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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第1幕 異世界転生失敗?!悪霊 縄破螺編
21/171

霊の闘いとは、魂の削りあい。まさに魂と魂のぶつかりあい・・・そんな事ができる友がほしかった

お手数でなければ、創作の励みになりますので

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 〔ドンッ、ドッ、ドドンッ!〕

 善朗が斬撃を放つ度に爆音が周囲に放たれる。




 金太は防御に徹して、善朗の斬撃を両手であしらって行く。


 金太が素手で善朗の斬撃をあしらっている事に不思議に思うだろうが、金太の両腕には霊力が込められており、善朗の斬撃も霊力で出来ているため、霊力と霊力のぶつかり合いで相殺されている形となっていた。


 〔ドドッ、ドンッ、ドゴンッ!〕

 そして、霊には身体的な疲れという概念はない。


 つまり、霊力が切れるまでは延々と息切れせずに闘いが続いていく。


(・・・こりゃ・・・思った以上にきつい・・・。)

 金太は秦右衛門からの指示で防御に徹するように言われていたが、その防御自体が今となっては辛いものになってきていた。


「・・・・・・。」

 善朗は闘いに集中するあまり、最早金太しか見えていない。そんな善朗の口角は少しずつ無意識に上がっていく。


(・・・善坊・・・どんだけ霊力量があるのやら・・・底が見えんぜ、秦兄ぃ・・・焼肉じゃ割が合わんぞ・・・。)

 金太は善朗をジッと見つつ、下で二人を見ている秦右衛門に対して、心の中でグチを零した。






 〔ジリリリリリリリリリッ!ジリリリリリリリリッ!!〕

 ここは辰区の区役所の一室。

 事務所に設置してある電話という電話が一斉に鳴っている。


「あわわわっ・・・乃華ちゃん、苦情の電話が収まんないよぉ~~・・・。」

 泣きべそをかきながら伊予が電話の対応に追われていた。


 伊予が泣きべそをかき、必死に電話対応する中で、隣でテキパキと乃華は仕事をこなしていく。

「はい、申し訳ございません。早急に対応いたしますので・・・はい、失礼いたします・・・・・・佐乃って・・・たしか、菊の助さんのところで会った人・・・。」

 スラスラと電話の対応をしつつ、乃華が苦情の発生源の名前を口にした。


 そんな乃華が佐乃の名を口にしたのを姑息に聞き逃さなかった者がいた。

「乃華ちゃんっ、佐乃さんの知り合い?・・・ちょっ、丁度よかった・・・騒ぎがこれ以上大きくなる前に、佐乃道場に行って来てくれないっ?」

 所長も電話の対応に追われながらも乃華の言葉を聞き逃さず、ここぞとばかりに乃華に対応を押し付ける。


 もちろん区役所に入り立ての新人である乃華。

「・・・えっ・・・私が行っていいんですか?」

 乃華は電話の対応を少しやめて、丁寧に上司のお伺いを立てる。


「・・・・・・。」

 事務所の面々は乃華が所長の目をしっかりと見る中で、自分達は乃華と目が合わないように避けながら、電話の対応にそれぞれ追われていることを装っていた。


 どうやら、佐乃というのは区役所内でも、恐れられているようで、苦情の発生源が佐乃の道場だと分かるや否や、区役所の面々は苦情を聞くだけで誰も対応に乗り出そうとは思っていなかった。そこに佐乃との知り合いで、そのことをしらない乃華の存在は区役所の面々としては、願ったり叶ったりだったのだ。そして、電話口の向こう側も、佐乃とは極力関わりたくないと言う者も多いので、区役所に苦情が殺到していると言う仕組みだ。



「・・・わっ・・・わかりました・・・新人でお役に立てるなら、行ってきますっ。」

 乃華は区役所の思惑など知る善しもなく、新人らしく上司からの頼みを快く受け入れて、早速出かける支度をしだした。


「あぁっ・・・ありがとう、助かるよ乃華君・・・君が来てくれてよかった・・・。」

 電話の応対をしながら上司が満面の笑顔で乃華を送り出す。


 乃華は上司の了承を得ると、何も知らないまま行動に移っていく。

「・・・それでは、行ってきますッ!」

 乃華がお辞儀をして、事務所を出て行こうと出入り口へと移動した。


「頑張ってね、乃華ちゃん!」

 事務所内の面々はそれぞれ笑顔で乃華を元気良く送り出す。


 乃華が区役所の皆に送り出されて、姿を消していくその時に、もう一つの影がそれを追うのが区役所の面々の視界に入った。

「あっ、乃華ちゃん、私もっ!」

「あ、伊予君っ。君まで行ったら・・・。」

 伊予も面白そうだと急いで支度をして、乃華を追いかけていったのだ。

 上司はそんな伊予を見て、止めようとしたが時既に遅し・・・そこには、もう伊予の姿はなかった。






 〔ドンッ、ドンッ、ドドドンッ!〕

 辰区の居住区を歩く乃華の頭上で、騒音が今も響き渡っていた。


「・・・まったく・・・なんて近所迷惑な騒音・・・。」

 乃華はスタスタと歩きつつ、まだ見えない音源の方を見て、文句を吐き出す。


「・・・すごい音だね・・・何してるのかな?」

「・・・なんで、あんたまで来てんのよ・・・。」

 伊予がワクワクしながら乃華と違って、野次馬根性で乃華の後についてきていた。そんな伊予に乃華がいぶかしげな視線を送って、届かない文句を言い放つ。


 〔ドゴンッ、ドガンッ〕

 乃華達が佐乃道場に近付くにつれて、音は次第に大きくなり、お腹に響いてくる。


「・・・ここね・・・。」

 乃華が佐乃道場の玄関の門まで来て、緊張の余り、生唾を飲んだ。




「・・・すいませ~~ん、区役所の者ですぅっ!」

「ちょっと、伊予ッ!」

 乃華がきちんと挨拶をして入ろうとした矢先に、伊予が駆け足で挨拶をしながら中に入っていった。それを慌てて、追いかける乃華。




「すいませ~~んっ、周辺住民から苦情がきてますぅ~~っ。」

 伊予がどこか力が抜けた口調で庭をスタスタと歩きつつ、住人にお構いなしに音源の方に向かっていく。


 そんな伊予の声にいち早く気付いたのは、当然あの男だった。

「・・・オッ、可愛い子だね・・・。」

 女好きの秦右衛門が伊予の姿に気がついて、伊予を呼び込むように声をかけた。


「えぇ~~~っ、ありがとうございますぅ~~。」

 テレ顔を作りながら伊予が秦右衛門の方に近付いていく。


「ゲッ・・・バッ・・・秦右衛門さんもいらっしゃったんですか?」

 伊予の後を慌てて追ってきていた乃華が秦右衛門の姿を見つけて、身じろぐ。


「あららっ、美女が二人とは・・・今日はついてるっ。」

 乃華の姿も捉えて、にっこにこな秦右衛門。


 そんな秦右衛門の傍らで、佐乃が空を見ていた視線を乃華達の方に移して、口を開く。

「・・・なんだい?・・・案内人が何かようかい?」

 佐乃が乃華の姿に気付いて、見知った乃華に声を掛けた。


「あっ・・・佐乃さん・・・何をやられてるんですか?ご近所から騒音の苦情が区役所に殺到してるんですよっ。」

 乃華が佐乃に自分達が来た理由を簡潔に説明する。


「あら~~・・・乃華ちゃん、案内人やめたの?」

 乃華が区役所からの使いだと知ると秦右衛門がそのことに驚いた。


「なんだかぁ・・・いい物件があるってぇ~・・・乃華ちゃんが独り占めしようとしてるんですよぉ~~。」

「こら、伊予ちゃんっ、勝手にそんなこと言わないっ!」

 伊予が乃華が案内人をやめた理由をばらすと、乃華が慌てて伊予の口を塞ぎにかかる。


「・・・ふぅ~~~ん・・・なるほどぉ~~・・・。」

 察しのいい秦右衛門がその話を聞いて、思わずニヤけた。


「・・・そのいい物件が、騒音の元だよ。」

 佐乃がニヤケる秦右衛門を脇に置いて、アゴで騒音の元凶を乃華に指し示して導く。


 乃華が佐乃の導きに従い、その方向に視線を流すと、

「えっ?!」

 そこには金太と戦っている善朗の姿が乃華の視線に入った。




 〔ドンッ、ドガンッ!〕

「しまっ!?」

 乃華達が善朗達の戦いに目を向けたその時、善朗の斬撃が金太のガードを弾く。

 金太はがら空きになったボディに焦って、思わず言葉が口から零れてしまった。




(主っ!イマダッ!!)

 大前が勝機を見たりと頭の中で善朗に向けて叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 大前の導きに身体が自然と動くが、その動きに善朗は思いを乗せて刀を振った。


 〔ズバンッ!〕

 大前の刀身が右下から切り上げるように金太の腹部を通過していく。


「ぐおおおおおおおおおおっ」

 金太は切られた勢いで後方に飛んで落下していった。


「・・・あっ・・・。」

 笑みを浮かべていた善朗が、金太を切ったと言う現実に正気に戻って、冷や汗をかいて目を丸くする。


 〔ドゴオオオオオンッ〕

 金太が飛ばされて、住宅街に大きな音を立てて落下した。落下した場所から土煙が立ち上っている。


「・・・・・・。」

 金太を切ったと言う現実に善朗は完全に放心状態となり、固まってしまった。



「・・・すごっ・・・。」

 伊予がその光景を見て、思わずそう言葉を漏らした。







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