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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第1幕 異世界転生失敗?!悪霊 縄破螺編
31/171

人生には、いくつもの壁が存在して、乗り越えても乗り越えても、次から次へと現れるらしい・・・逃げたくなるよね

お手数でなければ、創作の励みになりますので

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「善朗君っ!」

 気を失った善朗に乃華が慌てて近寄る。



「・・・・・・。」

 その乃華の動きを縄破螺は全く見ていない。

 縄破螺の視線は最後に入ってきた者達に釘付けになっていた。




「・・・ワシの子孫を随分可愛がってくれたようだな・・・高くつくぞ、下郎がっ。」

 佐乃の隣に子供の姿をした菊の助が縄破螺を怒鳴って睨む。




「菊の助・・・まぁ、そう怒るな・・・。」

 菊の助の怒りを佐乃が思い留まらせる。


(・・・こいつら・・・なぜ、こんなところに・・・。)

 縄破螺は佐乃と菊の助の姿を見て、焦り出した。


 縄破螺には分かる。分かってしまう。

 余りにも強い霊力が、この二人に相当な霊力を保有していることを縄破螺に隠さずに告げていた。とても今の状態では太刀打ちできない。万全だったとしても、同じかもしれないと脂汗が出る。




「・・・縄破螺とかいったか・・・ここは一つ、手打ちにしないか?」

 いよいよかと思われた縄破螺に対して、佐乃が腕組みをしながら驚きの提案する。




「えええええっ?!」

 佐乃の言葉に一番驚いたのは乃華だった。


「・・・・・・。」

 菊の助はその言葉に納得していないようだったが、腕組みをして、口を真一文字に閉じている。


「・・・・・・ふひひっ・・・なんだと?」

 縄破螺も突然の佐乃の提案に困惑している。


「・・・あんたがいくら強くても、多勢に無勢だろう?・・・見逃してやるって言ってるんだ・・・そのかわり、善文の事は諦めな・・・。」

 佐乃がギラリと縄破螺を睨んでさらにそう要求する。


「・・・・・・ふざけるなよ・・・お前達・・・俺たちの邪魔をしといて・・・おまけに獲物を諦めろだと?・・・それで俺たちが黙ってると思ってるのか?」

 縄破螺は声を怒りで震わせながら佐乃に答える。


「・・・あたしは前から気に食わなかったんだよ・・・あんた達との暗黙の了解ってやつが・・・なんで、苦しんでる人達を指をくわえて、見殺しにしないといけないのか・・・ってね。」

 佐乃は腕組みをしたまま縄破螺から目線を外さずに歩み寄っていく。


「・・・・・・お前達も甘い汁をすすってたはずだろうが・・・ここにきて、身内だからって、世界のルールを歪める気か?」

 一歩も引かない縄破螺が佐乃を睨み返す。


「・・・お前みたいなクズがルール、ルールだなんて、笑えてくるね・・・。」

 佐乃は縄破螺の息が掛かる位に顔を近付けて、にやりと笑う。


「なめるなっ!・・・」

 縄破螺が佐乃の言葉にぶち切れて、襲いかかろうとした瞬間、



 〔パンッ!!〕

 一撃だった。



 佐乃が放つたった一撃で縄破螺はあたかも最初からそこに存在していなかったかのように雲散霧消した。


「・・・・・・。」

 菊の助はその光景を黙って、ジッと見ている。


「・・・・・・へっ?・・・。」

 余りにも突然の出来事に唖然とする乃華。




「冥っ!!!!」

 そこにグッドタイミングかバッドタイミングか、空柾がヒヒロを連れて飛び込んできた。




「・・・アキニィッ!」

「えっ、美々子ッ?!!!」

 兄の姿を見つけて、ホッとした美々子が空柾の足に勢い良く飛びつく。

 思っても見なかった美々子の存在に魂が飛び出しそうになるぐらい驚く空柾。


「・・・おにい・・・ちゃん・・・。」

 空柾の姿を見つけて、床にぐったりとしていた冥が空柾に自分の無事を報せる。


「・・・冥ッ!・・・まったく、あれほど無茶をするなと言ったのに・・・。」

 空柾は冥の存在を見つけると早足に冥の傍に向かった。


 そんな感動の兄妹の再会を微笑ましく見守るヒヒロに佐乃が声をかけた。

「・・・ヒヒロ様、お久しぶりですっ・・・。」

「・・・あら、佐乃ちゃん・・・お元気そうね。」

 佐乃は空柾と一緒に現れたヒヒロの姿をみつけて、そう挨拶をする。

 ヒヒロも親しい佐乃に笑顔で挨拶を返した。


「・・・ヒヒロ・・・息災だったか?」

「あらあら、菊の助もひさしぶりねぇ・・・。」

 佐乃に続いて、菊の助がヒヒロに挨拶をする。

 ヒヒロは佐乃と変わらず、優しい笑顔で旧友に答えた。



 そして、空柾が妹の無事を確認して、ホッと一息ついた時、

「・・・ところで、縄破螺はどこだ?」

 空柾が事態の掴みきれない所で、縄破螺の存在をその場の誰かに尋ねる。



「・・・消したよっ。」

 佐乃が一言そう素っ気無く空柾に告げる。


「・・・けっ・・・消した?」

 空柾が目を丸くして佐乃の言葉に驚いた。




「・・・・・・空柾・・・聞いていた話と違うな・・・。」

 縄破螺が消えたと分かった瞬間、縄破螺が消えても尚、暗く重い空気が支配する部屋がなぜ続いているのかのアンサーが示された。




 部屋に最後に入ってきた男は縄破螺よりも尚、深い闇をまとって現れた。2mは優に超える巨漢の大男で、頭はボサボサの剣山のような髪質だったが、何より目立つのは右側の額に大きな獣の引っかき傷が入っていた所だった。目は闇夜でもギラギラと光り鋭く、狼のように獲物を捕らえて離さない。全身は筋肉という鎧を着ているかのようにゴツゴツとしており、大きな熊の皮で作ったベストを身に着けていた。口からは白く鋭い歯がギラギラと光り、どんな肉でも引きちぎる事が出来ると主張している。



「・・・断凱だんがい・・・。」

 佐乃が鋭い目で大男を捉えて、そう男の名を口にする。



「・・・佐乃か・・・。」

 断凱は佐乃の存在に気付くと、そこで足を止めた。


「・・・あんたがなぜここに?」

 佐乃が当然の質問をする。


 佐乃と断凱がにらみ合い、一触即発の瞬間が迫ろうとしていたその時、空柾が二人の間に割って入る。

「断凱っ・・・ここは一つ、もう一度っ。」

「否ッ!・・・縄破螺が消えた以上、こちらもそれなりの態度を取らねばならん・・・。」

 空柾がこの場を丸く治め様としたが、断凱は佐乃を睨んだまま、食い気味にそれを拒絶した。


「・・・ふっ・・・メンツだなんだって・・・男って奴は・・・。」

 佐乃がそんな断凱の態度を鼻で笑う。と、


「・・・そのメンツにお前は守られていたんだぞ・・・。」

 断凱がぎらついた目で佐乃を射抜く。


「・・・どっちが守られていたんだろうね?」

 一歩も引かない佐乃が断凱を負けじと射抜き返した。


「・・・俺達に手を出した事を後悔させてやる・・・。」

 断凱はそういうと佐乃達に背中を向けて、部屋から出て行った。


 すると、やっと廃工場を支配していた重苦しい暗い雰囲気が消え、少しの日差しが部屋に差し込みだした。ジメジメとした雨も上がり、外は日が指している事にその時にやっと気付く。



「・・・まさか・・・にいさん・・・。」

 冥が一連の会話を聞いて、恐る恐る空柾に尋ねる。



「・・・そうだ・・・悪霊を束ねる連合の長である断凱と交渉していたんだよ・・・我々はそうやって今まで住み分けてきた・・・今回も悪人の魂を何人か差し出す条件でな・・・。」

 空柾は苦虫を潰した顔をして、冥の真っ直ぐな眼差しから目を背けた。


「冥ちゃん・・・空柾を責めないでっ・・・色々考えて出した結果なの・・・。」

 ヒヒロが慌てて空柾に近付き、冥を切なそうな顔で見て、空柾をフォローする。


「・・・・・・。」

 冥は空柾を心底情けないと一瞬思ったが、不甲斐無い冥自身の姿を省みて、兄の苦しい選択を認めざる、受け入れざるを得なかった。そんな暗い雰囲気がまた部屋を支配しようとしていたその時、




「お兄ちゃん大丈夫?」

「お兄ちゃんありがとう。」

「お兄ちゃん起きて。」

 光りが差し込んで、透き通るような空間になった世界に天使達が姿を現した。




「・・・貴方達・・・。」

 乃華は縄破螺に果敢に立ち向かった善朗を囲むように姿を現した子供達の姿に驚く。


 子供達は縄破螺が消滅した事により、その呪縛から開放され、本来の姿に戻って、善朗の前に姿を現し、善朗にお礼を言いに来たのだ。しかし、今も尚、縄破螺との戦いで気を失っている善朗を子供達は心配している。


「・・・お兄ちゃん、起きて。」

「おにいたん、目を開けて。」

「おにいさん、おにいさん。」

 子供達は次々とワラワラと集まり、気を失っている善朗に触れて、必死に起こそうとする。




 子供たちが善朗に群がる中、部屋に一筋の強い光の柱が現れたかと思うと

「・・・こらこら、あまりそんなに乱暴にするもんじゃないよ・・・。」

 その柱の中から優しい男性の声が聞こえてくる。




「・・・パパッ?・・・」

 乃華はその声に聞き覚えがあるのか。自然と口から言葉が飛び出した。






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