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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
幕間2 JK霊能力者 冥
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いじめとは、狭い世間の中で起こる。弱った固体を縄張りから追い出す動物のように行われる。世界は広い、外に目を向ける強さがあれば

 

「おはよう~~っ。」

「おはよ~~っ。」

「ヒソヒソヒソ・・・ふふふっ・・・」



 早朝の学校の玄関、下駄箱スペース。生徒達が行き交う中に冥の姿があった。


「・・・・・・。」

 冥は下駄箱の自分のスペースを見て、一瞬動きを止めるが、何事も無かったかのように靴を履き替える。しかし、その上履きはズタズタに切られていて、とてもまともに履ける様なモノではなかった。



 これは冥の変わらない学校の日常。



 冥は才能が豊かなため、その代償として、学校に来る事が少なかった。中学の時はそうでもなかったのだが、高校になると霊能力者としての仕事が増え、学校に行く機会がめっきり減っていた。だが、冥は16歳のりっぱなJK。学校を優先することに誰も文句は言わない。が、冥自身が今の生活を自分で選択している。






 〔ガラガラガラ・・・〕

 冥が力なく教室の引き戸を開ける。



「・・・・・・。」

 先ほどまで、友達同士でしゃべっていたクラスメイト達が一斉に黙って、冥の姿を見る。


「・・・・・・。」

 冥はそんなクラスメイトが存在していないかのように淡々と自分の席に進んでいく。


 〔ヒソヒソヒソヒソッ・・・ケラケラケラッ・・・〕

 冥の一挙手一投足を見ながら、女子のクラスメイト達が小声で話し、笑いを押し殺している。


「・・・・・・。」

 冥はそんなことなど、一切気にする事無く、自分の割り振られた席に来て、静かに座る。


 その席も普通ではない。


 机の表面は彫刻刀でメタメタに傷つけられ、その上からご丁寧に油性のマジックで書かれた汚い言葉で、びっしりと埋め尽くされている。


「・・・・・。」

 冥はまったくそのことを気にせずに席に座って、次の授業の準備をする。



「ねぇっ、ちょっとっ。」

 淡々としている冥が気に食わなかったのか、ヒエラルキーの地位が高そうなギャルっぽいJKが冥に強い口調で声をかけてきた。



「・・・何?」

 冥は無視すればいいものの、声を掛けてきたギャルの方をちゃんと向いて返事をした。


「あんた、クラスの雰囲気暗くするのやめてくれる?」

「トイレにでもコモってなよっ。」

「キャハハハハハッ!」

 ギャルっぽいJKに続くように取り巻きのJK達が冥に辛らつな言葉を投げつけてくる。最後には全員で大笑いして、冥を指差している。


 冥は学校に来ないというだけで、これほど妬まれている訳ではない。出席日数はちゃんと稼いでいるが、授業も出ていないのに成績は優秀で、美人ということもあり、堂々とは皆口にしないが、男子生徒の中にファンが多い事も、いじめを助長させる火種となっていた。


「・・・それはごめんなさい・・・でも、トイレじゃ授業受けれないから・・・。」

 冥は笑われている事など、まったく気にせず、ただただ正論を言う。


「チッ・・・あんた、ちょっと可愛いからって、なめてんの?」

 ギャルっぽいJKが冥の正論に打ちのめされて、舌打ちした後に顔を冥に近付けて、睨む。


 〔ガタンッ!〕

「ッ?!」

 睨まれた冥は勢い良く席を立ち、ギャルを見下ろす。すると、冥のにらみにビビッたギャルは目を丸くして、後退りした。


「・・・・・・。」

 冥はそんなギャルを見た後に、教室をグルリと見て、スッと席に着く。


「・・・・・・。」

 クラスメイト達は冥の凄みに言葉が出ず、各々の席に静かに戻っていく。


 その後、昼休みまで淡々と教室の中では静かに時間が流れる。

 冥に睨まれて、醜態を晒してしまったギャルは、ずっと冥を睨んでいたが、手を出す勇気が無く、休憩時間もゴリラのドラミングのようにわざわざ大きな音を出して、冥を威嚇していたが、冥が全く動じない事に逆にストレスを溜めていた。






「また明日ねっ!」

「バイバイッ!」


 そんな冥とギャルとの静かなる?闘いに巻き込まれまいと、下校時間になると関係ないクラスメイト達はそそくさと帰っていく。


「・・・ヒソヒソヒソヒソ・・・ヒソヒソヒソヒソ・・・。」

 もちろんギャル達は仲良しグループで徒党を組んで、教室のギャルの席から冥の動向を見ていた。


「・・・・・・。」

 冥は冥で下校時刻にもなるものの、席に座ったまま、本を読み出す。




 そんなこんなで時間が過ぎ、日が傾いた頃、

「ちょっとっ!」

 ずっと冥の様子を見ていたギャル達が、我慢の限界だったのか、教室の周りまで人気がなくなるや否や、動き出す。



(この人達、暇なの?)

 冥が声を掛けられたので、ギャル達の方に顔を向ける。



「あんた、ちょっとこっちに来なさいよっ。」

「・・・・・・。」

 ギャル達は徒党を組んで、冥を囲み、あのギャルが冥の腕を強く引っ張った。冥は乱暴にされるも、なすがままに身体をギャル達に預ける。


 ギャル達に無理やり連れて行かれる冥。全く抵抗しない事に、ギャル達はニヤニヤしながら冥を見ている。そうこうしていると、学校の本校舎の隣にある木造の2階建ての旧校舎の2階の隅にある女子トイレに冥は連れてこられた。


「あんた、生意気なのよッ!ここでずっとこもってなさいっ!」

 ギャルは取り巻きを使って、冥をその女子トイレの一番奥の個室に押し込み、強い口調で捨て台詞を吐く。


「・・・・・・。」

 冥はそこまでされても、黙って従い、トレイの便器に座った。


「・・・・・・あんた、マジであたし達舐めてるみたいね・・・ここから出られないようにしてやるからっ。」

 ギャルは全く動じない冥に堪忍袋の緒が切れたのか、過激な行動を取ることを冥に告げる。


 〔ガタッ、ガシャッ、ガチャッ、ゴトンッ!〕

 冥はトイレのドアを閉められて、外の様子が分からなかったが、ギャル達はどうやら、冥を閉じ込める為に旧校舎の中から色々と物をかき集めて、ドアが開けられないように細工をしているようだった。


「・・・それじゃぁ、後よろしくねっ。」

「えっ?」

「・・・何?文句あんの?」

「・・・・・・。」

 個室の外で、ギャル達が何やらやりとりをしている。冥は興味が無いので、便器に座ったままジッとしていた。そうすると、ギャル達はケタケタと笑いながら外に出て行くのが、遠のく声で分かった。しかし、トイレには冥以外に人の気配が残っている。





 少し時間が経ったある時、

「ねぇ、冥さん・・・一緒に謝ろう?」

 個室の外から弱弱しいJKの声が聞こえてきた。


「・・・あなた、なんでそこに、ずっといるの?」

 冥が当然の質問をする。


「えっ?!なんでって・・・ここに居ないと私が今度、貴方の代わりにいじめられるから・・・。」

 弱弱しい声のJKは、声を震わせながら冥にそう答える。


「貴方の世界は狭いのね・・・ちょっと、トイレの出入り口の方に行ってくれる?」

 冥がポツリとそう言い放つ。


「えっ?・・・うっ、うん・・・。」

 JKは冥の言葉に困惑するが、言われた通りに移動した。


 〔ドガンッ!ガシャンッ、ドンガラガッシャンッ!〕

「キャッ!?」

 JKが移動したのを見計らって、冥が力を使って、ドアを吹き飛ばした。流石の大きな音にJKは驚き、目をつむってうずくまる。


「・・・霊幕が広がってる・・・予定通りね・・・。」

 冥が何事も無かったかのように個室から出てきて、周囲を観察している。


「・・・どっ・・・どういうこと?」

 うずくまって震えているJKが冥に尋ねる。


 冥は困惑して震えるJKにゆっくりと近付き、JKの頭に手をかざす、

「・・・見せてあげましょうか?貴方の知らない世界・・・。」

「ッ?!」

 冥の手がJKの頭に来て、その手の辺りが暖かく感じると、JKの目に、冥の後ろに立っている見知らぬ制服を着た男子高校生と思われる少年と、黒い着物を着たグラマラスなメガネをかけた美女が突然現れた。



「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」

 今まで、姿形もなかった二人の姿にJKは大きな悲鳴を上げる。

 外は日も沈み、暗い暗い闇が学校を包み込んでいた。


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