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小説家編

ユウキ出版社を前に仁王立ちしているのは蕨白月(わらびしろつき)26歳。

彼は小説家を目指しており、今まさに持ち込みをしようとしているところであった。

「今日こそは受け取ってもらう!!」

強い意気込みでユウキ出版社へと入ると、受け付けをスルーしてそのまま編集部へと向かった。


編集部につくと白月の姿など目に入らないぐらい活気に満ちていて忙しそうに働いていた。

「う〜ん、相変わらず大変そうだなぁ」

ぐるりと辺りを見渡し目当ての人物を見つけるとすぐさま駆け寄った。

「やっほ〜、闇ぃ」

可愛く挨拶する白月に冷たい目線を送る結城。

「貴様、また来たのか・・・・・」

呆れたように頭を抱える結城に心底嬉しそうな笑みをこぼす白月。

「まぁね。これ、読んで欲しくて」

原稿を結城に渡そうとするが結城は顔を青ざめ、それを拒否した。

「断る!そんなもん持ち込むな!!」

「えぇ!?何それ、酷い」

「酷いも何もあるか!貴様の作品はどうせ・・・男同士が乳繰り合う内容だろう」

言うのも嫌なのか、不快な顔つきで答える結城。

「別に何書いたっていいでしょ!!」

「またやってるんですか?」

そんな争いに呆れ気味に口を挟む優瑠。

「だって闇ってば読みもせずにすぐ却下なんだもん!!」

「まぁ、確かに・・・・。社長、一度ぐらい読んでみてはどうですか?」

「貴様、俺に死ねと言うのか!」

「そんなオーバーな・・・」

「ウルセェ、俺にとってはそうなんだよ!とにかくさっさと帰れ」

面倒臭くなったのか白月を追い払う結城。

「だいたい受け付けの奴はどうなってんだ」

愚痴をこぼす結城に白月はあっさりと答えた。

「そんなものあったって僕には無意味だから」

楽しそうに答える白月。彼の身長は157センチと小柄だった。

受け付けなど彼が屈んで通ってしまえば意味はなかった。

「・・・・あぁ、そうだったな」

その返答にあっさり納得してしまう結城。

「さて、社長。そろそろ行かないと間に合わなくなりますよ?」

「ん、わかった。まぁそう言うわけだ。貴様はさっさと帰れよ」

白月にそれだけ言うと優瑠と一緒に部署から出かけていった。

「・・・つまんないの〜」

面白くなさそうにふてくされる白月。彼は結城に思いを寄せていた。


結城との初めての出会いは高校時代だった。

そのころから彼はあのままだった。

「いいか、よ〜く覚えとけ!俺は日本一。いや、世界一の社長になる男。結城闇だ!!」

高々と宣言する結城の姿を新入生であった白月(しろつき)は白い目で見た。

第一印象は最悪の一言でしかなかった。

しかし、そんな彼は何故かこの学校の生徒会長だった。

横暴で偉そうな態度ではあるが人望は厚く、やることはやる男だった為に生徒からの指示は大きかった。

だが白月は、それが納得いかなかった。

やたら女に甘く男をゴミ同然に扱う彼の姿を良く目にしていたからだ。

「また女に囲まれてニヤけてるよ。バカみたい」

小馬鹿にしたようにつぶやく白月の独り言に結城は反応した。

「ふっ、モテない男のひがみにしか聞こえんな」

バカにしたつもりが逆にバカにされ腹が立った。

ハッキリ言って嫌いなタイプであった。

「別にモテたいなんて思ったことないから!!」

「そんなこと言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえんなぁ」

「あっそう、勝手に言ってれば?」

もはや相手にすること自体がバカみたいだとそっけなく答えた。

すると、そんな白月に腹が立ったのか、結城が近づいてきた。

「な、何?やるき???言っておくけどこう見えても結構強いよ」

白月は小柄ではあったが、それをいかした柔道が長けていた。

「そんなことはどうでもいい。それよりその格好なんとかしろ。見ていて腹が立つ」

そう言って結城は白月の着ていた服のボタンを絞め、ネクタイを結んだ。

「よし、これでいい。身だしなみぐらいはきっちりしろよ?」

「やだ!」

思わず即答した。

「なんでだよ!?」

「別にどんな格好しようと自由でしょ?」

「あのなぁ!!」

激怒する結城にかまわずネクタイをほどく白月。

だが、白月は不覚にもこのとき結城に心奪われてしまったのだ。


「今考えるとなんでアレで好きになったのか疑問だなぁ」

白月自身も納得出来ないでいた。

しかも、未だに好きでいる自分も信じられなかった。

「何がいいんだろう?やっぱり、アレが原因かな・・・・」

高校では結城は3年。その為あっという間に卒業してしまった。

しかし、結城に惚れてしまった白月は彼が進学した大学まで追いかけていった。

だが、大学でも彼は変わらなかった。

いつも通り女性に囲まれ嬉しそうに顔をほころばせていた。

「・・・・いいかげんアレなんとかなんないのかなぁ」

嫉妬深い白月はそれを見るたびイラついていた。

しかし、結城自身そんなこと気づくはずもなかった。

このままではまた何事もなく結城は卒業してしまうと思った白月は大胆な行動に出た。

「闇!」

「あっ?なんだ」

「僕と付き合って!!」

その告白に当然結城は顔を真っ青にさせた。

「貴様、正気か???」

「当然でしょ!?」

「白月・・・。貴様、俺が男嫌いなの知ってるよな?」

「知ってるよ?」

「それで言うか?」

「もちろん、簡単に付き合えるなんて思ってない。だから勝負して欲しいの」

「はっ?勝負?」

「そう、君はいずれ社長になるんでしょ?」

「あぁ、まぁな」

「僕は作家を目指すつもり。だからどちらが早くなれるか勝負しよう」

「それで俺が負けたら付き合って欲しい。そう言うことか?」

「うん、どうする?」

「そりゃぁもちろん、受けるぜ」

自信家の結城は自分が負けるわけがないとその勝負をあっさり引き受けたのだ。

しかし、現実は白月の完敗に終わった。


「はぁ。バカだったなぁ・・・」

自分の失態にため息をこぼす白月(しろつき)

そんな彼の今の目標は結城の会社でデビューすることだった。

「やっぱり、このままじゃぁ無理なのかなぁ」

どこか諦めたように落胆する白月。

結城の男嫌いを知っている白月は男の優瑠が秘書をやってることに納得いかなかった。

初めてここに来たときは女性がまだ秘書をやっていた。

それなのにいつの間にか優瑠が秘書になっていたのだ。

不安にならないわけがなかった。

「女ならまだしも男なんて・・・・」

しかも、今の秘書は以前の秘書より格段に差があった。

容姿端麗、才色兼備と何をやらせてもそつなくこなしていた。

おまけに性格も良く、まさにパーフェクト人間であった。

「完璧な人間なんてただ気持ち悪いだけだよ」

そんな完璧人間のロボットみたいな奴にだけは負けたくないと思う白月だった。


「あっ、お帰り〜」

「・・・貴様、まだいたのかよ」

「ちょっと君の秘書に用があってね」

「えっ?俺・・・ですか?」

「そう、だから借りてくね」

「いいが、なるべく早く返せよ」

まるで人を物みたいにあつかう二人に優瑠は微妙な心境だった。

「それで、俺に何か?」

「うん、君さぁ闇のことどう思ってる?」

「えっと、それハッキリ言っても大丈夫ですか?」

「うん」

この際何を言われても覚悟は出来ていた。

もし好きだとしてもそれならそれで打つ手ぐらい白月にはあった。

「そうですね、では・・・。ハッキリ言って嫌いです」

さわやかな極上スマイルで答える優瑠に白月は冷や汗を流した。

「あっ、そうなの?」

「はい」

「そ、そうなんだ。じゃぁ秘書になったのは・・・たまたま?」

「えぇ、まぁ。運が悪かったと言いますか・・・・」

目線を逸らしながら複雑そうにつぶやく優瑠。

「まぁ、言えない事情ってのもあるよね。うん、いいよ別に」

聞きたいことは聞けたのでそれ以上の詮索は必要なかった。

「そうですか、では失礼します」

一礼を忘れることなくするとそのまま結城の元へと戻っていった。

「そうすると、とりあえず大丈夫そうだな」

一安心出来た白月はこれで気兼ねなく家に戻って小説に専念出来ると思った。

「じゃぁ闇、僕そろそろ帰るね?」

「おぉ、帰れ帰れ」

嬉しそうに答える結城にムッとしながらも大人しく帰るのだった。

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