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鳳凰の花が咲く

作者: 蒼月はるか

 「一緒にお話ができる友達が欲しいよ、師匠!」

 赤髪の少女は白衣の中年男子の袖を引っ張りながら、こう言った。白衣の中年男子の名前は白雲、とある組織で薬師を勤めている。少女――儀は白雲の唯一の弟子である。

 「何度も言ったか、ワシは二人目の弟子を作る予定がない。遊びたいなら勝手にどっかに行って、ワシは忙しいのだ!」

 記憶のある時から、儀はずっと白雲の元に薬に関する知識を学んでいる。どれくらの時間がたっているのだろう?師匠の元の弟子は自分一人、それについて師匠に聞いてみたことがある。

 得た答えは:「本来弟子を受けるつもりはなかった、無理やり押し付けられたからあなたを引き取った」

 師匠はあんまり子供のこと好きじゃなかったようだ。

 もちろん、儀も礼儀正しい模範弟子ではない。仕事をさぼったり、薬房から抜け出し外に行くことも良くあった。薬に関する知識もまともに勉強しているとは言えないくらいの問題児だった。だが師匠はそのようなことは特に気にせず、好き放題にしていた。

 ここはとっても大きいな屋敷、いや、屋敷より宮殿と言った方が適切かもしれない。様々な偉い人はそれぞれ自分の宮室を持っていて、白雲も自分の宮室を持っているくらいの偉い人。

なら、他の偉い人達の元に、弟子がいたりするかなぁ?もしいたら、そして自分と年の近い子だったら、友達になれるかもしらない。儀はそう思いながら、一つの宮室のドアを叩いた。

 そして侍女見たいな人がドアを開け:

 「あなたは?」

 「白雲師匠のところの儀です!」

 「儀さんですか、白雲様からの伝言か何かですか?」

 「うん…師匠からは何も言われてないよ、私は遊びに来たのです!」

 その話を聞いて、侍女は複雑な顔で:

 「用事はないならどうぞお帰りください、ここは凛月様の宮室です、遊ぶところではありません。」

そしてドアは閉まった。儀は諦めずにまた次の宮室のドアを叩いたか今度は返事することすらなかった。

 長い回廊の中に歩きながら、どうしてどこもかしこも人はいないんだと考える儀。

ふっと築くといつの間にか中庭に到着した。中庭の真ん中には大きいな木がいた。その大きさから見ると、たぶんもう百年くらいそこにいた木。木の枝に橙色の蕾がたくさんあり、もうすぐ咲くのだろう。そう思いながら、ゆっくりと木に近づいた。なぜか、この木を見て、心のどこかが懐かしい気持ちがした。手を上げ、木の幹に触れようとしたら、木は結界の用なものにおわれ、触ることはできなかった。

 急に探検気分もなくなり、儀は薬房へ戻ることにした。

 帰る途中に、使いの者が十数名の少年少女を連れている列を見かけた。もしかして、新しく入ってきて、これからどこかの偉い人の弟子になれる子供たちじゃないか?儀は使いの人に近づき:「おい、君、この子たちは?これからどこかに弟子入りする子たちですか?」

 使いの人は儀を見て、一礼をした後返事をした:「これはこれは、儀さまではないか」

 うむ、ここでは、お偉い人の弟子もそれなりに偉い身分を持っているようだ。

 「この子たちは、その、またそんな高い力を持っていない、これから訓練を受け育つ子です。」

 「そうなんですね!あなたたち!訓練頑張ってね!私は白雲のところの儀、訓練の隙間私のところに遊びに来ていいよ!」

 少年少女はそれを聞いて、顔を上げ儀を見つめている。それは茫然とした冷たい表情だった。まるで:「なにバカなことを?」と言っているように。

 「他に用事がないなら、私たちはこれで失礼します」

 使いの人はそう言って、また儀に一礼をし、少年少女を連れて去っていた。

 「その子たちに、遊びに来てっていうなんで、お前もなかなか酷い人だな」

 そして後ろから男の人の声が聞こえた、

 振り向くとそこに自分と同じ年くらいの少年がいた。

 「私はただ、あの子たちと一緒に遊びたい……」

 「明日あるかどうかの子に向けて遊びに来いって、へえ」

 「星弦くん、うちの弟子に余計なことを告げないでください」

 いつの間にか師匠が自分を探しに来たようだ。星弦、か。いい響きの名前だ。確かにここでは、名前の中に天上の物が含まれる人は全員偉い人らしい。この少年、自分とそんなに年の差がないのにもう偉い人になったのか。

 「白雲様こそ、少し弟子に対してのしつけが足りないのではないか?まさかここにこんな甘ちょろい子がいるなんで…ね?」

 「それは失礼いたしました、帰るぞ、儀。」

 「はい!では、またね、星弦くん!」

 儀は星弦に向いて軽く手を振り、白雲の後ろについて薬房に戻った。

 師匠に聞きたいことが多い、あの奇妙な大樹のこと、すれ違った子供たちのこと、そして星弦のこと。でもそれを聞き出す前に、師匠の怒鳴り声が掛かってきた:「勉強をさぼって外でうろつくのはともかく、他人の仕事の邪魔をするなぁと何度も言いたよね?あの凛月さま、自らワシのところに文句しに来たのよ!」

 「ごめんなさい…」と口で言いながら、凛月さまってそんなに器の小さい人間だったの?優雅な美人だと思っていたのになぁ。と心の中でそう思った。

 「今後は遊びたい時はワシの宮室のなかで遊べ、外で他人の邪魔になることは絶対しないように!分かったか?」

 「はい!分かりました!」

 「分かったら今日はもう自分の部屋に帰れ!」

この感じだと今日は何も聞かない方がいい。儀は師匠からの怒鳴りから逃げるように自室に戻った。何もしていないのにもう疲れた、寝よと。

 その夜、儀は夢を見た。あの大樹の枝にある無数の橙色の蕾が咲き、開いた花びらはまるで火のように赤い。そして花の形は、どこか鳥に見えている。

 起きたらどうしてもその大樹のことが気になり、儀は再び抜け出し、その中庭に行った。庭の中央の大樹は昨日と同じ、たくさんの蕾が枝の上に綴り、そして木は結界におわれ触れることはできなかった。儀はただその木を眺め、もし花が咲いたら、夢でみたような景色がみられるのだろうか。

 「おまえ、また抜け出してきたの?」

 「星弦くん!こんにちは」

 「星弦でいい。おまえの名前は確かに、儀だっけ?一文字の名前、ここでは結構珍しいなぁ」

 「そう?他の人とあんまり話したことないし、名前も知らないから。これが普通だと思ってった。星弦、ちょっと聞きたいことがあるだけど。この木は何の木が知らない?」

 「そんなのおまえの師匠のほうが詳しいじゃない?まあいいか。この木は鳳凰花樹。鳳凰花樹の花は鳳凰の姿に似ていると聞いた。」

 「ええ!そうなんだ、じゃ星弦はその花を見たことある?」

 「ない。鳳凰の花が咲くのは千年に一度らしい。」

 「じゃ、これからその千年に一度の絶景が見られること!ですね、咲くのが楽しみ」

星弦はそれを聞いて、木の結界を見つめていながらそう言いた:

 「しばらく咲くことはないだろう。この木、何等かの法術をかけられ、その時間を花が咲く前に留まっているのだ。」

 「ええ?それはなぜ?」

 「たぶん必要な時に咲かせるつもりだろう。植物に関する知識は白雲さまの書房の本で調べたら?人に聞くより早いし」

 「ああ、確かに、帰ったら調べる」

 「ふん、」

 「そうそう、星弦は、私の友達になれる?」

 また、そのような話。まあでも確かに、自分は昨日のガキたちよりは明日がある。

 「俺がその気にある時はね、」気がある時はお前の友達ごっごを付き合ってやってもいいと、星弦は思う。


 上古に鳳凰があり、火を浴び生まれ変わる。その涙により生まれたのが鳳凰花樹。鳳凰花樹の花は不老不死の薬や万病を癒す薬を作る素材。だが鳳凰の花は咲いた後も火を浴びた鳳凰のように火の中で散りゆく。その火を浴びてなお残っている唯一の一輪の花こそが、薬になれる花。

 だから、必要な時だけ咲かせたほうがいいと、鳳凰花樹の時間を咲く前に止まっていたのね。それは確かにしばらく咲くことはないだ。花の咲く姿が見たいだが、やはりこんな大事な花は必要な時にとっておくべきだ。

 因果を知り、花に対する興味もなくかった。儀はもう一つの気になることを思い出した。そういえば、あの日見た子たちは最近どうなっているのかなぁ、こっちから会いに行きたいか、でも前のように所々のドアを叩いたらまたあの凛月さまの時のように師匠に告げられそして怒られるかもしれない。

 星弦は、知っているようで、星弦に聞けばいいかの話になるね。明日、また星弦に会えてるようにと心のどこかで期待している儀だった。


 だが次の日も、またその次の日も星弦と会うことはなかった。使いの者の話を聞くと、星弦は用事で外出していた。外か、師匠は外の世界が危ないから出じゃいけないと言いたから、儀は一度もここから出たことがなかった。

 星弦の外出中のある日、儀はもう一度、少年少女の列と出会った。列を連れて歩く使いは前と同じ人だが、列中の子たちは違う子たちだった。

 儀はついつい声をかけた:「ねえ、君、この前の子供たちは?」

 「儀さま、あなたの様な方はこんな下賤な子たちと関わってはいけませんよ」

 「そんな言い方ひどいよ、この子たちもここの弟子でしょう?」

 「弟子になれるかどうかは素質を見ないとわからないことだし。それより、儀さま、星弦さまがお戻りになられたようです、今星弦さまの宮室に行けば会えるかもしれませんよ。では、私たちはこれで失礼します」

 そして使いは列を連れて去っていた。

 やっぱ今すぐ聞きたい、この子たちのこと。ここに入ってきたから一度もあったことのない前の子たちのことも。前日使いの人から案内してもらって、星弦の宮室の位置は既に知っているから、儀は走って星弦のところに行った。宮室に入って、見かけたのは傷を負って自分で手当てをしている星弦だった。

 「おまえが、今日はおまえの遊びに付き合う気分じゃない、用事がないなら帰れ」

 「その傷は、どういうこと?」

 「は?戦いに行ったら怪我が負うのも当然でしょう?ここで毎日薬草にむかって楽に本を読んであっちこっち遊びまわれるのはお前くらいだよ、甘いお嬢さま!」

 「戦い?誰と?そんなこと師匠から聞いてないよ!ここは法術を修行する場所じゃないの?」

 「あんたほんとなんも知らないの?ここは皇帝や貴族から仕事を受ける組織、お前の師匠は貴族のために薬を作る人、そして凛月は貴族のために占いを行う人、俺は、貴族のために戦い、人を殺す者だ。これで分かっただろう?おまえはどれだけ幸運な人。ああ、その子供たちも殺し屋になるために集められ厳しい訓練を受ける子たちよ。まあそもそもそんな訓練に乗り越える子は何人いるのだろう」

 「そんな、じゃあの子たちは…」死なせるために集められてきたの。なのに自分は、遊びに来てって、なんで残酷なことを言いたのだ。

 「用事がないならさっさと帰れ、今日はこれ以上話したくない」

 どうして自分は何も知らなかったのだ、どうして師匠は何も教えてくれなかったのだ。その夜、複雑な思いを抱いた儀は眠れなかった。その後しばらく、儀はさぼることなくしっかり勉強を進んでいた。自分のできる唯一のことは、医薬の知識を勉強し、いつか傷を負った子たちの傷を治ることだ。でも、誰にも傷を負わせたくなかった。

 もちろん、薬房に来て怪我の手当もしくは診療しに来た子はなかった。


 急に真剣に勉強し始めた儀を見て、白雲もより集中に薬の研究ができた。儀は薬学にかなりの才能を宿っていて、彼女の手によって作られた薬も普通のものより効果があると、白雲は儀を褒めていた。

 そのような日々が続き、ある日星弦が訪れた。どうやら宮室に置いていた傷薬が使い切り、追加分を引き取りに来たのであった。

 薬を補充するような簡単な仕事を儀に任せ、白雲は部屋に引きこもって研究を続けた。

 「最近外であなたのことを見かけてないと思ったら随分まともになっているじゃないか」

 薬を仕分ける儀を見て、星弦はそう言いた。

 「これか私ができる、唯一のことだから」

 「へい、」

 「もし今度星弦が負ったとき、ここにきてもしくは私を呼んで!代わりに手当てするから。星弦のやり方は適当だから傷の回復によくない。ああもちろん、傷を負えない方がいい!無事帰るように祈るから」

 「余計なお心遣い、ありがとう」

 「外で、どんな感じなの?」

 「ああ、お前外に出ることないのか。確かにお前のような甘ちょろい子は外に置いていると生きていられないかもしれない……」

 「師匠も、外は危険で危ないって」

 「確かに間違ってはいないか、それだけではない」

 「え?」

 それは初めて知った、知らない外の話だった。戦争で苦しむ人たちがいながら、安定な場所で穏やかな生活を過ごす人たちもいる。そして、皇帝と言われる偉い人を中心に建てられた賑やかな都の町、また町から離れているところの広い土地と風景。いつか、自分の目で見てみたい。

 「明日また任務があるから今日はこれで、」

 「また、話を聞かせてもいいかなぁ?」

 「俺がその気になったらね」

 「はい!」

 次に星弦が来る時、儀にお土産をくれた。

 「これ、都の庶民の女の子に人気なお菓子らしい」

 「お菓子?ありがとう!」

 それはここの食べ物とは全然違った、優しい味だった。

 「帰りに私へのお土産を買うなんで、もう友達扱いじゃないか?」

 「ただの気まぐれだ。」口でそう言いているけど、実は心のどこか、この甘ちょろい小娘に惹かれているのかもしれない。そもそもなぜこのような子がここにいられるの?かなりな才能を持った子だと聞いていたか、どうも引っかかる、白雲も相当この子のことを甘えているらしい、ここの事情も教えていないくらいだから、直接聞いても何も教えてくれないのだろう。また機会があったらこの子のことを調べようと。


 だがその機会はなかった。

 星弦は自分の戦い力に自信があった、そうやって生き延びてこの地位に上ってきたから。だから今回も余裕をもって任務相手を殺した。相手の武器に軽く掠ったことも特に気にしなかった。

 まさかその武器に毒が塗ったとは。そして、白雲も解毒の方法がわからなかった。

 「本来は即死のはずだったか、あなたの体質が強いから」

 「早くも遅くも死ぬでしょう。くそ、油断した。」

 「完全に拡散するにはまた数日あり、わしがそれまで何度か解毒方法を見つけてみる。もし見つからなかったら……」

 「まあ多分その最悪の結果になっちゃうよね」

 「それまでは自室で休んでください」


 師匠の部屋の外で星弦を待つ儀はその対話を全部聞いた。

 久しぶりに星弦と会えたのに、もっと話を聞きたいのに、彼は数日で死ぬなんで……

 白雲の部屋から出た星弦も、覗き見の儀を見かけた。

 「お前、ここにいた?今度は俺があの子供たちのように、使えなくなり破棄されるよ。まあ、覚悟はとっくにできているから。じゃ、」

 「星弦!」

 星弦は振り向くことなく、薬房から出ていた。

 儀は師匠の部屋に入って、師匠の袖を掴んで願った:

 「師匠はこの国一番の薬師でしょう?どうにか星弦くんを助けられないの?」

 「今回はワシでも無理だ」

 「嘘だ、師匠の嘘つき!ここにはあるもん、万病を癒せる鳳凰の花!」

 「それはどこかで?」

 「やはり、方法はあるんだ、師匠は星弦のために鳳凰の花を使いたくないじゃない。千年に一度咲く貴重な花だから?」

 白雲は沈黙した。

 そうだよね、師匠にとっても、首領にとっても、星弦の命より鳳凰の花のほうが大事だ。儀は走って薬房から出て、鳳凰花樹のいる中庭に行った。

 そこに、凛月さまがいた。凛月さまはクール系な美人、儀は凛月さまが苦手だった。

だがなぜが、儀は凛月さまに聞いた:

 「凛月さまは、鳳凰の花を咲かせる方法はしりませんか?」

 「そんなこと、あなたが一番知っているんじゃないですかーー鳳儀」

 その話を残して、凛月さまはどこかに行ってしまった。

 鳳儀、鳳儀……そうだ、自分の名前は鳳儀だった。ほかの人と同じ二文字の名前を持っていた。なのにどうして今まで自分をそう呼ぶ人はいなかった、自分も忘れていたのか。

どうして自分は鳳凰の花が咲く姿を知っているのか。

 それは、自分が鳳凰花樹の中に住み着く花樹の霊だからだ。


 修行の人は「天地万物、其の霊あり」と信じていた。特に鳳凰花樹のような強い力を持った霊木。

花樹の霊である鳳儀は、木の中で長い眠りについていた。花を咲かせる時期だけ起きて、花が散る後また眠りに落ちる。

 そろそろ花を咲かせる時期になったのか、

 木の中の鳳儀は思う、

 その時、誰かの声を聞こえた、

 「一度花樹から離れ、それ以外の世界を見てみないか?」

 それ以前一度も考えたことがなかった、花樹を見守り時間になったら花を咲かせるのが使命だった。自分はこの木しかしらなかった。もっといろんなものが知りたい、見てみたいと思って、鳳儀は答えた:

 「もし、できるのならば……」

 凛月は樹霊の許可を得て、其の霊を花樹から泥で作られた人形に移した。霊が花樹から離れた時から、花樹の成長が止まった。霊を得た泥人形も、人の女の子の姿へ変わった。

鳳凰の花を使いたい時、また其の霊を花樹に戻せばいい。

 そう、だった。そうだったのだ。

 外の世界、とは言えないか、人間としての生活は楽しかった、師匠や星弦とお話をしたり、人間が作った食べ物を食べたり、本を読んで面白い物語がいっぱい知るようになった。

 「ねえ、師匠、鳳凰の花が咲いたら、私は……」

 「あなたは花樹の中へ戻り、また千年の眠りに落ちるだろう」

 「それは、寂しいなぁ」

 「元々使う時となったらあなたを花樹の中へ戻るつもりだ」

 「そうなんですね、じゃ、今度私は大切な友達を救うために咲いてもいいかなぁ」

 「あなたがそうしたいのならば、」

 「師匠、今までありがとう。星弦のこと、よろしくお願いいたします」

 鳳儀は白雲に一礼をし、薬房から去っていた。


 鳳儀は星弦の宮室に来て、机の横で本を読んでいる星弦に:

 「一緒に、鳳凰の花が咲くのを見ないか?」

 と誘った。

 まさか、首領は自分のために鳳凰の花を使う気になったのか?そんなのあるはずがない、どうせい白雲が不老不死の薬を作る方法を見つかり、その花が必要となったのだろう。

 まあ、残り少ない命で千年に一度の景色が見られるのも悪くないか、

 「いいよ、付き合おう」

 そして二人は一緒に鳳凰花樹のいる中庭に行った。花樹はいつものように結界に守られ、咲く様子はなかった。

 「星弦、見てね!鳳凰の花、これから咲くの!」

 その話と共に、花樹におった結界が消え、橙色の蕾は次から次へと咲き始めた、その花は火のように赤い、鳥のように羽ばたく姿をしていた。

 花が満開になり、花びらは急に燃え始めた。まるで火を浴び生まれ変わる鳳凰、

 あんまりにも盛大な景色に、星弦は無言のままただ花樹の変化を見ていた。

 その時、鳳儀は:「やはり、何度見ても美しい、私は、この景色のために……」

 いよいよ火が消え、その火に浴びて残った花は一輪だけ。その花もゆっくり枝から落ち、鳳儀の手のひらに留まった。

 「私の名前は、鳳儀。この花樹の霊。此度はあなたのために、花の咲かせた」

鳳儀は手のひらの花を星弦へ差し伸べ、星弦は震えながらその万病を癒せるといわれる貴重な花を受け取った。

 「鳳儀、お前……」

 「星弦、今までありがとう、もっと一緒に、いろんな景色が見たかったなぁ」

 花のような明るい笑顔をした少女は舞い落ちる火の花びらと共に、消えていった。地面に残ったのは小さくて、割れていた泥人形だった。


 いつの間にか、白雲は星弦の背後にいた。

 「いこう、星弦さま、その毒を解いてあげる。」

 「白雲、お前、最初から知っていたのか?」

 「あの子も同じ、消えるためにここにいたことを?」




終わり。


短編練習時で書いた作品、のち内容変更する場合もあり

御覧いただきありがとうございました。

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