・・・・・。」

 佐乃道場の廊下、善朗の真後ろに朝からぴったりと張り付いて、同じような台詞を延々と吐く賢太。善朗は身を縮めて、スルーするしかなかった。



「善朗君はぁ~、あれだけ約束したのにぃ~、友達の約束破るんやねぇ~~・・・。」

 賢太がこれ見よがしに肩を落として、ジト目で善朗を見る。


(・・・俺達、どこらへんから友達になったんだろう・・・。)

 善朗はさすがに苦笑いだけして、賢太に答える。


「俺は信じとったよぉ~~・・・善朗君はぁ~~、抜け駆けなんてしないぃ~、立派な男やぁ~~、てぇ~~~っ・・・。」

(しつこい。)

 肩を落としたまま、絶望を顔前面に出して、賢太が善朗にこれでもかと見せ付ける。

 善朗はわざと顔を背けて、心の中で呆れる。


 賢太はこの間、善朗がまたしても、式霊として、単独で事件(学校の怪異)を解決した事が気に食わなかった。あれだけ、連れて行けとたのんで(脅して)いたのに、まんまと置いていかれたのをずっと根に持っていたのだ。賢太は、一ヶ月に一回のフリーパスも大事に取っていたので、根はさらに深かった。



「なにしてんだい、あんた達は朝っぱらからっ!」

 善朗達の様子を見た佐乃が呆れながら善朗達に強い口調で声をかける。



「しっしょうっ!聞いてくださいよッ!善朗君がぉ~、男の約束破ったんですぅ~っ・・・。」

 賢太がいち早く佐乃に駆け寄り、涙一杯に偽装した瞳を佐乃に近づけて、善朗の非道?を訴える。


 〔ポカッ〕

「アイテッ!」

「たくっ、気持ち悪いんだよっ、あんたが男だなんだ、言えた義理かいっ。」

 佐乃は近付いてきた賢太の頭を容赦なく拳骨制裁して、追撃の拳を振り上げている。


「なにするんやっ、師匠っ!俺はちゃんと約束してたんやでっ!」

 突然の佐乃の拳骨制裁に断固として抗議する賢太。


 〔ゴスッ〕

「アタッ!」

「約束だなんだという前に、あんた、イチンチジュウ善朗の尻をおいかけるつもりかいっ!」

 引き下がらない賢太についに佐乃の鉄拳制裁が下る。


「くぅ~~~・・・不当判決やっ!俺は断固抗議するっ!」

 賢太は佐乃から善朗に視線を移して、にらみつけた。


「わわわっ、わかりましたわかりました・・・今度は必ず連れて行きますから・・・。」

 善朗は賢太の鬼気迫る視線に両手を前に出して、落ち着くようにジェスチャーした。


「・・・はぁ~~っ・・・善朗すまないね・・・一回で気が済むと思うからつれてってやってくれ・・・。」

 佐乃は賢太の諦めの悪さに根を上げて、両手を腰に当てて、呆れて肩を落としてため息をついた。


「俺は、一回ぐらいじゃっ・・・?!」

「っ!」

 賢太が懲りずに前に出ようと試みたのを佐乃が拳を振り上げて威嚇した。

 賢太は佐乃の振り上げた拳に身を縮めて、頭を両腕でガードすることに集中した。





「・・・というわけって・・・どういうわけよ・・・。」

 善朗を呼び出したはいいが、その後ろに、やたらニコニコしているヤンキーを見て、冥が呆れている。




「お兄ちゃんっ、元気してたっ?」

 冥の横には久しぶりの善朗に会って、ご機嫌な美々子ちゃんが笑顔で善朗達を迎えてくれた。


「美々子ちゃんも元気そうで良かったよ・・・善文はどう?」

 善朗が美々子の笑顔に微笑を返して、中腰になり、美々子と視線の高さを合わせて尋ねる。


「善文君も元気になったよっ!今度、一緒に遊園地行くのっ!」

 美々子がランランと輝かせた瞳で元気一杯に善朗の問いに答えた。


(・・・やるな、弟よ・・・。)

 善朗はうんうんと美々子に笑顔で返答しながら、弟の行動力に感心した。


「ちょっとっ、善朗君っ!こっち放置したままにしないでよっ!」

 美々子とは対照的に怒った顔で善朗を見下ろす冥。


「・・・あぁ~~・・・こちらは・・・。」

「どうもぉ~、初めましてっ!雅嶺賢太言いますぅ~、善朗君とは霊界での無二の親友でぇ~、今回、霊能力者を紹介してくれるぅ~ゆうて、さすが、親友やな~って、おもおとりますぅ~っ。」

(えええええええええええええええ・・・。)

 善朗が冥に説明しようとしたら、賢太がそれに割って入って、強引に話を進めてきた。その強引なやり口に善朗はドン引きする。


「えっ?霊能力者って、賢太・・・さんは、式霊になりたいんですか?!」

 賢太の突然の要望に冥が驚きを隠せない。


「・・・・・・。」

 もはや、言いつくろっても、手遅れと判断した善朗がソーッと身を潜めて、その場を逃げようとする。が、

「ッ!?」〔キュピーーーンッ!〕

 冥のハンターアイはそんな善朗を逃がすわけも無く、あっという間に善朗は捕捉され、首根っこをつかまれた状態で、賢太と美々子から離れた物陰にダッシュで連れて行かれる。



「どういうことなのよっ!あんた、霊と契約を結ぶのが簡単じゃないって知ってるでしょっ!」

 冥が小声ではあるが、鬼の形相で善朗に顔を近付けて、言い訳を迫った。



「ちちちちちっ、違うんです・・・僕も不可抗力で・・・賢太さんがこっちで悪霊を倒して強くなりたいっていうから・・・知ってるんですよ・・・式霊になるのは難しいって・・・何度も説明したんです・・・納得してくれないんです・・・。」

 善朗が冥の怒りに滝のように涙を流して、精一杯の誠意ある言葉を並べる。




「賢太お兄ちゃんは、式霊になりたいの?」

 善朗達が美々子達から距離を取っている間に、美々子が賢太と距離と詰めようと話しかける。




「ん?・・・あぁっ・・・美々子ちゃんゆうんやったか・・・まぁ~っ・・・小さい子にはわからんやろうが・・・男のひけん事情っちゅぅやつや・・・。」

 賢太は小さい子と接するのが苦手なようで、美々子から一歩引いてから、頬を右手でかきながら、視線を空に向けて答えた。


「はいっ!」

「ッ?!・・・。」

 美々子との距離感に戸惑う賢太に、美々子が突然右手を突き出して、握手を求めた。その手を凝視して、賢太はどうしていいか困惑する。


(・・・なっ、なんやこの子は・・・不思議ちゃんゆうやつか?)

 賢太は美々子の差し出された右手と美々子のキラキラの笑顔を交互に見て、さらに困惑の深海へと落ちていく。


「うぅーっ!」

 美々子はなかなか握手してくれない賢太に少し頬を膨らませて、怒った顔でさらに右手を賢太の方へと突き出す。


(・・・めんどくさい子やのぉ~~・・・泣かれてもかなわんしな・・・。)

 美々子が目に涙を溜めそうになると、賢太は観念したのか、美々子の差し出された右手を自分の右手で掴んで軽く握手をした。


「えへへっ、賢ちゃんよろしくねっ!」

「あぁっ・・・はいはい、よろしゅうねぇ~・・・。」

 美々子は賢太が握手してくれた喜びで笑顔を取り戻し、爛漫の笑顔で喜びを表す。逆に賢太は腰が引けた状態で苦笑いしながら愛想を振りまく。






 その頃、霊界の辰区区役所では、

「乃華く~~んっ、新しい式霊契約が出来たみたいだよっ!」

 部長が部長室のドアを開けて、辰区の式霊管理官の乃華に情報を大きな声で伝える。



「えっ?・・・あっ、部長ありがとうございます・・・こちらでもかくにっ・・・っ。」

 部長の情報に乃華は自分の机から一度席を立ってお礼を伝え、席に座りなおして、自分のスマホでその情報を確認するが、その知らされた情報の内容に唖然とした。


「あれ?乃華ちゃん・・・どしたの?」

 乃華の隣の席の伊予がスマホの画面を見たまま固まっている乃華を見て、早弁をしながら乃華に尋ねる。


 声を掛けたものの、全然返答が無い乃華に対して、伊予は乃華の見ているスマホの画面を隣から覗き、

「ん?・・・美々子・・・へぇ~~、小学生で式霊ってすごいねぇ~。」

 完全に他人事の伊予が黙々と弁当を食べながら素直に感心している。


「・・・・・・。」

 全部の事情を知っている乃華は前途多難なこの状況に思考が完全に停止して、その日は仕事が全然出来なかったという。




「まったくっ・・・賢太さん、善朗君から事情は聞きましたけど、式霊っていうのはそう簡単にはなれないんです・・・霊も能力者側も命がけなんで・・・とりあえず、努力はしてみますけど、希望に応えられるかは正直分かりません。」

 こってりと善朗を絞りに絞った後、冥が美々子と握手をして、苦笑いしている賢太に丁寧に式霊の事を説明した。




「おっ・・・おぅ・・・まぁええわ、今回は取っ掛かりが出来ただけでも良しとしとく・・・。」

 冥の説明に渋々納得する賢太。


「すぅ~~っ、ほぉ~~っ・・・。」

 冥の後ろで様子を伺っていた善朗が賢太の態度を見て、大きなため息を吐いて、ホッとしていた。


「えへへへ~~・・・。」

 美々子は相変わらず、賢太を見ながら笑顔だ。


(なんや、この不思議ちゃんは・・・あんま関わりたくないタイプやのぉ~~・・・。)

 賢太は美々子の不思議な雰囲気に完全に身を引く。


 その後、今日依頼されていた簡単な仕事を粛々と処理して、善朗達は霊界へと帰って行った。




「おぅっ、賢太っ!式霊になれたみたいだね・・・善朗もそこまで世話してもらって悪かったね。」

 霊界の佐乃道場に帰ってきた善朗達二人をそう迎えたのは他でもない佐乃だった。




「・・・・・・。」

 なんのことだかさっぱり分からない善朗と賢太はお互いの顔と佐乃の顔を交互に見て、唖然としている。


「・・・・・・善朗さん・・・。」

 佐乃の後ろから活力の全く無い乃華がヌメリと現れて、白目ながら善朗の名前を呼ぶ。


「あれ?乃華さん、どうしたんですか?」

 いつもと全然違う乃華の様子に善朗が足早に近付いて乃華に声をかける。


「・・・・・・。」

 乃華は力なくカバンから今回の新たな式霊の資料を取り出して、力なく善朗に渡した。


「・・・・・・。」

 善朗は屍のような乃華から渡された資料に最初戸惑っていたが、恐る恐る受け取り、その内容を確認していく。


「なんやっ・・・俺の事が書いてるんか?・・・俺、いつ式霊になれたん・・・や・・・。」

 賢太が他人事のようにヒョウヒョウと善朗に近付き、善朗の肩にもたれ掛って、善朗が見ている資料を賢太自身も見てみると。


「えっ?」

 賢太は、資料に記されていた人物の写真を見て、目を丸くした。


 その資料の写真には、デカデカとあの不思議ちゃんと揶揄して、どこか一線を置こうとしていた美々子の笑顔と自分の写真が掲載されていたのだ。



「なんでやあああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 霊界、ネオ大江戸辰区の空に賢太の絶叫が木霊した。






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