心霊スポットとかで、肌寒くなったり、気だるくなったり、頭痛がしたりするけど・・・大体あれは・・・気のせいです(注:作者は霊感0です
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善朗は先行する冥の後を追うように走っていた。
どこに連れて行かれるのか・・・それはもちろん悪霊縄破螺の居場所以外考えられない。
「トコさんを助けられたのはいいけど・・・縄破螺の場所が・・・。」
善朗はとこさんの無事でホッとするも、肝心の縄破螺の場所について、何一つ情報がないことに不安を覚える。
縄破螺の居場所について、悩んでいる善朗を見て、冥が、
「・・・本気で言ってるの?」
ちょっと引き気味に呟いた。
冥が善朗にあきれているのを見かねて乃華が、次いで口を開く。
「あぁっ、善朗さんは霊界で、力を引き出す事を中心に教えてもらっていたので・・・。」
善朗の代わりに、頭をかきながらそう冥に弁明する。
「あははは・・・。」
冥と乃華の会話に苦笑いするしかなかった善朗。
「・・・もうっ・・・時間がないわ・・・とにかく向かいましょうっ。」
冥は未だ霧の中で迷っている善朗よりも善文の身を案じて、そう言いながら走り出す。
「あぁっ、待ってくださいっ!」
冥に置いてかれまいと善朗も走り出した。
冥が先行して少し走った頃、
「善朗さん、式霊として、対悪霊や怨霊と言った霊力の高い相手を探るのは実は簡単なことなんですよ。」
乃華が善朗と併走しながら、悪霊などの索敵について説明する。
乃華曰く、
ある程度強い霊は自然と『霊幕』という自分の周りに霊圧が作り出したテリトリーの境界線が出来ると言う。その霊幕は意識して抑える者も居れば、強めて結界として使う者もいるらしい。
「ですから、その霊幕を感じ取れれば、ある程度の強さを持った霊は見つけられると言う事です。」
乃華が人差し指を振りながら、誇らしげにそう話す。
乃華の話に続くように先行していた冥が言葉だけを善朗に向ける。
「縄破螺は隠す事もできるかもしれないけど、今は獲物である善文君を誘っているから霊幕から霊力がだだ漏れなのよ・・・実際は私たちの事なんか眼中に無いってことでしょうけど・・・。」
冥のその言葉はどこか悔しそうに言葉を搾り出しているように聞こえる。
冥のそんな気持ちも露知らず、善朗は話の内容は掴めているのだが、
「うぅ~~・・・すいません。俺にはいまだに全然サッパリ分かりません・・・。」
縄破螺の霊幕を探知するには到らない。
「私達は組織に入るときは、徹底的に教え込まれるんだけどね・・・。」
冥が縄破螺の霊圧に導かれるように走りながらそう話す。
「すごいですねっ。」
冥の話に素直に感心する善朗。
素直に感心する善朗とは裏腹に、冥は表情を曇らせ、
「・・・・・・全然すごくないわよ・・・これは防衛手段として、教わる基礎的なものですもの・・・。」
冥の口調のテンションが分かりやすく下がった。
そんな冥の機嫌の上下を感知して、乃華が善朗の耳元にソッと顔を寄せ、
「善朗さん・・・言ったじゃないですか・・・縄破螺などの『ろ組』の悪霊は人間では到底敵わないんですっ・・・冥さんの能力は高いですが、一人で対応できるのは、せいぜい『へ組』まででしょう・・・人間の霊能力者は危険な悪霊と鉢合わせしないように、対策として、霊の探知を徹底的に習わるってことですよ・・・。」
「『ほ組』までは倒した事あるわよっ。」
乃華が小声で善朗だけに話していたが、しっかりと冥に訂正される。
(『へ組』から『ほ組』になったばかりだったけど・・・嘘じゃないもん。)
乃華に強がった冥が心の中で、正直に真相を語る。
「ん~~~っ・・・それにしても、霊圧を探るって意外と難しいんですね・・・僕にはさっぱり分かりません・・・。」
善朗は自分で色々と考えて実践してるようだが、まったく分からないようだった。
「霊圧や霊力の感じ方は人それぞれなのよ・・・色として捉える人もいれば、匂いで判別する人も居る・・・ちなみに私は色のついた煙みたいなものとして認識してるわ・・・。」
冥が闇雲に走っているのではなく、明確な目印を追っている事を善朗に話す。
冥からヒントのようなものをもらった善朗は、
「・・・煙ですか・・・・・・んっ?」
縄破螺の事を考えながら、自分なりに探ってみると、鼻の頭が少しチリチリしてくるような感じがした。
「どうかしましたか?」
乃華が何かを感じた善朗を見て、そう尋ねた。
「・・・ビリビリしてきました・・・きっとこれが俺なりの探知なんだと思います。」
善朗はコツを掴んだように、縄破螺の気配を追う。そうすると、鼻の頭だけだったチリチリした感覚が、触覚をビリつかせるように広がるのを感じる。
「善朗君は、案外幽霊の方が活き活きしてるのかもね。」
冥が目の前でどんどん順応していく善朗を感じて、クスリとニヤけるが善朗達には見せない。
「・・・死んだ方がよかったみたいに言わないでくださいよ・・・。」
善朗が冥の言葉に露骨に機嫌を悪くする。
「あはははっ・・・もう善朗さん笑わさないで下さいっ。」
善朗と冥のキャッチボールを見て、走りながら大笑いする乃華。
「乃華さんっ、俺笑わせてるつもり無いですってっ。」
善朗が顔をしかめて、乃華を見る。
「・・・二人ともっ、言わなくても感じるでしょ?そろそろよっ。」
「ッ?!」
冥がこれから虎穴に入ろうとするのに緊張感の無い二人を叱責するように口調を強める。冥の言葉にハッとして、気配を探る事に集中する善朗と乃華。
3人は感じる。
重くねっとりとしたまとわりつくスライムのような感覚。
善朗にはそのまとわりつく電気スライムが目に見えないのが異様に気持ち悪かった。
トコさんを含む、4人が導かれたのは廃工場跡。
「・・・・・・。」
4人は少し空いている錆びた鉄格子の扉の前で中の様子を覗く。
うち捨てられて、長い年月が経っているのか、敷地の地面には雑草が自由に伸び、雨ざらしになっていた鉄製のものは、すべからく錆で茶色く変色している。敷地の中に3階建ての建物があるが、窓と言う窓は割られ、ガラスやゴミがそこら中に散乱している。最早、人の気配などするはずが無い街の空白地帯のようになっていた。しかし、ここまでくれば、霊感が無くても、嫌でも感じてしまうだろう。人を寄せ付けないジメジメとした暗い雰囲気、近付けば近づくほど、身体全体を悪寒が走る。これこそが、霊幕というものなのだろう。興味本位で近付こうとするもの以外は、それ以上足を踏み入れたりはしない境界線が確かにそこにはあった。
(ここに善文が・・・。)
善朗は縄破螺の存在よりも善文の無事を案じた。




