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1話

 さて、社会人とは斯くも忙しい物である。


 毎週毎日出勤に怯え上司の機嫌を伺い聞きたくもない過去の自慢話を聞き流し仕事が終わったと思えばもう日暮れ、一人暮らしであればコンビニやスーパーで総菜を買って帰る頃だろうか。

 しかし俺は実家暮らし。多少のプライベートと引き換えに家事の負担は驚く程に少ない生活だ。夜中のプライベートタイムにバックアタックを喰らったり「何時結婚するの」を不意打ちで喰らったりすることもまぁ多少は仕方が無い事なのだ。


 今日も今日とてスーパーで頼まれていた晩御飯の材料や卵牛乳を買い込み帰宅する。買ってきた物を台所の机に置き、まずズボンを脱ぎます。

 まあまて慌てるな。なにも全裸になろうってわけじゃあない。風呂を洗うんだ。

 風呂洗いと洗濯物を干すのは俺の持ち回りだからな。そりゃあもうカビ共を駆逐してやると言わんばかりにがっしがっしタイルを擦ってやるのさ。

 そんでもって風呂洗いが終わった頃に晩御飯ができるわけだ。今日は鶏もも肉と生姜チューブを買ってきたから多分唐揚げだろう。

 本日も晩御飯を美味しく頂いた。やはり母親の唐揚げは絶品だ。ラーメン屋の唐揚げにも引けを取らない美味しさなのだ。良き母を持って幸せだ。これで突然のバックアタックがなければ尚良いのだが。


 風呂に入って自室に戻ればプライベートタイムのスタートだ。膝の上に乗っかってこない猫を捕まえて撫で繰り回したあとはパソコンの前にへばりつく。

 パソコンは良い物だ。そこそこの性能の物が1台2台あるだけで現代の娯楽をほぼ網羅できるのだから。

 今日も今日とて動画配信サイトの波に乗る。最近流行りのバ美肉をしてみたいのであるがいかんせん懐は常に寂しい物である。やりたい事が無限に増える楽しみの代償は薄くなる財布であった。そりゃあもう悲しい位に薄い。最新型のスマホかって位に薄い。


 我が家の飼い猫は俺の事をキャットフードディスペンサーか何かだと思っているのかって位には甘えてこない。あと大半の猫の好物と言われている液状のチューブおやつにも見向きもしない。喜ぶのはもっぱら鰹節だけだ。


 さてお楽しみの時間もそろそろお開きである。明日の仕事に備えて就寝しなければならない。

 こたつが無い故にベッドの上で丸くなっていた猫をどけて毛布をかぶる。毛布の中でうだうだと寝返りをうっている間に瞼が重くなっていき眠りにつける。


 そうしてスヤスヤ快眠してさあ起きるぞって時に体が思いっきり揺さぶられれば誰だって驚く、俺だって驚いた。

 目を開けば普段見知った壁が無い、天井にも見覚えが無い。極めつけはカップルの様にお揃いのイヤリングを付けた男女とシスターのコスプレをした老婆だ。


「な・・・なんじゃこりゃあ!何処だここぁ!誰だテメェら!」


 驚きも極まれば怒鳴り声の一つや二つは出るもんだ。ましてや知らない人間に知らない場所で囲まれている状況ならばなおさらである。

 俺の怒鳴り声に驚いたのかカップル男女が顔面蒼白になる。そんな顔をしたいのはこっちだ。コスプレ老婆は何やら叫びながら慌てて部屋を出て行った。

 なんだこれはドッキリかなんかか?そんなことされる程有名人ではないが?

 カップル男女が何やら会話しているが聞き取れない。日本語どころか英語ですらない。いや発音は英語の様に聞こえなくもないがどうにも単語を拾えない、訛りが酷いのだろうか。

 会話が通じないならボディランゲージだろうと思い男の胸倉をつかもうと腕を伸ばすが届かない。

 と言うより体が思う様に動かない。


「くそ!おいコラなんのつもりだ!日本人攫ったなら日本語位喋れ!」


 カップル男女は恐慌した表情で抱き合うだけだ。何やら叫んでいる様だが聞き取れない。叫びたいのはこっちだ。


 二進も三進もいかない状況のまま膠着するかと思ったがシスターコスの老婆が中世の騎士かなんかの恰好をしている男を二人連れてきた。

 男は二人がかりで俺を押さえつけ何やらロザリオのような物を俺の頭に押し付けながら何やらぼそぼそと口を動かしている。


「放せこの!はーなーせー!いってぇ!いってっつってんだろうがよお前よォ!」


 俺にロザリオを押し付けていた30代とみられる男が苦虫を噛み潰した顔をした後もう一人の男に何やら指示を飛ばした。するともう一人の20代位の男が何やら決意した面持ちで部屋の外へ出て行った。


「クソッ!コラッ!放せコラ!日本語話せる奴ァいねぇのか!弁護士を呼べ!俺には黙秘権がある!」


 体が浮くような感覚を覚えた。どうやら30代の方の男に持ち上げられた様だ。


 持ち上げられた?俺が?半年前に体重計った時には70kgはあった俺が?


 暴れて抵抗しようにも手足の反応が鈍い。動いている感覚が無い。縛られているわけでも無いのに何故なんだ。

 20代の方が戻ってきて何やら30代の方に報告したかと思うと俺を持ち上げたまま部屋から出て行く。


「おいコラ何処連れて気だ!そんな恰好しやがって!コスプレ会場に来た覚えはねぇぞ!」


 部屋から出た先は教会の様な聖堂の様な、そんな場所だ。それ程広々しているとも言い難いが3~40人は入れるだろう建物だ。

 普段は長椅子が並べられているであろうその空間は今は片付けられて余計に広く感じる。そして部屋の中央には磔台と思われる物とその下に積まれた薪の山だ。

 30代の方が俺を磔にし、20代の方は松明を用意している。


「なんだよそれ・・・冗談だろ?なぁ冗談だろ?なあおいなんとか言えよ」


 松明に火がつけられた。激しく燃えるその炎はどう見てもイミテーションには見えず熱が伝わってくる。


「やめろよなぁ・・・そんな物騒なもん近づけんなって・・・なぁ・・・」


 無慈悲にもその松明は俺の足元に積み上げられた薪の山にほうり込まれた。

 少しづつ、少しづつ薪の爆ぜる音と煙が大きくなって行き息苦しくなってくる。


「ゲホッ!ゲホッ!」


 呼吸が苦しくなり意識が遠くなっていく。下で燃える炎は最早家庭用消火器程度では消火できない程に燃え上がっている。

 熱い、苦しい、意識が・・・とお・・・の・・・く・・・

今日から完成している5話分を隔週投稿していきます。

プロットは最終回までできているので後はモチベーションを確保できればドンドコ書いて行きます。


なので感想や拡散をしていただければ幸いです。


後前作からペンネームを変えたので無いとは思いますがなりすましをされない様にツイッターアカウントを乗せておきます https://twitter.com/thehutonn です。

以降隔週の日曜日18:00に忘れなければ投稿していきます。

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